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19.リクレス城――13

 捕獲していた一味の洗脳を解いた後。

 俺は、ジャリスとミア様の面会に同席していた。

 なおジャリスは流石に下着姿ではなく、普通の礼服に身を包んでいる。

 マトモな恰好をしているだけでそれなりに絵になるから不思議なものだ。


「――まずはミア・リクレス殿。今回の面会を受けて頂いたことに感謝を」

「ええ、聞けばジャリス殿は不届き者に洗脳を受けていたとの事。御自身に我らと敵対する意が無いのなら、客人として迎え入れることに何の問題がありましょう」

「我が身の不徳とはいえ度重なる無礼、誠に(おもて)の上がらぬ思い。ただ恥を忍んで一つ、郎党を伴い自領へ戻ることをお願い申し上げる」

「短い滞在で残念ですが、無理に留める理由はありませんわ」

「……いずれ都合が出来しだい、そちらのご迷惑にならない折を見て伺います」

「私もその時を楽しみにしています。それでは、また」


 あの金メッキ騎士が、真面目に話している……だと?

 洗脳されている時の横柄な態度、エストさんの尋問を受けた後のネジが外れたような態度とも違う。

 これが、貴族同士の会談という奴か。

 仮に俺が同じことをするとなったら…………無理、ではないか。

『ボクがアシストすればの話ダけどねー』

 否定はしない。

 ともかく、こうしてジャリス一味はリクレス領を後にした。



「――シオン・リテラルド参りました」

「入りなさい」


 ミア様から呼び出しを受けたのが、その日の晩の事。

 特に何かしでかした覚えは無いが……?

『…………』

 とすれば、こんな時間に何か御用だろうか。

 内心で首を傾げながら部屋に入る。


「ふッ――!」

「?」


 ドアを開けると同時、俺の死角にいた男がミア様の方に向けて短剣を放った。

 どれも危ういところで直撃はしないコースだったが――と、ミア様が軽く動いたせいで状況が変わる。

 賊の掃討でも使った飛弾で全て撃ち落とす。

 ……これは一体、どういう事だ?


「ちょっ、ミア様……! どういう事っすか! 危ないから動かないでくださいってあれほど念押ししたっすよね!?」

「どうもこうも無いわ。ちゃんと当たる軌道じゃないと、状況の再現にならないじゃない」


 泡を食って顔を青くする男に、ミア様は悪びれもせずに答える。

 そして、意味ありげな視線を俺に寄越した。

 ……いや、全く分からないんですが。

 状況の再現……?


「シオン、それでどうだった?」

「どう……と、言いますと?」

「前、アンタが緑のにやられて手傷を負った事があったじゃない。あの時の敵とコイツを比べて、実力の差はどれくらいだと思う?」

「む……」


 そういう事か。

 ただ、今回は状況を再現できていたとはいえない。

 敵の気配を事前に察知していた点は変わらないが、緑の刺客の時はジャリ一派に意識が向いた瞬間を狙われた。

 今回は敵役の男がどう考えても乗り気じゃない気配だったし、ある程度の注意は向けていた。

 そもそも投げたナイフの数が違う。

 あの時より余裕があったってのもあるが、今回は飛弾でも十分対処できる程度の数のナイフだったから対処も容易だった。


 それを伝えるとミア様は例によって呆れ顔で溜息を吐き、対照的に男は表情を引き締める。

 ……そういやアイツとは色合いが異なるが、コイツも緑髪だな。

 何か関係があるのか?


「……それで、最初の質問よ。コイツ――ハンジ・リガレクの実力はどれくらい?」

「そうですね……例の緑と比べると、率直に言ってだいぶ劣ります。総合的に概算すると、三分の一くらいと言ったところでしょうか」

「…………!」

「ミア様?」

「総合的に概算とか、アンタそんな言葉どこで知ったのよ……」

「……その評価は、流石に少し傷つきます」


 物事を適当に説明する時カルナが良く使うから、移ったんだと思うが。

 この男――ハンジは、ミア様によるとリクレス家の抱える密偵で二番目の実力者らしい。

 最も優れた密偵は性格にかなり難があるかわり、不意打ちなら俺にも刃が届くだけの実力を持っているんだとか。

 それを聞いたカルナがどこか面白がるような反応を示したが、教えてはくれなかった。


「……ご苦労。今日はアンタたち、二人とも下がって良いわ」

「「承知致しました」」


 ……結局、何だったんだ?

 入った時と同じく内心で首を捻りながら、俺はミア様の部屋を後にした。

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