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「…………」
「ねぇ」
「…………」
「ねぇってば」
「…………」
「………………シスコン」
「喧しい!」
ようやく振り返ったそいつの目は、想像通り盛大に潤んでいた。
でも、それを絶対に零すまいとしているってことは、彫刻刀で彫ったみたいな深い眉間を見れば明らかだった。
そうやって強がるから、俺はお前を放っておいてやれないんだって、いい加減長い付き合いなのに気付きもない。
「シスコン」
「…………煩い」
「あまえた」
「………………訂正しろ、莫迦」
「寂しがり?」
「…そうかもな」
「おや素直だこと」
「娘が嫁に行くってこんな感じかも」
「…………」
「…………」
「……それ、二回り上の姉貴に対する言葉じゃないよ」
思わずそう言ったら、人それぞれだと言って叩かれた。
まあ、やつあたりできるまで回復したんなら、それはそれでいいけどね。
2007/08/03