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第19話:美術館長、カフェのメニューを考える

 翌日の閉館後。

 私、ノーラ、フォキシーは"チル・アート"を訪れた。

 セシルちゃんはずっとカフェの開店準備を進めてくれており、メニュー他基本的な準備は全て終わっていた。

 物静かだけど、すごく優秀で仕事の早い女の子だ。


「いくつかメニューを考えたのですが……もしよかったら、試食してもらえませんか? ちょうど夕食時ですし……」

「『する(コン)!』」


 セシルちゃんはテキパキと調理する。

 トマトとレタス、お肉が挟まったサンドイッチに、香ばしい香りが湧き立つペペロンチーノ、ハンバーグとライスのワンプレートなどなど……。

 おしゃれなカフェメニューがたくさん並んだ。

 食欲をそそる見た目と匂いに、たちまちお腹が空いてきた。

 みんなそれぞれの料理を取って一緒に食べる。


「『では……いただきま~す』」


 私が選んだのはサンドイッチ。

 一口噛むと、そこはもう食材のピクニック。

 パンはこんがり焼けていて、シーザー風味のドレッシングが野菜とお肉両方の味を引き立てる

 野菜の配分も絶妙で、パンのこんがり感をきちんと維持していておいしい。

 という食リポを言うと、ノーラとフォキシーも笑顔で感想を話した。


「パスタはアルデンテがいい食感~。ちょうどいい塩味と唐辛子の風味がたまらない~。こんがり焼けたベーコンも印象深い~」


 とは、ノーラ談。


『ハンバーグはお肉がぎっしり詰まっていて噛み応えが素晴らしいコン~。迸る肉汁も旨みたっぷりでフォークが止まらないコン~』


 とは、フォキシー談。

 どのお料理もすごくおいしくて、セシルちゃんの腕前は素晴らしいのだと改めて実感できた。

 食事が終わったところで、彼女がおずおずと私たちに頼む。


「喜んでいただけて嬉しいです。メニューについてご相談したいことがありまして……。なにか、この美術館の名物的なメニューが欲しいんですが、なかなか思い浮かばなく……」


 セシルちゃんは悩む。

 名物か……。

 私としても、せっかく美術館をやっているのだから何かしらの特別メニューが欲しいところ。

 ……そうだ。


「ちょっと試したいことがあるから、エスプレッソを淹れるね」


 コーヒーではなくエスプレッソをとくとくと淹れ、加護で冷やしたミルクピッチャーを用意。

 そっとミルクを注ぎ、細いスティックで形を整える。

 作業しているうちに形が変わり……。


「じゃーん、フォキシーの絵でーす!」


 ラテアートでフォキシーを描いた。

 我ながらそこそこの出来だ。

 前世で忙しい仕事の合間に、少しでもカフェ気分を味わおうと練習した成果が出たらしい。


「これはラテアートと言って、ミルクをうまく使って絵を描くのよ。普通のコーヒーだとミルクが沈んじゃうからできないけど、エスプレッソのクレマが土台になって支えてくれるからこういう絵が描けるのね」

「す……すごい……すごい発明ですよ、これはっ! エスプレッソの上に絵を描くなんて誰も考えたことがありません! ミオさんは天才なんですかっ!?」


 セシルちゃんは大興奮し、ノーラとフォキシーも大喜びする。


『ボクがコーヒーに入っちゃったコン!』

「ミオちゃんはこんな絵も描けるの!?」


 やっぱり、この世界にラテアートという文化はなかったようだ。

 三人ともすごく驚き喜んでくれたので、描いた私自身も嬉しかった。

 ということで、"美術館イチノセ"の名物はラテアートに決まった。

 絵の種類はおいおい増やしていく予定。

 翌日からさっそくカフェをオープンすることが決まり、私たちは眠りに就いた。

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