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おそるおそる伸ばした指が呼び鈴に届くと、今の俺の心境とは全く逆のかるーい音がなる。
出て来て欲しい。
でも、ドアを開けて欲しくない。
背中合わせのようで忠実に言い表すならこうとしか言えない心境だ。
暫くたっても何の反応もない。念のために、もう一度鈴を鳴らしても同じ反応。
「…………はぁ」
思わず溜息をついて覚悟を決め、俺は異臭の充満しているであろう魔境への扉に手を伸ばした。
「大体、どうやったらこんな匂いが作れるんだか。……ある意味才能だよ奈鶴」
案の定倒れていた幼馴染の横に中身の詰まったスポーツバッグをどさりと置いて、幼馴染を肩に担いだ。
2007/08/06