04-いっしょに入る?
「ついでだから、オマエはこれからユキでいいな」
「何でワタシに『さん』をつけない!」
「オマエがつけないからだ」
「ユ・キ・オ・さ・ん・素敵っ!」頬に両手を添え、小首をかしげてウインクをする。
間違いなく可愛いいポーズが間違いなく憎たらしい。
「キモチワリーからつけなくてイイ」
「無理しなくてイイんだぞぉ、あまりの可愛さにユキオの胸が、キュンキュン鳴ってるモン」
「そんなに誰にでもキュンキュンしてたら、死んでしまうわっ!」
(アタシにも聞こえなかったなぁー、ユキちゃんじゃアタシの敵にはならないわね~っ)
「当たり前でしょ、ワタシはお姉ぇーちゃんの味方でしょ…… 何言ってんだろう、みっともない」
ユキの容赦の無いツッコミに凍りつく三奈美が、可笑しくて可愛いくて、こっそりキュンキュンしていたら、オレを指差して二人が同時に吹きだした。
コノ二人を相手に、こっそりはありえない。
オレも、何だか分からないが、何となくいっしょに笑った。
ユキは、どうしてもお風呂に入ると言って譲らない。
見つかる可能性は確かに低い。
オレ自身は、普段から父が寝ている時間を気にせず、シャワーを使っている。
トイレに起きてきて、ガラス越しにニアミスしても、特別なコトが無ければ話しかけてこない。
出合い頭さえなければ、大丈夫なハズだし、抜け道もある。バレた場合が厄介すぎるだけだ。
とうとう押し切られるかたちで部屋を出る。
ドアノブがすでに冷たい。
ドアを開けると冷気が流れ込み、ブルっと震えて肩が上がる。
自分は平気だが足元が見やすいように、部屋の明かりはつけておく。
踊り場で二人を待って誘導する。三波もユキも一段一段、慎重にそっと足を運ぶ。
オレはスニーカーを選んだが、二人が履いている清女指定の黒い靴では、いくら気をつけても音がする。
階段の薄い鉄板が少し響いて、”クォン、クォン”と鳴った。
下から冷たい風が吹き上げてくる。シャッターはいつも開けっ放しだ。
そういえば、部屋へ上ってきたときはどうしたんだろう? と思い振り返ると、風が三奈美のスカートを持ち上げてる。白い下着を想像したが確認は出来なかった。
ユキが「エッチ」と声に出してしまい、あっ! の口のまま、シマッタの顔をした。
さっきから、父の思考を読んでいる三奈美に変化は無い。
階段を下りると、後ろに回って奥の右側に穴が開いていて、そこはドアの枠だけで、ドアは入っていない。
穴をくぐるとスグ母屋の勝手口だ。
オレたちはソレを使わず左に回り、ブロック塀との間を進んだ。洗濯機の手前に直接、脱衣所へのドアがある。
オレが開けようとすると運悪く、鍵が掛かっていて、一人だけで引き返し勝手口を静かに開けた。
靴を持ったまま茶の間と台所の間を抜け、父親の寝室をゆっくり通り過ぎる。
ようやく脱衣所にたどり着き、風呂場の電灯をつけ、寝室のほうを確認して引き戸を閉めた。
鍵をはずすと外からノブが回り、寒そうに三奈美が顔を出した。
中と外の人間が入れ替わる。
ユキが手招きをするので、顔を寄せると、俺の耳に手を当てて囁いた。
「ユキオー、いっしょに入る?」また小さいのがチョッカイを出してきたので、オレも同じようにして返した。
「ガキとは入らないよ!」余裕でかわす。
(アタシもいっしょに入りたいな)三奈美が乗っかる。
「ガキがいない時にね」そう言ってドアを閉めた。
よーしっ、うまく乗り切った。
心の中でガッツポーズをするが、これから、はじめてのおつかいが待っている。
女の子の下着を買いに行くのだ。




