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転生者が集まれば…無敵公爵家が出来上がるまで  作者: ハシドイ リラ


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3.仲間は多いほど良い!のか?

「もし、前世があったとしてよ。」

「有効活用できている人がどのくらいいると思う?」


「有効活用か…考えてみたこともなかったです。けど、クリスティーネ様は公衆衛生に力を入れて下さってましたよね?」


「まあね。でも私の前世なんて、OLやって寿退社して。子供を産んで育てただけの普通の母親だったのよ。だから公衆衛生って言ったって、私の知識じゃうがい手洗い、医療従事者の手指消毒とか器具の滅菌くらいが堰の山だわ。この世界でもっと踏み込んだ改革ができるような知識はなかったの。」


「それでも!侯爵だったからこそ強権的に従わせられたんですよ。じゃないと公衆衛生を根付かせるなんて無理なことだったんです。」


「侯爵という強い立場を持った人が前世の知識を活かすことができた、これは奇跡的なことなんです。」


ああそうだ。クリスティーネ様が前世を持って生まれたのは奇跡なんだ。あの強いお立場と聡明さが無ければあれだけのことを成し得なかったのだから。


「でもそれを言うなら貴方に前世の知識があった事も奇跡的よ。あんな人心掌握術、どうやって覚えたのよ。あれが無ければ年若い女侯爵なんて相手にもされなかったわ。」


そうだ。クリスティーネ様のやっている事は受け入れ難い側面もあった。

なんせ、医師は今まで怪我人の治癒率が低かったのはアンタの手が汚れてたからだよ!と糾弾されるのも同様だったから。カルボシス侯爵領内では実施できたものの、他領では効果があるらしいと分かってもなお積極的に取り入れて貰えなかった。


そんな中私が探し出して来た医師が滅菌の概念を広めてくれたのだ。


「クリスティーネ様。多分あの医師も前世の記憶があります。ただ、私たちよりは随分と前に生まれたようですが。」


「やっぱり。だってあんなにうがい手洗いに抵抗が無いんだもの。おかしいと思ってたのよ。」


「彼も昔から衛生面は気になっていたようです。ただ彼自身そんなに知識がなかったようでして。うがいや手洗い、器具の滅菌といった話をした時"ただいまのあとはガラガラジンジンって言いますものねぇ"って言ったんですよ。そのあとあ!って顔をしていましたが素知らぬふりをしておきました。」


「それは確定ね。でもそれなら彼自身が広めれば良かったのに、そんなに人に知られるのが怖かったのかしら。」


「そうでもなさそうですよ。他にも幾つか気になる発言があったのですが、推察するに前世は終戦直後の生まれなのかな?と。その当時なら公衆衛生なんて気にする人はいなかったんでしょうね」


知らない知識が身につくはずがないのだ。ただ、手を洗えうがいをしろは日常的に言われる事だったので今世でも抵抗がなかっただけだ。

"それ"が死亡率の低下に繋がるなんて事までは思ってもいなかっただろう。


だが、正確に理解していなかったとしても彼の立場は強かった。

祖父は侯爵、その次男である彼の父は伯爵となった。そう、彼は伯爵令息である。しかも祖父である侯爵は中々に強引な性格で恐れられている。

その代わり、自分の"身内"と見做した時の心強さと言ったら!


彼は伯爵領で医師をしていた。気楽な次男坊ですからね、と常々言っていたが彼の幼い頃領内で大きな事件があり、巻き込まれて大怪我をする人が沢山出たことがあった。

その時まともな治療もされず亡くなって逝く人を目の当たりにし、医師になる決意をしたんだとか。

これはうまく懐に潜り込めた祖父の侯爵から聞いた話だ。


「アイツはお気楽次男なんて言ってるが一本筋の通った良い男なんだよ。」


だから、と真っ直ぐこちらを見据え


「人を助ける為にできる事があるなら私の名前を使うと良い。アイツはお気楽次男でも私は恐れられているからな。上手く使えば君の言うところの公衆衛生も国内で支持されるだろう。」


こうして、実施してくれる医師、全国に広めるための権力も手に入れる事ができたのだ。


「それにクリスティーネ嬢、いや嬢は失礼だな。クリスティーネ侯爵が進めているんだろう?なら間違いという事もあるまい。」


二大侯爵家が関わってるとなったら無視できる家門は少ないだろう!ガハハ!と豪快に笑っていた。


ただ、どれだけ立派な目標があっても所詮元主婦と元サラリーマンである。頼みの医師も"今世では"というだけで、前世は終戦直後に生まれたとなれば、よほどの上流階級でもない限り衛生面など学ぶ機会はなかったに違いない。


そう。前世があると言ったって、スーパーマンにはなれないのだ。だから多少生存率が上がったとしても


「知識さえあれば、もっと助けられたのに。」


という悔しさが常に付き纏って来た。


※※※※※※※※


「私ね、この間調べたのよ。世界中で奇跡と呼ばれるような何かがないか。」


「そしたら結構あるのよ。"唐突にひとつだけ発展している"地域ってのが。」


「例えば隣国だと、山の方の領地なんだけどね。それまではどうにかこうにか狭い土地で穀物を栽培し、獣を狩って細々と暮らしていたの。それが10年ほど前から急に山林できのこの栽培を始めたのよ。香りの良いきのこが沢山できるようになったから現金収入も増えてね。それを元手に狩った獣を解体できる施設を作って買取する仕組みも作ったの。そしたら猟師にもお金が回るようになったのよ。しかも今まで自力でやらなきゃいけなかったのに、多少料金がかかっても面倒な解体をやってくれる、その後は自分で引き取るか買取してもらうかも選べるんですもの。」


「自分たちだけで消費するしかなかったものがお金に変わるのよ。そして買い取られた素材で領政も潤ったわ。今は地道に農地を広げて食糧自給率を上げられないか頑張ってるみたい。領政としては理想的なやり方よね。」


「農業経験のある人が転生して来たんでしょうかね。確かにきのこの計画的な栽培となると、今世の知識だけではおぼつかないでしょうから。」


クリスティーネ様の調べたところでは各地で"一部だけ突出して"いる地域があるんだそうだ。確かに調べてみる価値はありそうだ。


ただね、きのこ村に関してはハズレだったのよ。

そう嘆息したクリスティーネ様。


「私は行けなかったから、遣いの人間にきのこの歌を教えてあげたの。親近感が出る昔からの歌よって適当に誤魔化して。"きのこのこのこ げんきのこ"ってね。もしかしたら先方もご存知かもしれないわ。その時は私はフルコーラスで歌えるって自慢してたと伝えて。って。」


なるほどね、それなら一瞬だけでも表情に出るかもな。


「でも無反応だったんですって。だから全くの偶然か、それとも。」


「日本人じゃないのかも。」


うう、確かにそれは見分けが付かないな…。

こうなってくると声をかける事がいい事なのかどうなのかも分からなくなってくるな。


「クリスティーネ様。仲間は多い方が良いと私は考えています。」


「ええ、私もそう思うわ。」


でもね

でも


「慎重に事を進めないとトラブルを招く、ってところかい?」


エピナッチ様がずいっと割り込んできた。

相変わらず話が早い。エピナッチ様が仲間だと思うととても心強い。…なんせ、いざという時は王族へのパイプがあるわけだから。


これから先の事は慎重に進めることになり、後日改めて話し合うことになった。






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