1話 出会い
(俺は今どこを歩いている、なぜこんなにも焦っている)
(なぜこんなにも傷を負っているんだ)
(…わからない、今はただ立ち止まって眠りたい。全てを 忘れたい…)
「…っ」
「(誰か呼んでいる?俺はどのくらい眠っていたのだろうか)」
「あのっ!!大丈夫ですか!!」
突然耳元で叫ばれハッとする。
痛む体を起こすと目の前には輝くような銀髪の小柄な少女がいた。
「どうしたんですかその怪我、盗賊か野犬にでも襲われたんですか?早く手当しないと」
少女がわたわたとせわしなく手を動かす。
「怪我?」
ふと自分に目をやるとそこいら中血まみれだった。
殆どは治っていたが、様子からしてよく生きていたなというくらい出血していたらしい。
服もあちらこちらが破けボロボロだった。
「動かないでくださいね」
そう言うと少女は俺に向かって手をかざした。
瞬間パアッと自分の体が黄色がかった優しい光で包まれる。
「私、応急処置くらいしか出来ないので効くかどうか…急いで近くの町に行かないと」
立てますか?と差し出された手を借り立ち上がる。
応急処置のおかげか痛みはさっきよりかなり和らいでいた、幸い足の方も骨も折れておらず怪我の割に立つことが出来た。
「色々とすまない…近くの町というのは…」
こっちですと少女が優しく手を引いてくれる。
目がさめたら分からないことだらけで考えると頭の中がごちゃごちゃする。
(「あなた名前は?」)
町医者のとこにつくまでに彼女はそれしか聞いてこなかった。
そもそも何も覚えていないため、ほかのことを聞かれても何も答えられないが…まぁ、彼女も上等な服を着ている身なりからして何か事情があるのだろう。
…お互い様ってやつか。
町医者に診てもらった結果、3日ほど安静にしなければならず、サラは3日後俺のために取っておいてくれた宿の部屋にまた来ると言って去っていった。
ートントン
それからきっちり3日後、宿屋の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞー」
戸が開き少女が顔を覗かせる。
「なんだー怪我の割に元気そうでよかった」
ベッド横に備え付けてある机にリンゴが入ったカゴを置く。
「君の応急処置のおかげだよ、それより宿賃と治療費のことだが」
宿に着いて、手持ちのお金はないかと服を探したが一銭も見当たらなかった。
「いらないわよ」
リンゴを器用にナイフで切り分けながら答える。
「いらないって?!」
そうは言われてもこれだけの怪我だ、相当金を払ったはず。宿だって3日も泊まっているわけだし。
「いやしかし払わないわけには」
「でもあなたその感じからしてお金持ってないでしょ?」
切り分けたリンゴを俺の口に押し込みながら、笑顔でズバっと言い放つ。
「うっ・・・ま、まぁ」
ということは、最初から俺には金がないだろうと分かっていながら助けてくれたのか…。
「私は助けたかったから助けただけ、お金とか気にしてないから。それじゃあなたが大丈夫そうなのもわかったことだし、私あんま長居できないの。そろそろ町を出ないと」
宿代は払ってあるから気にしないでねと、くるりと背を向け少女は部屋を後にしようとした。
「待ってくれ!!」
部屋を出ようとする少女の腕を掴み引き止める。
「金はない…が剣の腕はある、もし入用なら俺を同行させてくれ、それで払ってもらったお金の代わりになるかはわからんが」
どの程度役に立つのかまではわからない、ただ剣の腕はあるということはハッキリ覚えていた。
記憶がない以上行くあてもない、なら少しでも彼女に恩を返したい。
少女はしばらく俺を見つめて。
「今は死ぬような危険がなくても、いずれは戦いの中で死ぬかもしれない。それでも私を守ってくれるというの?」
真剣な顔で一言そう聞いてきた。
答えは決まっている、俺は考えるまでもなく答えた。
「君に拾われた命、なら俺は全力で君を守る。死ぬのが怖くて逃げたりなんかしないから安心してくれ」
片膝を地面につけ、頭をさげる。
そんな俺を彼女はそこまでしなくていいよとしゃがみ込みいってくれた。
そして手を取り。
「じゃあ決まりね」
「改めて私はサラ、よろしくねジャック」
と笑顔で答えてくれた。
俺もそんな彼女の手をしっかりと握る。
「ありがとう、よろしく」
お互いのことは名前しかわからない、でも今はそれでいいのかも知れない。
いずれ分かることさ。




