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自由のために

西暦2084年2月6日20:43


その時、館内を素早く走る一人の男がいた。

体勢は前に身体を倒し、手に銃を持ちながら、風を切って、道を進

む俺の目の色や、無口さが何かを醸し出していた。

裏切り者を討つ。

その一心だけが、俺を動かしていた。

スピードが収まらず衝突するように一人でエレベーターに入っていく。

装置がセットされているのは、地下7階の第4特殊特科研究室。その下に大規模な爆弾が埋め込まれている。そこに着くまで、約7分と言ったところだろうか。

あれが作動するのは、今日21:00ジャスト。それまでにたどり着かなければならない。

その(あれ)とは、大規模設置型爆弾ラグナロクである。それを悪用しようとしている、ガイル・デストロ・シーヴァ。どちらも、消去しなければ、世界は終わる。だが、ラグナロクを作っていたときの助手をしていたのは、かつて、奴を信じていた者であり、親友の俺だ。自分が悪い。そうやって、自分を責め込むことしか、今の俺にはできない。しかし、助手はもう一人いた。自分の姉であり、目票だった人の一人。シャルル・ガレイン・ニードである。姉さんはガイルの恋人でもあった。今思えば、姉さんもどうかしていたと思う。姉さんも今日の9:50分にガイルに呼ばれてると言っていた覚えがある。現在9:48。まだ、姉さんは来ていないと思われる。

そんなことを考えているうちに地下7階に着いたようだ。ドアが開くと、いかにも厳重に守られていそうな、合金のドアが目に入る。

完全にドアが開き終わると、即座に走り出した。そして、開いた金属のドア。放った銃弾。

これで守れる。みんな死なない。姉さんもガイルも、俺も。

研究室に響く銃声。

俺の銃の出した、音が奴を止めるシグナルのようにも聞こえた。


だが、聞こえた音は一つではなかった。それも、俺が放った音より早く。すれちがうお互いの銃弾。

腹を貫通し、噴き出す赤き血。

その場で床に倒れ、それと共に、さらに広がりながら出て行く血。何もかもを失ったように絶望した目からあふれ出す涙。

「相変わらずいろんなことに気付くのが遅いね~」

まるで、何年も待っていたかのような口調で、俺を上から見下す。いや、まるでではない。待っていたのだ。ずっとこの日を。この瞬間を。

「き・貴様・・・」

「どうだい、今の気分は?」

「許さん・・・、許さな・・・・・・い。」

ちゃんとしゃべり切れるほど気力は残されていなかった。だが、目はまだ開ける。

ぎりぎりだが、首元までならみることはできた。ほんの少しの力を使い、奴の目をしっかりと見ることができた。見て、すぐに分かったのだ。こいつは俺の知ってるガイルじゃない。優しかったあの日のガイルじゃない。目の色は青みがかった白ではなく、何かを手にいれ、それに囚われた青紫色だった。

目の前に立つ敵の向こうに見える時間。8:51:18.まだ姉さんは来ない。来る途中で何かあったのだろうか。自分のことより心配になる。

、あの鉄のドアが破壊された。その煙の先に見える輝かしき希望の光。

「ガイル!ガイル・デストロ・シーヴァ!」

後ろから聞こえる威勢よい声。姉さんだ。来てくれた。

「ね、姉・・さん・・・!」

見えたその勇ましき姿に、うろたえる様子はどこにもなかった。

「シャ・・シャルル!?なぜ、ここが分かった!?」

「私も見たのよ、あなたのノートを。それでここへ来たの。」

「ちっ・・・!また、ねずみが一匹入り込んできたか・・・!」

「ねずみのように、丸まって撃ちのめされるのはあなたよ!」

誠意のこもった声と共に[レーザーソード]と呼ばれる次世代型武装の剣を引き抜いた。

「ごめんね・・・遅れちゃった・・・。ちょっと待っててね。今から、それまで死なないでよ!」

その優しく勇ましい顔に俺は勇気と力を取り戻した。その瞬間に思うまだ戦える。まだ終わらない。右膝を床の上に立たせ、左膝をのばし、そして浮かせ、顔を起き上がらせると俺は大地に立った。

「悪いな、昔からそう諦めが悪くないんでね。」

「まだ、生きてやがったか、死にぞこないがぁ!」

だが、そう簡単に身体は動かない。

ガイルに復習の目を向けると、その後ろに何か怪しい文字が表示されていた。

[Sawwid sistem]

サウィッドシステム。どこかで見たことのあるスペル。いや、見たばかりな気がするこの文字。確か・・・そうだ、さっき見たガイルのノートに書いてあった気がする。

「ああ、これかい?サウィッドシステムは、ある出来事が起こるその前にある物体を特定の場所に転移することが出来るシステムだ。」

と、目線の先を見抜いたように説明する。

「じゃあ、周りだけ死んで、自分だけ生きようって言うの?」

姉さんは問う。実際その通りそのサウィッドシステムとやらを起動すれば、逃げることは可能だ。

「自分だけ?そんなわけないよ。僕は、偉大なる研究者たちと共に惑星アースガルズに転移し、そこで自由に暮らす、それが目的だよ。あいつらにはたくさん働いて貰わないとだけど。」

惑星アースガルズ。

確か、最近発見されたという地球によく似た惑星らしいが、そこに住んでいるのは、宇宙人とかそういうものではなく、神や魔獣、それからピクシーと呼ばれる人間がいると情報が出回っていた。特に多いピクシーは、耳が横に長くなった人間のような顔をしているという。だが、実在するとは、少しも思いもしなかったのである。

「さてと、もう時間が近いな。君たちには、この地球と一緒に消えてもらんだから、無駄なあがきは疲れるだけだと思うよ。」

確かにその通り時間がない。現在8:58:21.

あと1分半で全てが消える。奴以外全員消える。そう思っていた。

「・・・!これは・・・!」

「そう、全ては自由のために!そして、僕のために!」

だが、サウィッドシステムの画面を見ると、転移機能が発動するメンバーに登録されている人は、ガイルだけではなく、26487人もの人々が登録されていた。

登録者の名前には、[wald-birth]という明らかに名前ではないと思われるものまであった。

「その[wald-birth]っていうのはねー、争いを生み出すための洗脳能力だよ。科学薬品を与えることで、その力を生み出した。これによって洗脳された人間共は最高の能力を手に入れる。僕がつくりあげる未来は本当に素晴らしいと思わないかい?」

「そんな未来・・・俺はちっぽけもいいと思わないね!」

徐々に近ずくガイルの足音。焦り狂う俺の心。

そんなことを気がかりに登録者の名前を見ていると、かなり有権な研究者の名ばかりが載っていた。

そう、こいつはすばらしい科学者ばかりを残して、新たなる自分の創造する世界をつくりあげる。

それこそがこの男、ガイル・デストロシーヴァの真の野望なのだ。      

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