12話 サラ
酒場の裏口にある小さめな木のベンチに2人で腰掛けた。
ゲンベルは昼は暑いが夜から明け方にかけては心地よい夜風が吹く。
「踊りってなかなか難しいな、サラは上手かったがなんか練習とかそういうのしてたのか?」
サラの踊りは見事なもので、そういう練習や習い事をしていないとなかなか出来ないものだった。
「ん〜ちょっとだけやってたな。まぁ楽しいものじゃなかったけど」
そう言うと立ち上がってクルクルと踊りだした。
「な、なぁ。聞いていいのか分からなかったから聞かなかったんだが、その…サラはあれなのか?貴族とかそういう身分の高い感じの」
チラッとサラの方を見る。
踊りをやめて彼女も俺の方を見てきた、少し迷っている様子だったが。
「あのね、人に簡単に話せる話じゃないの」
少し俯き加減に答えた。
「そうか、なら無理に話せとは」
「ううん、私ジャックには話すよ。だってジャックは信用出来るしそれにペンダントだって危険を承知で取り戻してくれたんだもん」
「別に俺は護衛として当然のことをしたまでだ」
2人の間に短い沈黙が流れた。
「このペンダントはお母さんの形見なの」
開くと中に同じ銀髪の女性が写真の中で微笑んでいた。
「ねぇジャック、この大陸にはとあるドラゴンの伝説があるの」
「ドラゴン?昔はこの大陸にいたのか?」
「うん、人とドラゴンが共存しあう平和な世界。でもね200年前一匹のドラゴンが世界を人間を滅ぼそうとした。もちろん人間は戦ったわ、味方に付いてくれるドラゴンもいた。たくさんの人がドラゴンが死んでいったわ、それから戦いは7年続いた。これ以上戦っても意味がない、人間がもう駄目だと諦めかけたその時まばゆい光がドラゴンを包んだ。ドラゴンは唸り声をあげながら小さな光の玉となった。遂に長きにわたる戦いは終わったわ。ドラゴンを封印した女はその後王国の女王となりドラゴン達は別の大陸に移り住んだ、っていうね」
「その女の人は特別な何かをもっていたのか?」
「わからない、ドラゴンが世界を人間を滅ぼそうとした理由もね」
「そうなのか」
まぁ伝説の話だからそういうものなのか。
「でね、ここからは王家の人しか知らない話。ドラゴンを封印した光の玉は存在するの。代々王家の女が守り受け継いでいるんだ」
「え?王家の人しかって」
「私、王女なの。伝説の王国のモデルと言われているシイル王国の」
上等な服やしぐさから身分の高いものだというのはわかっていたがまさか王女だとは思ってもみなかった。
「で、でも王女様がなんで人で外に?」
「逃げてきたの。シイルは今恐ろしい異形のものに乗っ取られているの」
「異形のもの…その封印されしドラゴン?が目的なのか?」
「多分、でも光の玉は王家の女性しか封印を解くことはできない。でも私を探しているっぽい感じはしないからこうしてゆっくり旅をできているんだけどね」
へへへとイタズラっぽく笑う。
「…あのさ旅の目的とかはあるのか?」
「うーん、すっごい強い仲間を集めて王国を取り戻したい…かな」
壮大なのにどこか大雑把でもあった、まぁ彼女らしいが。
「俺もその1人になれるようもっと頑張るよ」
「もうジャックは立派な仲間だよー。それよりそろそろ中入ろう、少し冷えてきたしさ」
「そうだな」




