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43.ベムテ領――2

「コイツらもただの賊、ってわけじゃなさそうだがな」

「そうですね。少なくとも流れた血の量と死体の傷の様子はだいたい一致します。ですが逃げ傷のある死体はない……普通の賊が壊滅するような事態に遭って、一人も逃亡者が出ないというのは考えにくいです」

「…………」

「シオンさん?」

「凄ぇな、そんな風に推理できるのか。俺はただ鍛え方が賊っていうには不自然だと思っただけなんだが」

「………………。いえ、凄いというならそんな違いを一目で判断できる方がよほど」


 流れるようにすらすらと出てきた説明に感心すると、リースは死体をじっと見つめてから呆れたように首を振った。

 うーん……?

 まあ、今のリースの判断法は俺でも覚えられそうだ。もしかしたらそのうち役に立つことがあるかもしれない。


「だが、そうすると……」

「どうしました?」

「コイツらはひとまず正体不明としておくとして……」

「おそらくサジョリマ殿が戦力を蓄えるのを嫌った勢力からの刺客と思われます」

「えっと……じゃあその刺客として、だ。それを仕留めたのは誰だ? こう言っちゃなんだが、ジャリス……殿の騎士に出来るとは思えない。犠牲者無しなら猶更だ」

「……確かに、ここに居た彼らを殲滅し得る戦力がベムテ領にあったとは思えません。だとすると、私たちとは別に外部から侵入してきている戦力がある事になりますが……いったい何が目的で……?」


 二人で首をひねるが、答えは出てこない。

 というか俺にはリースの呟きもあまり分かってないんだが。


「はぁ……シオンは相変わらずダね」

「うおっ!?」


 もはや聞き慣れた呆れ声だが、今回それは意識ではなく普通に耳に届いた。

 いつもなぜか現れる寸前まで感知できない悪魔(カルナ)は、俺の肩口に腰かけて足をブラブラと揺らしている。


「あー、リース、こいつは……」

「秘宝絡みの独立した人格、だったでしょうか。話は既に聞き及んでおります」

「そ、そうか」

「なんダ、驚かないのかい。じゃあこうしてみたらどうかな?」

「……おい」


 不満そうな声を漏らしたかと思うと、カルナは肩の上で少し向きを変えて頭に覆い被さってきた。

 この程度の事で動きにくいとか邪魔とか温いことを言うつもりはないが……いや、やはり邪魔なものは邪魔だ。気分的な意味で。


「――カルナさん、と言いましたか?」

「うん?」


 っ……。

 今俺の目にはリースの顔の半分くらいしか見えてないわけだが。

 いつもと変わらない調子の声の中に、背筋をぞくりとさせる何かが混ざっていた。

 それをまともに受けたカルナが飄々とした様子を崩さないのはいつもの事か。この悪魔が動揺するのを見た回数なんて、それこそ片手の指で数えられる。


「普段は姿を見せない貴方がこうして現れたということは、何か目的があると見受けました。時間を無駄にできる状況ではありません、要件は手短にお願いします」

「ふふっ。別に勿体ぶってもいいけど……割と期待通りの反応してくれたお礼に少しダけ。闇雲に探し回るくらいなら、ここでしばらく待ってた方が良いんじゃないかな」


 愉快そうに笑うと、カルナは思わせぶりに提案した。

 待つ……? よく分からないが、コイツが言うなら聞いておくか。


「待つ……いったい何を?」

「ん……? あぁキミは気づくか、失礼! 長いこと一緒にいると、つい彼を基準にしちゃってね」

「失礼なのはお前だ」

「相手の正体より先に目的を考えてごらん。何をしに来たのか、何のために彼らを殺したのか……そして、なぜ彼らの死体を残したのか」

「…………」

「ヒントはこれくらいかな。ま、あくまでボクはそう予想してるってダけの話さ」


 ……?

 謎めいた言葉だけ残すとカルナは姿を消した。

 リースは何か思うところがあったのか、真剣に考え込む様子を見せている。


「そうだな、待つにしても一応適当なところに隠れておくか?」

「……え? ああ、はい。そうですね」

「じゃあ、良さそうな場所を探してくる」

「すいません、お願いします」


 少し探した結果、洞窟の浅いところに手頃な隙間があるのを見つけた。破の型、剛撃で岩壁を砕くと、スペースも十分に確保できた。リースを連れてきて二人で隠れる。


「あ……あの……」

「どうかしたか?」

「……い、いえ。なんでもないです、すいません」

「?」


 俺は何か考えようにも、カルナの言うヒントの意味から既に理解できてないからな……。

 せめて何かあったとき出遅れないように、あたりの気配でも探っているか。

 そして時間は流れ……やがて、十数人の集団が近づいてくるのが分かった。


「!」

「リース?」


 それとほとんど同じタイミングで、一つの結論に至ったらしいリースがはっと目を見開いた。


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