06-お、おう……
外へ出ると、今年はまだ使ってなかったファンヒーターの燃料を取りに行く。こう何度も行き来をすると、階段での注意もイイカゲンになってくる。まして灯油を抱えていては、さらに雑になった。
踊り場まで戻ってきて、ふと思いつき、自分から三奈美に、頭の中で問いかけてみた。無言での会話なら半分経験済みだ。
(そろそろ着替え、終わった?)
(うん、もうチョット)ちゃんと伝わって返事が返ってきた。
こういう風に使えばイイのか、全て三奈美の能力なのに、自分にも特別なチカラが備わった気がして、少しうれしくなった。
部屋の中から、ユキがキャッキャ言っているのが漏れ聞こえてくる。このくらいの大きさなら問題ないだろう。
まもなく三奈美から入室のお許しをもらった。
「お待たせ……」三奈美は学校で使う紺色のジャージに白のカーディガンを羽織っている。裸足だとオレが引きずる裾も、彼女には短いくらいだ。
さっきと違い色気は無いが、オレが日頃よく身に着けているモノを選んだコトが、嬉しくも照れくさかった。
「ワザワザそんなの選ばなくても」
「授業は苦手だけど、ほかの学校の体操着なんて、メッタに着られないもんね!…… でもコレって上下オソロイじゃないんだね」
「ウチの学校ユルイから、無地の紺ならなんでもよくて、下は正規のをはいているヤツなんかいないよ」
「何で下だけ?」
「生地が薄くて目立つから」
「チ」
「ユキちゃん!」さすがに三奈美も止めた。
ユキのほうは、外見だけならさっきと同じに見える。
「ワタシのキャミだけ、カップつきじゃないんだけど!」
「無いほうが自分のだって、分かるくらいなら必要ないだろ」
「実は、お姉ぇーちゃんだって必要ないんだけどねぇ~っ!」
「ユキっ、よけいなコト言わないのっ!」三奈美はイラついた顔を初めて見せた。
「ごめんなさぃ…… でもユキオは小さいオッパイも好きだよね?」
「お、おう…… 嫌いじゃない」こっちに振るなっ!
「あっホントだ!」三奈美の表情はいっぺんに緩んだ。
「あのさぁ~、あんまりオレの頭、覗かないでくれる?」
「そうね、イヤだよね、アタシには難しいけど努力する。
ユキちゃんはブロックするの得意でしょ。これからはお兄ちゃんの頭の中、勝手に覗かないでね」
「お、おう…… やぶさかでない」オマエの言うコトなんか誰が信用するもんか!