ピンチ
…どうやら私は戦国時代に来たようです。あきちゃんをいくら質問攻めにしても、それは揺るがないようでした。あきちゃんは未来から来たと言っても信じている風には見えなかったけど…
あ、そうそう、先ほどまではこの女中さんを「あきさん」と呼んでいたのだけど…なんか妙に意気投合しちゃって!頭痛いのはどこへやら…しばらく話し込んでしまったのでした。
それにしても、ここはどこなのかという問いから、どうやったらこんなに話が膨らむのか…我ながら、能天気な性格だと思います、オホホ…とにかく、戦国時代でもガールズトークは花咲くようで…いろいろ聞いちゃったんだもんねー♪そうそう。あきちゃんには許嫁さんがいるみたいだけど…顔を赤らめて話してくれなかったなあー…それをはぐらかすように、
「あっ、そういえば高久様にあなたがお目覚めになったら部屋に来るよう伝えなければならないのでしたわ、私としたことが…」
なんて言い出したので、この部屋を出ることになりまして、その私を見つけたという高久様とやらに会いにいくことに。
…突然刀で切りかかられたりしない…よね?
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「高久様、お目覚めになられたので、お連れしました。」
「うん、入っていいよ。」
あきちゃんが少し改まったように声をかける。ふすまを開けると、そこには机に向かっている男の人がいた。
「俺の名は、直江高久。お前の名はなんという?」
優しいような、それでいて見透かすような目で見られると私も緊張する…
「…え、あ…小笠原咲と申します。」
「咲…というのか。そんなに構えなくてもいいよ。ただ、俺はお前が何者か知りたいな。どうやってうちの屋敷の警備を潜り抜けた?」
そ、そんなこと言われてもなあ…潜り抜けた覚えはないしな…っとここであきちゃんが口を開いた。
「高久様、咲さんは未来から来たと申しております。未来のある場所から、この屋敷に転送されたと。」
…一応信じてくれたのね…あきちゃん…
「…ほう?…あきが言うことをお前は鵜呑みにするのだな?」
…そうですね、疑われて当然です、そりゃそうですよ、私だって疑ってますもん、戦国時代なんてそんなわけあるわけないもん…ああ
「…ええ。咲さんのいうことに偽りはないかとわたくしは思いますわ。」
あきちゃん…なんていい子なの…そう思っていると、高久様と呼ばれた男の人は、じっと私たちを見て、それからちょっと笑みを浮かべて言葉を発した。
「…そうか。…咲、しばらくこの屋敷にいるといいよ。あき、面倒を見てあげて。」
…これはピンチを脱したということ…かな?