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第33話:美術館長、盗賊団を誘き寄せることに成功する

 最初に見つけたのは勘づいたのはフォキシーだ。

 館長室で『悪魔の黙示録』についての資料を調べていたら、外から聞き慣れない物音がすると教えてくれ、外を見たら武装した男たちが木陰に隠れているのが見えた。

 転生特典で【無敵の身体】を得たため、私はどんな暗闇でも夜目が聞くのだ。

 すぐにみんなに知らせ、よく見える館長室から様子を窺うことになった。

 ジャクリーヌさんが険しい顔で外を見る。


「やはり来たか。みんな、よく聞いてくれ。事前の作戦通り、現行犯逮捕を狙う。"吟遊回廊"が館内に入り『悪魔の黙示録』に手を掛けた瞬間を以て、ヤツらを捕縛する」


 事前の説明通りの作戦に、私たちは力強く頷く。

 相手が言い逃れる余地を与えないこと。

 それが重要なのだとジャクリーヌさんが教えてくれた。


「ソフィちゃん、ゴーレムたちに指示をお願いできる?」

「任せろ、ミオ。悪党共はワシのゴーレムが逃がさんわ」


 外にも警備ゴーレムが多数いる。 

 ソフィちゃんの指示で気づかれないわざと負けてもらい、"吟遊回廊"を逃げ場のない館内に誘導するのだ。

 その後、室内で確保する。

 警備ゴーレムはすぐに美術館の周囲に展開し、脱走されたり援軍が呼ばれても問題ないように対策を取ってもらう。

 ジャクリーヌさんは険しい声で指示を出す。


「では、お前たち配置につけ。敵は事前の目撃情報とほぼ同じ人数だ。配置や配分に変更はなしで行く」

「「はっ」」


 親衛隊の面々は短く答えると、館内の各場所に消えていく。

 全員手練れのためか、瞬く間に廊下の闇に溶け込み見えなくなってしまった。

 私たち"美術館イチノセ"のメンバーも、事前に相談した位置につく。

 一階の隅っこで、ジャクリーヌさんの迷彩魔法で姿を消してもらった。


 緊張して待つこと、数分。

 入口の玄関から微かに奇妙な音が聞こえてきた。

 カリ……カリ……という、何か小さな針金を差し込んでいるようなイメージ。

 これはもうアレだ、ピッキングだ!

 普段ならピッキングでさえ弾き返してしまうのだけど、今回に限ってはドアノブ部分の加護を解除しておいた。

 ピッキングが完了し、カチャッという夜の美術館に似付かわしくない音が響いた。

 そっと扉が開かれ、骨太の男が注意深く入ってくる。

 男はしばし周囲の様子を確認していたが、やがて後方に『入れ』というジェスチャーを送った。

 続けて、音もなく何人もの男たちが入ってくる。

 全員、剣やダガーなどで武装しており、ただの盗賊団ではないことが容易にわかった。

 ふと月明かりに照らされ、背の高い男の顔が明らかになる。

 赤髪赤目の男――ダニエル。

 彼こそがこの"吟遊回廊"のボスと聞く。

 すかさず、何体もの警備ゴーレムがやってくるけど、"吟遊回廊"は難なく倒す。

 もちろんのこと、これも演技だ。

 ダニエルは館内の地図を確認した後、ジェスチャーで指示を出す。

 仲間の男たちは余計なことは話さず、足音も立てずに館内を歩き回り始めた。

 とても手慣れた様子だ。

 私たちはそっとダニエルと数人の部下の後を追いかける。

 リーダーが目的の絵を手に入れようとするはずだ。

 思った通り、彼らは『悪魔の黙示録』の展示室に入った。

 静まり返った室内に、ダニエルの感嘆とした声が小さく響く。


「ああ……とうとう見つけた。"教皇様"、あなたの求める絵が見つかりました……」


 彼も部下たちも、絵の前に跪いて祈りを捧げる。

 盗賊団とは思えぬ敬虐な雰囲気が、普通の盗賊団とは違うことを示しているかのようだった。

 ここが教会や修道院で彼らが武器を持っていなかったら、きっと神父や牧師さんに見えていただろう。

 だけど、彼らは美術品を盗む悪い人たちなのだとこの後すぐわかることになる。

 ダニエルの命で『悪魔の黙示録』の額を持つと、ガコガコと外し始めた。

 一時的に加護の力を解除しているので、彼らにも持てるのだ。

 壁から絵が完全に外されたとき。

 ジャクリーヌさんが一歩先に踏み出し、私は室内の明かりを灯す。

 驚いた顔で振り向いたダニエルたちを、シャンデリアの明るい光が煌々と照らしていた。


「そこまでだ。お前達は"吟遊回廊"だな? 建造物侵入及び器物損壊の現行犯で逮捕する」

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