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10.フィムフ村

「到着いたしました」

「ご苦労」

「商人と騎士、どちらの元へ先に向かいましょうか」

「騎士に決まってるでしょ。命令違反の騎士に釘刺しに来ただけなんだから」

「畏まりました」


 目的の村に着いたところで、一度馬車を預けに行く御者と別れる。

 この村の雰囲気は……城から最寄りの村と比べると、どこか暗い感じがするな。

 前来た時よりも少し悪化している気がする。

 なるほど、これは早めに対応しておく必要があるだろう。


「――それで、向こうでは――」

「――ふむ。コレで不届き者を斬ると」

「違うっ! どう使えば証文が武器になるのよ!」

「もちろん心得ております」

「あ……そ、そう。つまらない冗談だったわ」

「峰打ちにとどめよ、と」

「峰!?」


 最初は道を歩くついでのような話だったのが、いつの間にか人気の少ない村外れに引っ張られる形に。

 エスコートするはずの(執事)が半ば引きずられてるのはどうなんだろう?

 ともかく十数分ほど騎士の元に着いたら何をするか指示されてから、改めて騎士の屋敷まで向かう。


「……ナメられたものね」

「斬りますか?」

「それも良いかも――いえ、言ってみただけ。シオンは打ち合わせ通りにするのよ」

「お任せ下さい」

「……お願いだから、余計なことだけはしないように」


 辿り着いた騎士の屋敷は地味に豪華だった。

 後で聞いた話だが、リクレス家に代々伝わる掟の中には過度の贅沢を戒めるものもある。

 それを正面から破られるのは、家柄を誇りにするミア様にこの上ない挑発となった。


「おい門番」

「なんだテメェらは? ここが何処だか知らないとは言わせねーぞ」

「リクレス家からの使者だ。証文もここにある」

「……チッ。入りな」


『いきなり柄が悪い門番ダねー』


 だが、役職は果たしている。

 法だから当然のことだが……拭えない違和感がある。嫌な感じだ。


『――ふふっ。キミはそう思うのか』


 どういうことだ?

 一応尋ねてみるが、こうして煙に巻く態度を見せるカルナからそれ以上のことを聞き出せた試しはない。

 そして、経験則ついでにもう一つ。

 こういう時は大概ろくでもないことが起きる。


「――それで、これはどういう事。説明なさい」

「どうもこうもない……まさか当主様じきじきのお出ましとは都合が良い。大人しくしてもらおうか」


 通された部屋には騎士と思われる贅沢な身なりの男。

 そして、ならず者と見紛う武装した男たちが待ち構えていた。


「……まさかここまでの愚か者だったとはね。シオン、私を連れて逃げなさい」

「逃げる?」

「仮にも天武剋流の後継なら、それくらいできるでしょ。経路なら私が指示するわ」

「ふん、今更こそこそと何を話そうが無駄だ! 者ども!」


 なるほど、来る途中さりげなく辺りを気にしていたのはこういう事態に備えてか。

 ただ……一つ分からないことがある。


「掛か――れ゛ッ゛!?」

「逃げる、とは……何からでしょう?」

「……え?」


 虚の型は他の型の技の素手バージョンを纏めたものだ。

 今使った技は螺旋突。

 放った突きは纏った振動で居並ぶ男共を軒並み気絶させながら進み、奥にいた騎士の隣の壁で爆発。

 水平に拡散した衝撃波が騎士を襲った。

 殺してはいないが、まともに立つこともできないはずだ。

 本来はこの一連を敵の体内で完結させる内部破壊技だが、応用すればこういう使い方もできる。

 建物に被害も出してないし、かなり良い感じで無力化できたんじゃないか?


「……それでは、いかが致しましょうか」


 少しばかり得意な気持ちで、俺は主へ慇懃に一礼した。

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