第34話:美術館長、盗賊団の確保に一役買う
突然現れた私たちを見て、特にダニエルは憎しみの籠もった目を向ける。
「お前は宮廷魔導師のジャクリーヌ! ……クソがっ、嵌めやがったな! 《雷弾波》!」
ダニエルは右手を突き出すと、間髪入れずに激しい雷の波動を放ってきた。
部下も併せて、火の球や水の槍など強そうな魔法を発動する。
これまた間髪入れず、ジャクリーヌさんが防御の壁を出して防いだ。
「無駄な抵抗は止めろ。罪が増えるだけだぞ」
かっこいい!
前世の刑事ドラマで聞いたような台詞だ。
攻撃が効かないと察したのか、ダニエルは舌打ちして『悪魔の黙示録』に懐のナイフを突き付けた。
「無駄な抵抗を止めるのはお前だ、宮廷魔導師。この絵がどれだけ貴重かわかるだろ? 俺たちを見逃せば何もしない。さあ、そこをどいてもらおうか」
絵を人質にするとは……。
芸術好きな人間としては、非常に悪辣極まりない。
でも、大丈夫。
私は一歩前に出て、彼らに投降を呼びかける。
「私はこの美術館の館長です。投降してください。ここの所蔵品には全て強力な防御魔法がかけられているので、傷つけることは不可能です」
「黙れ、名ばかり館長の小娘が。貴様の戯れ言に耳を傾けるなど……なぜ、ナイフが通らない!」
ダニエルは何度もナイフを突き立てるけど、額にでさえ傷をつけられないようだ。
さらにはナイフが折れ、床に空虚な音を立てて落ちる。
ようやく彼らは状況が掴めてきたようで、それぞれの額に脂汗が滲む。
逃げ場をなくすため、この展示室は窓のない単独の小部屋で設計した。
撤退するには私たちを倒すしかない。
相手は五人だけど、こっちの方が人数も多いし警備ゴーレムもいるし、何よりとても強い魔導師のジャクリーヌさんがいる。
むしろ、劣勢に陥ったであろうダニエルはニヤリと笑った。
「勝ち誇った様子でいるが、俺たちが何人いるか忘れたか? ……お前ら、集まれ!」
彼の大声を聞き、部下が駆け寄る慌ただしい足音が響く。
よし、今だっ……【美術館長の加護】、発動!
私が念じた瞬間、館内中に驚きの声が轟いた。
「「な、なんだ!? 床が変だぞ!」」
加護の力を使い、"吟遊回廊"が立つ床の周りから金属の縄を生み出した。
瞬く間に彼らを捕らえ、後ろ手に縛り上げる。
突然の出来事に混乱した様子で、ダニエルは私を睨みつける。
「貴様っ、何をした! 木の床から鉄の縄を生み出す魔法など存在しないぞ! しかも、呪文も唱えずに……! 今すぐ離せ!」
「この美術館の防衛魔法です。見ての通り、侵入者を問答無用に行動不能とします。もう観念してください」
彼らはしばらく縄を解こうとしていたけど、やがて諦めたのかがくりと膝をついた。
展示室の外からは、部下たちの呻き声が聞こえる。
加護によって館内の明かりを全て灯したところで、警備ゴーレムやジャクリーヌさんの親衛隊が外に連れて行く。
こうして、美術品を盗む悪い盗賊団――"吟遊回廊"は、無事に全員が捕まった。
□□□
一件落着した後、私たちは美術館の外でお別れの挨拶を交わしていた。
拘束された"吟遊回廊"は親衛隊と警備ゴーレムに連れられ、まずはミルフォードの街に向かうとのこと。
その後、王国騎士団の部隊と合流して帝都に連行するようだ。
私はジャクリーヌさんの力強く、凜々しい手と握手する。
「お世話になりました。ジャクリーヌさんたちのおかげで大事な絵が守られました」
「いや、世話になったのはこちらの方だ。ミオの作戦や力がなければ、"吟遊回廊"の確保には至らなかった。また後日、きちんと感謝させてもらいたい」
ウェンディさんやパトリックさんとも挨拶を交わし、ミルフォードの街に歩く彼らを見送る。
彼女らの姿が見えなくなったところで、フォキシーが私の首に巻き付いた。
『今回も、ミオ大活躍だったコンね』
彼の言葉に続くように、ノーラたちも感謝の言葉をかけてくれた。
「盗賊団に毅然とした態度で立ち向かうのすごくかっこよかったよ!」
「さすが館長さん……です……」
「お主がいれば、この美術館は未来永劫安泰じゃろうて!」
『ムテキ……』
みんな、笑顔で私を讃えてくれる。
――自分を慕ってくれる大事な仲間たちがいること。
それが一番の幸せだと改めて実感した。
今日は新月で月は見えない。
その代わり、数多の星々が澄んだ夜空に煌めいていた。
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