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題名を変更しました。
鱗片の記憶~守護者の想い~から
いつのまにか勇者~俺が勇者な理由~
に変更しました。
side海月
―――次の日の学校
「おい聞いたかよ、転校生がくるらしいぜ?」
「え、まじ?どんな奴くんの?」
朝教室に入って自分の席に座り、教科書をまとめていた時に聞こえたんだが、転校生がくるらしい。
こんな時期に転校生かよ、とは思うが、特段珍しい訳でもないだろう。
そこまで興味は持たなかった。
「海月聞いた?転校生くるんだって」
「ん?聞いたぞ。朝近くの男子達が話していたのが聞こえた」
瑠奈がチャイムのなる数分前になって俺の方へ寄って来た。
おそらく転校生の話を誰かからか聞いて、俺に伝えたかったんだろうな。
残念ながらすでに聞いていた訳だが。
「む……なんだ、知ってたんだ」
無表情なはずなのに悲しんでいるように見える……?
……なんか悪いな、嘘でも知らないって言っといた方が良かった。
というか珍しいな、瑠奈はあんまり転校生とかそういう話題に興味を持たないんはずなのに。
「そんなに転校生が気になるのか?」
「……ん。 テレビの星座占いで今日は最高の日だったの。だから少し気になった」
「お、そりゃすげーな」
へー、瑠奈って星座占いとか見てるんだな。
確かに星座占いで一位だったりすると嬉しくなるよな。
俺も前に雑誌かなんかの血液型占いで金運最高、恋愛運最高、なんて事があって嬉しかったな。
……まあその月は得に何も起こらなかったんだが。
「はーい、皆さん席についてくださーい!始業のチャイムがもう少しでなりますよー!」
担任の女の先生が教室の皆に大きな声で呼び掛ける。
「あ、ほんとだ。海月またね」
「あいよ」
先生の呼びかけに瑠奈がちらっと時計を見て、流れるような動きで自分の席へと戻っていく。
がやがやとなっていた教室も少しずつ静かになっていき、教室の皆も席に戻っていく。
―――キーンコーンカーンコーン
「はい、それじゃあ朝礼はじめまーす」
「起立―――礼」
「「「お願いしまーす」」」
いつものように朝礼―――いわゆる朝の会的なのが始まった。
いつもなら連絡事項を言って終わるのだが、今日は転校生の紹介があるだろうということが皆わかっているからか、なんだか周囲がざわついている。
「うんうん、皆もう知っているみたいだけど、転校生を紹介しまーす! 入って来てー」
先生が手を扉にかけ、ガラガラと音を立てて扉が開く。
そして出てきたのは―――まさに美少女。
身長は高く、目は少し鋭い感じ。さらさらとした綺麗な髪を腰くらいまで伸ばし、少し笑みを浮かべている。
教壇までの道を長い髪をゆらゆらと揺らめかしながら歩く姿に、教室の誰もが目をくぎ付けにされた。
そして彼女は教壇の前に立ち、周りに一瞬でお花畑が出来るほどの笑顔である一点を見つめながら言う。
「私が今日転校してきた十島 玲音です♪ よろしくお願いしますね♪」
ある一点を見つめながら―――あきらかに俺しか見ていないが
そう自己紹介した。
「うおおおおお!可愛い!やばい!三次元でこの可愛さだとっ!?」
「現実はまだ俺を見捨てていなかったのか……」
「きゃー!可愛いー!ねえねえ、どこから来たのー??」
「……じゅるっ」
教室にいる皆が様々な反応を見せる。明らかにアブナイ奴がいるみたいだが……。
「―――♪」
「……」
なぜだろう、ずっと俺の方をまぶしすぎる笑顔で見つめてくるんだが……
自意識過剰だと思われそうだな……
「玲音ちゃんの席は……一番後ろの席が空いているから、そこに座ってねー」
先生が席を指さし、彼女に行くように指示を出す。
すると彼女は少し考えるようなそぶりを見せたあとに、ハッという表情を浮かべ先生に告げた。
「私……目が悪くて……前の方の席がいいな……。……ここの席とか」
彼女は先生に上目ずかいで懇願し、俺の横を指さす。
ちなみに俺の席は教卓の目の前、誰もが嫌がる席なんだけどな……
「うっ……え、えっと~、新島くん、蓮ちゃんと変わってくれる……かな?」
「喜んで変わりましょう! どうぞお使いください!」
俺の横の席の新島――― 数学では前の席で、ギャルゲーばっかやってる奴だ。ちなみに彼女の自己紹介で一番最初に反応したのは彼である。
新島は突風もかくやといった動きで席を立ち、カバンをもってすぐさま一番後ろの空いていた席へと移動した。
「ありがとうございますっ♪」
「ぐはっ!」
彼女の感謝の言葉とその笑みに倒れた新島は、とても満足そうな顔だったという―――
◇
かくして俺の横となった彼女―――十島さんだが、授業中でもたびたび俺の方を向いてくる。
何か俺の顔についているのか?
休み時間になり、俺もさすがに気になって尋ねた。
「な、なあ十島さn―――」
「玲音でいいよっ♪」
「十しm―――」
「玲音でいいんだよっ♪」
なんだこの威圧は……。
「玲音……はなんでちらちら俺の方を見てくるんだ?」
俺はやっとその疑問を口にすることができた。
しかしその言葉を聞いて玲音は―――
「えっ……見ちゃだめだった……?」
「え!い、いや見たらだめな訳じゃなくてだな……何で見るのかなーっと思ってな……」
今にも泣きだしそうな顔をしてそんな事を言われればさすがに焦る。
ほら、周りの奴らもこっち注目してんじゃないかよ。
「……んふふ、えっとねー♪海月君のこと好きだからーっ♪」
「「「……は?」」」
俺だけじゃなく、何人もの頭にハテナマークが浮かんだ瞬間だった。
side海月―――end
◇
side瑠奈
転校生が来た。
すっごく可愛い子で、笑顔がとても似合う子。
……でもこの子ちょっと嫌いだな。
初めてあったはずの海月にべったりだし、なにより授業よりも海月の方に集中してる。というかずっと見てる。
「玲音……はなんでちらちら俺の方を見てくるんだ?」
海月が転校生に当然の疑問を聞いてる。私も気になっているし、盗み聞きしなきゃね。
「えっ……見ちゃだめだった……?」
「え!い、いや見たらだめな訳じゃなくてだな……何で見るのかなーっと思ってな……」
……この子、海月の弱い所しってるのかな。
泣きそうになったり少しいじけると海月は甘くなる。
それでも何とか海月が転校生に疑問をぶつけた。
他の皆も気になって聞いてるみたい。
「……んふふ、えっとねー♪海月君のこと好きだからーっ♪」
「「「は?」」」
うん、これからこの転校生には注意しとかなきゃ。
……海月は渡さない。
side瑠奈―――end
初の瑠奈視点。
これから物語は急展開していく予定
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