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貴夜と奈鶴  作者: かわ
1/9

01

「…………」

「ねぇ」

「…………」

「ねぇってば」

「…………」

「………………シスコン」

「喧しい!」


 ようやく振り返ったそいつの目は、想像通り盛大に潤んでいた。

 でも、それを絶対に零すまいとしているってことは、彫刻刀で彫ったみたいな深い眉間を見れば明らかだった。

 そうやって強がるから、俺はお前を放っておいてやれないんだって、いい加減長い付き合いなのに気付きもない。


「シスコン」

「…………煩い」

「あまえた」

「………………訂正しろ、莫迦」

「寂しがり?」

「…そうかもな」

「おや素直だこと」

「娘が嫁に行くってこんな感じかも」


「…………」

「…………」


「……それ、二回り上の姉貴に対する言葉じゃないよ」


 思わずそう言ったら、人それぞれだと言って叩かれた。

 まあ、やつあたりできるまで回復したんなら、それはそれでいいけどね。






2007/08/03

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