獣
夢日記をつけはじめて、しばらく。
明確な悪夢を見始めた私は夢日記のほかに「夢日禁」をつけはじめた。
まともだと思っていた私の中の狂気や恐怖を吐き出すように。
寝ていた?
ううん、仰向けに寝かされている、といった方が正しいかもしれない。
とにかくそんな状態だった。
どこか分からない、色さえも。
私は全裸だった。
驚いたことは胸があること。
それはだらしなく外側に流れている。
下半身には常時あった私は無く、手は空を切り、虚しくそれがあった箇所に落ち着いた。
平たい。
私は溜め息をついた。
しばらく寝そべっていた時、体の上に何かが乗った。
犬だ!
ベージュのような色みの……、ゴールデンレトリバー?というものか。
つぶらな瞳、愛らしい表情、体は私と同じくらい大きい。
犬は私の肩を手で掴んだ。脚ではない、手なのだ。筋肉質で体毛が勇ましい腕だ。
突然、犬は後ろに動き、勢い良く私の中に入った。
思わず下半身を確認した。何も入ってない。そもそもこの犬は雌犬だった。
なのに、腹部が熱く感じる。私は思わず気持ちよさと気色悪さの二重の意味で声をあげた。
何だこの状況は。
私は今、女として犬に(しかも雌犬)に犯されている、らしい。挙げ句嫌悪しつつも喘いでいる。
気持ち悪い、早く覚めろ覚めてくれ。なんて悪夢だ。こんな夢今まで一度も…………。
と、思った時、犬と目が合った。
人間がする目をしていた。侮蔑し、嘲るような視線が私にぶつかる。動きが激しさを増していた。
私は涙が出てくるのを感じた。
そして押さえきれない憎しみを込めて呟いたのだ。
「好き。」
私は飛び起きた。
ふと下半身に違和感を感じて、ファスナーをおろした。
勃起していた。