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18.リクレス城――12

「ふーん……エスト、後は任せたわ。私は戻るから」

「畏まりました。少しシオンをお借りしてもよろしいでしょうか?」

「好きにすれば」


 ジャリスから一通りの話を聞くと、ミア様はそう言って牢を後にした。

 その後ろ姿を一礼して見送り、エストさんはジャリスの方へ向き直る。


「ジャリス――」

「犬とお呼びください」

「私にそのような嗜好はありませんので」

「僕にはあるんです!」


 ……頭が痛くなってきた。

 というかジャリも、そんな内容を大真面目な顔で言うんじゃない!

 エストさんも渋い表情を浮かべたまま話を進める。


「それで、貴方の部下たちが洗脳された貴方の言いなりになっていたのはどういう事です? 貴方の領地では騎士もゴロツキ同然と見て良いのですか?」

「うん……その事ですが、僕にも不可解です。元より素行の良い者たちではありませんでしたが、戦争のリスクも分からぬ愚か者では無かったと記憶しています」

「では、確かめるとしましょう。二人とも、ついてきてください」


 そう言うとエストさんは牢の鍵を開けて身を翻した。

 迷いなく進んでいくその背中を追いかける。

 一応警戒はしていたが、ジャリも妙な素振りは見せず大人しく従った。



「――こちらです」

「「「……ぅあ…………」」」


 そうしてエストさんに案内された先の牢には、ジャリと共に捕えた騎士たちが入れられていた。

 確かにどこか様子がおかしい。

 皆かなり落ち込んでいるように見える。


「何か分かりますか?」

『――ふむ、二次感染してるみたいダね。これは面白いかも』


 騎士たちの様子を軽く確かめたカルナが軽く(思念)を弾ませる。

 二次……感染?

『そこの犬に掛けられた洗脳、意外に手が込んでたっぽいって事ダよ。洗脳の強さとしては、コイツらみたいに自我に影響が出るくらいが本来の症状』

 二次ってことは、ジャリに掛けられた洗脳がこの騎士たちにも影響したって事か?

『つまり最初の洗脳には偽装も――あ、うん。二次感染ダからね。心配しなくても此処から更に洗脳が広まるようなことはないよ』


 カルナの説明するところによると、二次感染を引き起こせる期間に制限がある事。

 二次感染に至るにはそれなりの時間を要する事。

 これらの要素から、もうこの洗脳魔法は効果をほぼ失ったと見做して良いらしい。


『じゃあ、コイツらの洗脳も解いとくね。情報も大して出ないダろうし、犬の時より適当にいくよ』


 ジャリの時とは比べ物にならない人数だったが、カルナは一瞬で全員の洗脳を解除してみせた。

 騎士たちが混乱するのを横目に、俺はカルナが言っていた内容をエストさんにも伝えておく。



「――って感じ、みたいです」

「なるほど……よく分かりました」


 説明が終わると、エストさんは深く頷いた。

 やっぱり賢いな。

 俺も内容はよく分かってなくて、半ばカルナからの伝言みたいになってるってのに。


「ところでシオン」

「はい」

「そんな知識、一体どのような経緯で修めたのですか?」

「……あ」


 疑っているというより、少し気になっただけって感じの質問。

 どうしよう、俺じゃ納得させられる説明を返せる気がしない。

『また貸し一つ、みたいダね』

 なっ……?

 俺が迷っていると、中空にカルナが影絵のような姿を現した。


「……シオン、これは?」

「ボクはカルナ。シオンが旅してた時に拾った古い秘宝に憑りついてた魂みたいなものダと思ってくれたら良いよ」

「ま、まあ、そんな感じです。魔法とか秘宝に関しての知識は豊富で、さっきの説明も実はコイツの受け売りです」

「博識な方がいらっしゃると心強いですね。私はエストと申します、以後お見知りおきを」

「うん、よろしく」


 突然現れたカルナには驚いたようだったが、それでも落ち着いて自己紹介を交わすエストさん。

 もっと深く突っ込まれるかと思ったけど、意外にもそんな事は無かった。

『シオンが信頼してるからボクも信用されたんダよ』

 信頼?

『少なくとも他の人からはそう見えるって事さ』


 そう言われると少しこそばゆいな。

 そんな風に考えながら、俺はエストさんとカルナが更に細かい情報の擦り合わせをしているのを眺めていた。

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