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16.リクレス城――10

「ふぅ……あ、シオン。お疲れ様です」

「お疲れ様です、エストさん。お疲れのようですが、どうしました?」

「いえ、急を要するものではないんです」

「ちょうど仕事も済んだところですし、気になるので話だけでも」

「そう、ですね……」


 掃除用具を片づけていると、どこか疲れた様子のエストさんに出会った。

 ここ数日は特に何事もなく平穏な日々が続いていたはずだが……。

 難しい話なら俺の出る幕じゃないが、話すだけで整理になることもあるらしいし。

 本当に拙い事態の前触れならカルナが気付くだろう。

『ずいぶん信頼されたもんダねぇ』

 冗談、俺とカルナの間にあるのは利害の一致と惰性と妥協だ。

 信頼なんて綺麗なものは一ミリも含まれちゃいない。

『ミリ……? 違和感があるような無いような……』

 首を捻りだしたカルナは放置して、簡単な茶席のセッティングを済ませる。

 エストさんが座った後、俺も向かいの椅子に腰を下ろす。


「先週シオンが捕えた貴族なのですが……」

「ジャリス……殿、でしたか」

「はい。それがどうにも様子がおかしいんです」

「?」

「フィムフ村に関わる一連の事件との関わりは勿論、もしかしたらシオンに手傷を負わせた緑の刺客の情報も得られるかと思ったのですが……」

「駄目だったんですか?」

「ええ。ですが不自然な点が多々あって、どうもすっきりしないんです」


 関係無い事ならばどんな情報でも吐くのを見るに、何らかの意図を持って口を閉ざしているとは考えにくい。

 しかし、どうしても必要な情報だけは出てこない。

 極め付けに、その情報の欠損があからさまに不自然。


「まるで都合の悪い記憶だけ誰かに抜き取られてるみたいで……」


『――ふむ、面白そうダね』

 お前が興味持つような内容か?

こっち(、、、)は日常的な娯楽に欠けてるんダよ』

 それは良いな。お前の娯楽とか物騒極まりねぇし。

『まぁとにかく。直接ソイツ見たら何か分かるかもね?』

 いや……お前、何回か直接見てるだろ。

『その時は全然興味なかったから、眼中に入ってなかった』

 気持ちは分からんでもないが……。


「あの、エストさん」

「なんでしょう?」

「少し気になったことがあるので、ジャリス……殿に直接会えないでしょうか?」

「構いませんよ」


 手早く茶席を片づけた後、エストさんに連れられて城の奥へ。

 ああ、昔ミア様の探検にお供したのを思い出すな。

 迷路じみた一角をすいすい進んだ突き当りには、座敷牢のような光景が広がっていた。

 前に同僚に借りた本によれば、相当昔の人間は洞窟でこんな風に暮らしていたんだっけか?


 個室……いや、独房か。

 そこには金メッキの鎧を始めとした武装を全て解除されたジャリ騎士がいた。


「はっ! 御主人様! 本日はこの犬めを如何して躾けてくださるのでしょう!」

「――――!?」


 ――は?

 お前に何があった?


「口を閉じてなさい駄犬」

「仰せの通りにっ!」

「さて、シオン。何か分かりますか?」


 ……あ、ああ。そういやそうだったな!

 カルナ、何か分かったか?


『ビンゴ。それなりに強力な洗脳魔法が掛かってるね――おっと、すぐ口に出すのはナシダよ』

 ん?

『おかしいじゃないか。シオンやリディスは例外として、この世界で誰がこんな魔法使えるっていうのさ?』

 言われてみれば。

『情報が引き出せれば良いんダろ? 洗脳の解除と記憶の復元、あと……せっかくダし、簡単な自白魔法もかけておこう。はい完了』

 相変わらず速いな。

 あっという間に用意された魔法を牢の中のジャリ騎士へと放つ。


「ん? あれ、えっと……僕……は……え? 嘘……えっ?」


 洗脳は無事に解けたらしい。

 ジャリ騎士は少し目を瞬かせた後、いきなり一人で混乱し始めた。

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