03-本当に口
「ユキオって言うな! お前だってユキオだろっ!」
オレは、声のボリュームに気を使いながら叱ると、ベッドの目覚ましを見た。午前一時を過ぎている。
「もうこんな時間だし、明日でいいだろ、オヤジが寝てるんだし無理だって」
「ヤダ! 気持ち悪い! 絶対入る!
お父様は今、ゾンビの夢見てるから大丈夫だよ」
「それって、すぐに起きそうじゃないかっ!」
「だって、楽しそうにデートしてるよぉ」
「どんな夢だよ! 明日の朝、オヤジが出かけてからなら、誰もいないから、それでいいだろ?」
「ヤダッ!たらヤダ!」
(ユキちゃん、一晩ぐらいガマンしてよ)三奈美もなだめる。
「ヤダッ、お姉ぇーちゃんといっしょに入る」
オレの頭の中で、素早く三奈美の裸が描かれた。
(ゴメンね…… アタシの胸、そんなに大きくないから)
「ユキオ~、スケベェ~、お姉ぇーちゃんの顔から下が、さっき見た写真と同じだぞ!」
「何だよ、子供がそんなモン見ちゃダメだろ」
「ナニ言ってんだよ!ユキオが見せたんだろっ!」
「オマエ、可愛くないな」
「オマエは可愛いな、顔真っ赤だぞっ!」
(エッチなコトくらい、べつに恥ずかしがらなくてもイイのに、それが普通だし、そーゆーのにアタシたち慣れちゃってるしね)
「オマエも慣れてるの?」小さいのに聞いてみた。
「当然でしょっ、大人ですから」
「どう見てもガキだろ!」
「オマエよりくわしいよ」
「それは問題アリだろ」
(まあね、アタシたちはどうしても、よけいな情報が入ってきちゃうからね、でもユキちゃんだって春からは中学だしね)
「ウソっ!……」せいぜい二三年生くらいと思っていた。
「失礼ねっ!レディーに向かって……
でもお風呂を使わせてくれたら許してあげる」
「オマエはベビーだろ」
「ユキオなんかチェリーだろ!」中身は早熟なのだろうが、実年齢より幼く見える少女に、実際言葉にされるとこたえた。
「分かったっ! 分かったから、女の子がそういうのはヤメような。レディーはそんなコト言わないぞ」
(ユキ、言いすぎだよ、お行儀悪いぞぉ! いくらホントのコトでも……
幸男君も悩まないでね、アタシだってバージンだし)
「キミもそういうコト言わない!」
(言ってないって、心に思っただけだからセーフだね。
それと、そろそろキミじゃなくて名前で呼んでくれない?)
「じゃ、波多さん」呼び方を変えるタイミングは、相手が男でも気を使う。
(波多さんじゃなくて、ミ、ナ、ミ!)
「じゃあ三奈美さん」
(さんいらない!)
「えーと、それならキミも呼び捨てでイイよ、このチビ、じゃなくてレディーもそうしてるし」
(まだキミって言ってる。次からはちゃんと呼んでね)
「うん、次から」
「ハッキリしろよユキオーっ、そんなんじゃモテないぞ!」このレディーは本当に口が悪い。