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第29話:美術館長、銀髪イケメン女魔導師と再会する

 ジャクリーヌさんからの手紙を受け取ってから、数日後。

 閉館後に、おそらく部下と思われる多数の魔導師を引き連れ、彼女が尋ねてきた。

 例の絵――『悪魔の黙示録』を所持していると伝えたら、ぜひ実物を見たいとお返事が来たのだ。

 私たち"美術館イチノセ"の一同は出迎える。

 フォキシーやノーラ、ソフィーちゃんは落ち着いているけど、セシルちゃんは私の背中に隠れて様子を窺っていた。


「久し振りだな、ミオ。元気そうで何よりだ」

「お久し振りです。ジャクリーヌさんもお変わりないようでよかったです」

「忙しいところすまないな。まずは部下たちを紹介する。この者たちは私の親衛隊だ」


 宮廷魔導師には親衛隊がつく、という話を聞いて驚いた。

 隊長はパトリックさんという律儀な印象の男性で、他の魔導師たちもみな凄腕と聞く。

 親衛隊の紹介が終わったところで、ジャクリーヌさんは隣に立つ紫色の髪をした女性を紹介してくれた。


「この女性はグランハルト芸術大学の教授、ウェンディだ。彼女にも『悪魔の黙示録』を見せてやってほしい。芸術関連の知識や経験が豊富だから、"吟遊回廊"の対策にも良いアイデアを出してくれるだろう」

「初めまして、ミオ君。ウェンディだ」

「よろしくお願いします」


 猫のような印象を抱く若い女性で、この年齢で教授なんてすごい人だとも感じる。

 ところが、握手を交わした途端に、ウェンディさんは「ハァハァ……」と鼻息が荒くなった。


「それにしても、この美術館は素晴らしい造型だね。装飾も高度でレベルが高い。……おや、あそこに見えるのは《ディルーカ》じゃないか! しかも、所在不明の『窓辺の福音』とは! ぜひとも、隅々まで拝見させてほしい。入場料はいくらだい?」

「後にしてくれ。まずは『悪魔の黙示録』の確認だろう」


 興奮するウェンディさんを、ジャクリーヌさんがため息交じりに諭す。

 芸術大学の教授らしく、大変な美術好きのようだった。

 フォキシーたちも自己紹介が終わり(フォキシーはみんなにナデナデされ嬉しそうだった)、一行を地下倉庫に案内する。

 ノーラとセシルちゃんは見ないように両手で目を覆っていた。

 先日と同じように、フォキシーと一緒に保護布をめくる。


「みなさん、こちらが《アドリエーヌ》の描いた『悪魔の黙示録』です」


 漆黒の悪魔の絵が露わになった瞬間、周囲の静けさが増した。

 ここにいる全員が息を呑んだ表情で絵を見る。

 しばし、沈黙が横たわった後、ジャクリーヌさんが保護布を戻すよう言った。


「……ありがとう、ミオ。よくわかった。なるほど、これはたしかに威圧感がすごいな。"三枚集めたら悪魔の力が宿る"、という伝説はあながち馬鹿にできん。どうだろうか、ミオ。今後、この絵をどうするか話し合いたいのだが……」

「そうですね。でしたら、館長室でお話しましょう」


 私はジャクリーヌさんとみんなを館長室に連れて行く。


 □□□

 

 館長室に案内したら、まずは日本のお菓子でおもてなしした。

 フォキシーが大好きなかりんとうの他、おせんべいやポテトチップスに麩菓子などなど。

 ジャクリーヌさん一行は大変気に入ってくれたみたいで、おいしそうに緑茶を啜る。


「このポテトチップスとやらは素晴らしく美味だな。軽快な食感と塩味がクセになりそうだ

。帰ったら宮殿の料理人に同じものを作らせたいほどだ」


 とは、ジャクリーヌさん。


「当方は麩菓子が気に入ったよ。表面は硬いのに中がふわふわというのは実に面白い」


 とは、ウェンディさん。


「僕は特にかりんとうがおいしかったですね。カリカリした噛み応えと深い甘さがクセになりそうです」


 とは、パトリックさん。

 フォキシーは強張った表情で食リポを聞いていたけど、パトリックさんにかりんとうが好きと言われて顔が輝いた。

 みんなお菓子を楽しんでくれたみたいで嬉しい。

 ひと休みできたところで、ジャクリーヌさんは緑茶のコップをかたりと置いた。


「さて、そろそろ本題に入ろう。『悪魔の黙示録』だが、"吟遊回廊"に狙われている状況を考えると、二つの対策が考えられる。帝国の宮殿が一時的にでも預かって管理するか、引き続きこの美術館で厳重に管理するか……だ。宮殿の警備ならば安全である一方で、あの絵はこの美術館が所蔵する大切な財産だ。もちろんのこと、私や国の人間が勝手に回収することはできない。だから、最終的にはミオにどうするか決めてほしい」


 ジャクリーヌさんの話を聞いてよく考える。


「『悪魔の黙示録』を宮殿に納めた場合、"吟遊回廊"は活動を止めるでしょうか?」

「……いや、その可能性は低いな。ヤツらは件の絵を探してはいるが、貴重な美術品全般をターゲットにしているようだ。売却による金儲けも兼ねているため、各地の美術館や富裕層の襲撃は止めないだろう」

「やっぱりそうですよね……」


 仮に目的の絵が安全な場所に収蔵されても略奪行為は止めない……という予想は私と同じだ。

 きっと、最低限お金が手に入ればそれでいいのだろう。

 "吟遊回廊"が目的とする『悪魔の黙示録』

 宮殿に納めるか、この美術館で引き続き厳重に保管するか……。

 前者は安全に守ってくれるはずだ。

 じゃあ、後者はどうだろう。

 情報を外に出さなければ安全に思えるけど、"吟遊回廊"の動向を考えるといつこの美術館が襲撃されてもおかしくない。

 だったら……。


「あの、私に考えがあります。『冥府の黙示録』を目玉とする特別展を開き、大々的に所持していることをアピールするんです。期間中は他の所蔵品と繋がりがなかったら怪しまれてしまうので、テイストが似た作品も一緒に展示します」

「それはつまり……絵を囮にして"吟遊回廊"を誘き寄せるということか?」


 ジャクリーヌさんの言葉に頷いて答える。


「芸術を楽しもうとする人の気持ちを踏みにじる人は……とうてい許せません。いっそのこと、盗賊団はここで壊滅させるべきです。『悪魔の黙示録』が守れても他の芸術品が奪われては意味がないと考えます」

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