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転生者が集まれば…無敵公爵家が出来上がるまで  作者: ハシドイ リラ


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7.絵本の中身

家族に寝る前の挨拶を済ませて自室に戻る。


…もちろんあの"絵本"を片手に。

侍女に手伝ってもらいながらさっさと寝支度を済ませて寝入った。

のはもちろんフリである。内心あの続きを読み進めたくてたまらなかった。


けど、あの絵本の表紙には"誰にも知られないようにしてから読め"と書いてあった。

家族を信用していないわけじゃない。なんなら最初から助けを求めたいくらいだ。


「けど、最初から頼るのはなんだか違う気がする。」


「それに。"誰にも知られないように"というのが"信用に足るか"とかそういうことだけじゃないかもしれないし。…大事な人を巻き込まないための忠告だったら。」


今は寝室にひとりぼっち。聞かれる心配はないから小さくだけど声に出して呟いてみる。


「何を警戒してああいう風に書いているのかはまだ分からないわ。けど。知られてしまってから無かったことにはできないのだから。」


まずは私が独りで。



※※※※※※


「もうそろそろ大丈夫そうね。」


邸中の灯りが消えたことを確認してから起き上がる。


カーテンを閉めておけば灯りが漏れることはそうそうないだろうけど、念のため窓に近い机は使わないことにした。

ランプをベッドの下まで持ってきてベッドの影に隠れるようにして読み始める。


"この文字が読めた君へ。周囲には読めることを知られてはいけないよ。無邪気に読んでみたい!とお願いするんだ。そして1人になったことを確認してから読みなさい。"


子供向けの書き出しね。絵本の体を取っていたって別にそこまでこだわることはないだろうに。

そう思ってから気づく。


「違うわ。私かお兄さま、どちらかのために作られたんだわ。」


おそらくグアイフェニシン伯爵も半信半疑なんだ。お父さまの反応、蝗害への素早い対処、どれもこれもこの世界の記憶しかない人だけではあり得ないと判断したのだろう。

でも、それをそのままお父さまに伝えたら?

()()()()()()()()()()()


全く関係のない人に"有益な情報を持つ者"である事を知られてしまうのはとてつもないリスクだ。

場合によっては命の危険が、いや下手をすると家族までが巻き込まれるかもしれない。

だから無闇な接触は避けるべき、というスタンスなのか。

半信半疑のうちは決定的な事は気取られぬ様に注意しているという事だろう。


そう考えると、先ほどまでの読みたくてウズウズしていた気持ちが萎えてきてしまった。

これから起きてしまうかもしれない事を想像して身が竦む。


今にも開こうとしていた本を抱きしめて、どうするか考える。


このまま読めなかった事にしてしまうのか。読んだ上で読めなかったという体でいくのか。それとも伯爵と連絡を取るのか。


…えい!読んでしまえ!


勢いよく絵本を開いた。



※※※※※※



この絵本を手に取ってくれた君へ。

読み進めているということは恐らく君にも前世の記憶があるのだろう。

もしかしたらまだ朧げな記憶が浮かんでくるだけなのだろうか。

どちらにしろこの文字"日本語"が読めているということは、自覚のあるなしはともかく前世は日本人だったのだと思う。


私は昭和の終わり頃に生まれた男性だった。時代は平成に移り変わり、会社員として精一杯働いていた記憶がある。恐らく70代ごろに死んだみたいだが、その頃になるとどうやら記憶が曖昧になっていた様でどう過ごしていたか、最期はどう迎えたのかなどの記憶はないんだ。


前世のことをはっきりと思い出したのは学園に入学する直前だった。

それまで頭の中の一部に靄がかかったような気持ち悪さがあったのだが、何がきっかけだったのか14歳の終わり頃急に全ての靄が消えてなくなり前世のことを思い出したのだ。

だからと言って物凄く賢くなったわけではなかったよ。ただ、前世の進んだ文明を覚えていたお陰で領政や危機対応など随分助かった。

とはいえ、前世の記憶があるなら知識として知っていても理論を知らない事が沢山あるのは分かるよね?

だから、この先君が前世の記憶で危機を察知したとしても"結局何もできなかった"という事は出てくると思う。

私たちはそういった無念を少しでも無くすために前世の記憶がある人同士のネットワークを作りたいと考えている。

だが、君も危惧している通り"記憶があること"が周囲にばれると利用される危険性がある。

何かあった時に多少頼りにされるくらいなら良い。万が一"記憶を独り占めしたい"などと考える輩に知られてしまった場合は家族が危険に晒される事だって考えられる。

だから、記憶に関しては極力誰にも漏らさない方がいいと思う。


それはこの私にも。


特に君たちと私には今のところ接点はない。無理に接点を持とうとすればどこからか話が漏れるだろう。だから今のところは。


※※※※※※


「仲間がいる事だけ覚えておけばいい、か。」



この絵本には決定的な事は書いてなかった。

そして連絡を取る必要もない、と。随分な念の入れようね。

でも絵本の最後を見て納得した。


ぶん   てるにあ ぐあいふぇにしん

え    くりすてぃーね かるぼしす

はつあん えぴなっち かるぼしす


なんなんだ、このビッグネーム。

確かにしがない子爵家が関わると憶測を呼ぶメンツだ。そして名前さえも知られないようにひらがなで書くという念入りさ。

しかも絵本ではあるけども、絵から文章が推察できる事はまずない。それくらい全く関係のない挿絵だった。…うん、これは多分金太郎だな。ここからあの内容を推察できる人はまずいないだろう。

何かの拍子に流出しても異国の絵本で押し通せる。



蝗害についてはこれ以上進展はないだろうし、というかお父さまの話だとグアイフェニシン伯爵とその縁戚で話を引き取ってくれたそうだ。それなら我が家が責められることも、これ以上の被害を被ることもない。

伯爵の言う通り、素知らぬふりをしておくのがよかろうと思った。


だが。


この先過度な交流は求めない。けど何かの折助けを乞いたいと思うこともあるだろう。その際にあちらと連絡を取る手段は確保した方が良さそうだ。


1週間ほど熱心に謎解きをしているふりをして篭っていた私は決心して


なかま   えりーぜ ばーれんすふぇると

      へいせいうまれ もとかんごがくせい

と書き足した。



※※※※※※


「お父さま。この絵本ですけど…」


お父さまがこちらを向いた。


「グアイフェニシン伯爵は本当に謎解きとして貸してくださったんじゃないでしょうか。」


書き足した絵本をお父さまに渡しつつそう告げる。


「ですので、当たり障りない程度に挿絵から思いつくお話をまとめてみました。これで返していただければおそらくご納得していただけるでしょう。添えるお礼状には謎解きにはまってしまったので、もし良ければまた送ってください。と書いておきました。」


「ふん、そうだな当たり障りなくが一番か…。」


お父さまは納得したように絵本を受け取り


「来月にはまた蝗害についての会合があるからな。その時にでも渡しておこう。」


そう言ってくださった。



家族を騙すようで申し訳ないが、やはり"何も知らない"が今は一番いいと思ったのだ。

伯爵とも侯爵ともいざという時連絡できる術は残しておいたし、もっと解いてみたいと強請っておけば謎解きを口実に連絡も取れるだろう。


今はまだそれで良い。



絵本を読んでからハッキリしてきた前世の記憶もそう告げていた。





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