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第18話:美術館長、カフェ店員と仲間になる

 私の提案を聞くと、セシルさんの目が見開いた。


「つ、つまり、この素敵な美術館でカフェをやるってことですか?」

「ええ、そういうことになります。私はずっと、カフェが併設できたらいいなと思っていたんです」

『それは良いアイデアコン! おしゃれな度がさらにレベルアップコンね! フルーツタルトをメニューに入れてほしいコン!』

「最近は来館者も増えてきたし、絶対に需要があるよ! ついでにチーズケーキも入れて!」


 フォキシーとノーラも賛同する。

 前世の美術館では、カフェやレストランを併設しているところが多かった。

 展示室は意外と広いし、いくら展示品が素晴らしくてもずっと歩き回っていると疲れる。

 私みたいな【無敵の身体】がある人はいないだろうし。

 今まではカフェを運営する人がいなくて見送っていたけど、セシルさんならピッタリだ。

 彼女はというと、顔の前で手を振って慌てた様子で断った。


「で、でも……私には無理です……。料理を作ることはできても……お客さんと話すことが苦手なので……。美術館の評判を落としてしまいます……」

「大丈夫、心配しないでください。美術館は静かな空間が求められるので、むしろ落ち着いたセシルさんはこれ以上ないくらい適任だと思います。あのカフェで食べたお料理はどれも本当においしかったです」

「あ、ありがとうございます……。でも、やっぱり私には……。昨日みたいなトラブルを起こしてしまったら……」


 やはりというか、セシルさんはクレーマーのおじさんに詰め寄られた経験がトラウマになっているらしい。

 たしかに強烈だったし、店員もオーナーも助けてくれないなんてすごく辛かったろう。

 でも……。


「そんなことが起きたら、私が助けますから大丈夫です」

『ボクだってああいうお客さんは追い払うコン』

「わたしもいます。みんなで対処しましょう」


 ここには彼女を助ける人がいる。

 フォキシーとノーラも一緒になって励ますが、セシルさんはふんぎりがつかないようだ。


「もしよかったら、自分のお店を持ちたいというセシルさんの夢を……私に叶えさせてもらえませんか? もし行く当てがないのなら、うちの美術館で存分に腕を振るってほしいんです。僭越ながら、この美術館をあなたの居場所にさせてください」

「私の……居場所……」


 セシルさんはぽつりと呟くと、静かに俯いた。

 そのままジッと黙り込んだ後、一段と真剣な表情に変わる。


「本当に素晴らしい提案を……ありがとうございます。ぜひ、ここでカフェをやらせてください。絶対に良いお店にしてみます」

「ありがとう、セシルさん!」


 やった!

 嬉しくて気持ちが高揚する。


「改めまして、私はセシルと言います……」

「私は館長のミオです」

『ボクはフォキシー、って名前コン。仲良くしてコンね』

「職員のノーラです。よろしくおねがいします」


 どうぞよろしく、と互いに握手を交わす。

 セシルさんは背が高いからか、手も私よりずっと大きかった。

 これだけ手が大きかったら、料理や菓子作りも得意になれそうだ。


「言い忘れていましたが……年は14歳です」

「『14歳!?』」


 意外な年齢にみんなで驚く。 

 本人は気弱というけど落ち着いた性格だし背は高いしで、てっきり年上かと思っていたよ。 まさか年下だったとは。


「なので……どうか敬語で話さないでください……」


 とのことなので、私たちはセシルちゃんと呼ぶことにした。

 場所を相談したら、美術館の中に設置で決まった。

 雨に濡れなくていいし、来館者も利用しやすいだろうからだ。


「じゃあ、さっそくカフェを作りましょうか。内装とかインテリアとか、セシルちゃんの希望を教えてちょうだい」

「ありがとう……ございます。そうですね……色調は白をメインに明るい感じで……動物の雑貨がたくさんあると……嬉しいです……。あっ、天井には小さなシャンデリアも欲しくて……」


 彼女の希望を元に、カフェのイメージボードを描く。

 雑貨も猫や犬、たくさんの動物を元にした雑貨類も描いておいた。


「……ちょっと描いてみたのだけどどうかしら?」

「『すごくうまい(コン)!』」


 私の描いたイメージボードを見て、フォキシーとノーラは歓声を上げる。

 絵がうまいと言われるのは生まれ変わっても嬉しいものだね。

 セシルちゃんもまた、キラキラと瞳を輝かせる。


「すごくお上手ですね……! まさしく……このようなイメージです! ……でも、こんなに豪華な内装だと建築費が……」

「そんなこと心配しないで。セシルちゃんのカフェなんだから。今作るわね……それっ!」


【美術館の加護】を使い、1階にカフェスペースを拡張する。

 頭の中でイメージしたらすぐにできた。

 ノーラとフォキシ-は慣れているからか普段通りだけど、突然現れたカフェを見てセシルちゃんは驚愕する。


「え……さ、さっきまで何もなかったですよね。いったい何が……」

「ふふっ、私は美術館に関連した特別な力が使えるのよ。さっそく中に入りましょう。変更したいところがあったら言ってね。すぐ直せるから」


 みんなでカフェに入る。

 イメージボードそのままの内装が広がり、シャンデリアの優しい光が白い壁に反射され、穏やかな明るい空間だった。

 席は30席くらい。

 厨房も完備。

 コンロなどはデザインはファンタジーっぽさでありながら、機能は現代日本の物を踏襲した。

 最新式の魔導具ということでセシルちゃんに説明する。


「ここの出っ張りを捻ると火が出るからね。燃料は無限だから」

「無限の燃料なんてすごい……。しかも、前の店の物より……格段に火の質がいいです……。途中で弱まったりして、使いにくかったんです……。ミオさんが設計……したんですか?」

「まぁ、そんなところかしら。こっちにあるのは食料庫よ。信じられないかもしれないけど、食材は使うたび無限に補給されるの。気にせず、好きなだけ使ってね」

「そんな夢のような食料庫が……あった……!」


 壁の扉を開けると、セシルちゃんは両手を組んで喜んだ。

 カフェを作るとき、無限の食料庫の半分を厨房に移動した。

 これもまた念じるだけでできてしまったのだ。

 前世の日本由来の食材については、おいしい調理法や使い方を教える。

 セシルちゃんは料理好きのためかとても熱心で、聞いた傍から理解してしまった。

 彼女がどんな風に調理するのか、今からとっても楽しみだ。

 ホールに戻って動物系の雑貨類を眺めていたら、不意にフォキシーがオブジェの1つを指して叫んだ。


『ボクもいるコン!』


 中にはフォキシーを模した人形も作ってみた。

 今や、彼はこの美術館の顔だしとても可愛いから。

 一通り設備の確認が終わったところで、セシルちゃんが私の服の裾をくいくいと引っ張った。


「あの……ミオさん。このカフェの名前を考えてくれませんか?」

「セシルちゃんが決めなくていいの? だって、ここはあなたのお店なのに」

「むしろ……ミオさんに決めてほしいです……。ミオさんのおかげで、私は新しい居場所ができたのですから……」


 セシルちゃんは照れ笑いの表情で話す。

 彼女の居場所ができたのは私のおかげ……か。

 ありがとう、嬉しいことを言ってくれるね。

 名付け親は重大な責任だ。

 しばし考える私の頭に、よい名前が思い浮かんだ。


「休憩と芸術という意味で……"チル・アート"なんて名前はどう?」

「『……いい(コン)!』」


 こうして"美術館イチノセ"にはおしゃれで上品なカフェ"チル・アート"が併設され、セシルちゃんが新しい仲間になった。

 ちなみに、セシルちゃんの寝泊まりする部屋は、3階のノーラの隣に増設することに決まった。

 楽しい毎日が、さらに楽しくなるばかりだ!

お忙しい中読んでいただきありがとうございます!


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