ある朝、いつもより早い時間に目を覚ますと、婚約者が室内に入ってきていまして……!? ~何が起きたのかすぐには分かりませんでした~
それはある早朝のことだった。
ふと、いつもより少し早い時間に目を覚ますと、婚約者である彼アディントが勝手に部屋に入ってきていた。
まさかのことに驚いて飛び起きて、何が起こったのかすぐには理解できず硬直していると。
「なんだよ、その態度は」
不快感を露わにされてしまった。
「俺のことが嫌いなのか? そんな、悪魔でも見たかのような顔をして。俺はお前の婚約者だぞ、なのに、ここに俺がいることがそんなに不快か? 俺が嫌過ぎてそんな顔になっているのか? ああ、そうだよな。きっと。そういう顔をしているものな。婚約者に対してそのような顔をするとは、お前、最低な女だな。いや、女だからじゃない。人として終わっている。明らかに。婚約者がわざわざ部屋まで来てやったというのに、そんな目でこちらを見るとは、最低中の最低な人間だな」
しかもそんな風に一方的に大量の言葉を押し付けられて。
「呆れた。……もういい。お前との婚約は破棄とする」
さらには関係の終わりを告げられてしまう。
寝ている時に勝手に自室に入ってこられていて驚いた。
ただそれだけのことだったのに。
「縁切りだ。……じゃあな」
こうしてアディントとの関係は終わった。
◆
あれから一ヶ月ほどが経ったある日、アディントが逮捕されたという話を耳にした。
何でも当時彼には惚れた女性がいたそうなのだが。
ある晩いきなり彼の家に忍び込んでいて。
その女性の自室で待機していて、帰宅し自室へ戻ってきた女性にいきなり凄まじい勢いで想いを伝え結婚したいとまで言ったらしく、驚いた女性に通報されてしまったそう――そして捕まった、ということのようである。
牢屋送りになったアディントの人生に希望はない。
彼は終わったのだ、社会的に。
命こそ奪われはしないけれど、二度と以前のような普通の暮らしはできないだろうし、周囲から普通の人として見られることもない。
◆
突如婚約破棄を告げられた早朝からちょうど二年となる日、私は、一人の青年と結婚した。
「こうして貴方と正式に夫婦になれて嬉しいわ」
「同じ思いだよ」
「どんなことがあっても、上手くやっていきましょうね」
「もちろん!」
夫となってくれた彼は紅茶を淹れることがすごく得意だ。
彼との出会いは、暇潰しがてら通っていた喫茶店だった。
婚約破棄され自由時間が増えたこともあり定期的にその店に通うようになっていた私に彼の方から話しかけてくれて、最初は浅い会話ばかりしていたのだけれど、段々距離が縮まっていって。
それで気づけば親しくなっていた。
そうして、ほぼ無意識のうちに、共に行く未来を想像するようになっていて――その果てで結ばれたのである。
◆終わり◆




