11話 宴
『ホワイトホエール』に着き扉を開けると
「「優勝おめでとうーーー!!!」」
店いっぱいに入った客たちとマスターが一斉に立ち上がりフォースで作った小さな花火に似たものが次々と打ち上がる。
「あ、ありがと」
ここまで凄い出迎えをされるとは思っていなかったので面食らっていると
「さぁさぁさぁ、主役はこちらにー」
サラに背中を押され奥のクッションのついた椅子に座らされた。
座ったのを確認した後マスターが小さく咳ばらいをし
「えーそれではジャックのファイトオークション優勝を祝しましてーかんぱーーい!」
「「かんぱーーーーーい!!」」
高く掲げられた樽ジョッキ同士が一斉にぶつかり合う。
「今日はお祝いだから皆お金はいらないわよー、じゃんじゃん食べてちょうだいっ」
「姉貴太っ腹っす!」
「マスター俺もう他の酒場にはいかねぇぜ!」
マスターの一言で場は更に盛り上がりを見せる。
テーブルに乗り切らないほどの料理はすごい速さでなくなり、酒は大樽1つでは足りないくらい減っていく。
持ち込んだ楽器を演奏するものやそれに合わせて踊るものまでいる。
「すっかり主役は置いてきぼりねー」
「いや、俺は輪に加わるの苦手なんで皆がこの宴を楽しんでくれてるならそれいいですよ」
「そう?でもせっかくあなたの為に開いた宴なんだから…」
マスターが何やらサラに目配せをする。
サラは何が言いたいのか理解したらしく
「ねぇジャック、私たちも踊ろうよ!」
手をつかんで有無を言わせずぐいぐいと踊りの中心へ連れていく。
「ちょっ、待ってくれ。俺こういう踊りはしたことないっ」
「大丈夫!ノリさえあればなんとでもなるっ!」
サラ得意のポジティブ思考であっという間に意見はねじふせられてしまった。
「おっ、サラちゃん達踊る気になったのか」
「いよっ!美男美女の踊りが見れるなんておじさん嬉しいぜ」
いつの間にかサラは周りの客達と仲良くなっていた。
演奏が始まり周りの客たちが踊りだす。
「ジャック適当に私に合わせて踊って」
そんなアバウトなこと言われると余計どう踊っていいやらわからなくなる。
「よっ!へんちくりんだがなかなかイケてるぜ!」
「頑張れ兄ちゃん!」
褒められているのかいないのか微妙な歓声が飛び交う。
正直踊りとよんでいいのか怪しいレベルだ。
何度か足がもつれ倒れそうになったがなんとか踊り終えた。
3分ほどしか踊っていないのに体中汗だくだ。
「すまないがちょっと外で涼んで来る」
「あっ、私も行くー」
2人で涼むため一旦酒場から出た。




