22.実力主義は容赦なく
本日3話めーと言いながらも日付が変わってしまいました。
20→21→22の順でお読みいただけると幸いです。
キュニエ侯爵令嬢は、自身が言った通りになってしまった。
「えっ、私だったらですか?私だったら…恥ずかしくて入学できたとしても辞退すると思います。」
お父上の尽力でどうにか入学したというのに、身分を傘に着て好き放題やったツケは入学から僅か2ヶ月で回ってきた。
学園長はおおらかに
「まあ、あまり褒められたことではありませんが、これから挽回すればいいじゃないですか。」
などと言っていたが、今回は偉そうにしていたと言うようなレベルではなく。
「学園長、貴方ねぇ!自身と生徒の不貞を言いふらされていたんですよ!少しは怒りなさいよ!」
カルボシス侯爵、すぐかっかと来るのは良くないよ、と嗜められる。貴方が鷹揚すぎるのよ!
「ああ、エリーゼちゃんとのねぇ。でも、それって誰か信じていた人いるの?」
「へ?まあ確かにびっくりするくらい誰も信じてなかったけど。」
「でしょ?エリーゼちゃんが優秀な事は授業を一緒に受けていれば疑いようがないし、んー…今思えばアレも当て擦りだったのかも?と思う事はあったけど。」
「えっ!なんの話よ?」
「いや、何人かの生徒にエリーゼちゃんとすごく仲がいいんですねって言われてたんだよ。」
何それ初耳!
「だから、あの子がハイハイしているような頃から知ってるから娘みたいなもんだよーって答えて。」
「確かにその時ん?とは思ったんだよなぁ。だってみんな"なんだあ、そうだったんですね!"って言うから。」
噂がイマイチ広がらなかったのは、この天然の否定があったからなのか。
とはいえ、一部の生徒が確認に走るほど噂を広めていたと言うわけだ。やはり許されるものではないだろう。
「まあ、僕もそんなに性格が良いわけではないからね。残るって言われたとしても茨の道だったとは思うよ。」
※※※※※※
「なになに、えーっと?」
「あらどうしたの貴方。」
「ああ、学園から保護者宛に緊急の手紙が来たんだよ。一緒に見るかい?」
"保護者各位"から始まるその手紙は中々の反響を呼んだ。
何せ、新入生の入学から2ヶ月ほどでクラス編成の見直しをするという連絡だったのから。
「なんだか大変な事になってるな。1組は最初から成績優秀者で固められているので変更なし。2〜4組は…なかなか波乱がありそうだな。」
今までのクラス分けでは2組は家督を継ぐ予定の者向けのクラス編成で、領主教育に特化していた。
3組と4組は家督を継ぐ予定はなく、嫁入り、婿入りするか、若しくは官吏試験を受けて王城勤務を志す者の為の教育だった。
それが…
「下位貴族生徒に対し、入学資格に疑義申立てがあった…が、一部生徒による誹謗中傷が目的の根も葉もない噂であった事が判明した。うわあ、子供だと思ってても酷い事するもんだなあ。」
「ああ、あの子が言ってた噂ね。」
「えっ、知ってたの?」
「知ってたというか、学内では有名な話だったみたいよ。」
「へええ、そうだったんだ。」
「で、これからどう変わるって?」
「えっとなぁ……ええっ!」
※※※※※※
「実力テスト?」
「そうなの。この時期に行うのは異例だけど、蔓延している不正入学や学園長の不貞行為疑惑なんかをまとめて払拭してしまおう!と。」
まあ不正入学も不貞疑惑も、成績が良ければそんなことする必要ないって話だもんね。
「クリスティーネはそこまで考えてたの?」
「まさか!ただエリーゼちゃんが理不尽に責められるのは違うなーと思って少しだけ生徒会を煽っちゃったっていうか。」
自宅に戻り、お茶を飲みながら夫に事の顛末を伝えていた。
今回の話で、今度の学園長はアッサリバッサリ一刀両断らしい、と脛に傷持つ人たちは震え上がったんだとか。
「それでね、今まであった寄付金による入学制度もね。」
「え、無くしたの?」
「いいえ、反対よ、反対。正々堂々と認める事にしたの。高位貴族だけじゃなくて平民でも"この金額が用意できるなら許可しますよ"って。」
金額は目玉が飛び出るくらい請求される。それでも王都の学園卒というブランドが欲しければ出すという人もいるだろう。
「ただし、入ってからが過酷なの。成績優秀者、まあ言ってしまえば高位貴族はほぼこのクラスね。その1組以外はランダムに3クラスに振り分けられるの。でね、2ヶ月が経ったあたりでクラス分けテストをするのよ。」
高位貴族との縁を繋ぐためになら惜しくない、と考える平民はいるかもしれない。
けど、自力で学園に入れるくらいの実力がなければ同じクラスになることはほぼない。要するに人脈作りを期待して、高額な寄付を出しても空回りに終わる可能性が高いのだ。2〜4組はほとんどが低位貴族と平民のクラス。莫大な寄付金に対して、見返りは相当少ないと思われる。だから希望者が多くて困るなんてこともないだろう、というのが学園長の予測だ。
「領地運営の授業はしないの?」
「2年生から選択授業で入れるんですって。残りは3年あるんだから、1年の間はじっくり基礎学力を付けさせるって事ね。」
「異存が無ければ今年からカリキュラムを見直したいと保護者に提案して、賛同を得られたから即実施なんですって。」
「1組はね、このテストからすぐ順位が貼り出されるそうよ。2〜4組はクラス分けだけ。来年度から順位貼り出しですって。これには一部反対の声もあったみたいだけど。」
"学園長と不貞を働けば成績を嵩上げしてもらえるなどと言いふらした生徒がいましてね。再発防止のためにも必要な措置なんですよ。"
「ってしれっと強行したらしいわよ。」
「アイツは昔からそうだよね。のほほんとしているようでいて。」
「やることえげつないのよね。」
まあ、だからこそ信頼がおけるともいうんだけど。
余談だが。
キュニエ嬢も父上も、当初は学園に残る道も考えていたそうだ。寄付金による入学も正式なものになったんだから正々堂々としていれば良い、と。
ただしその後のクラス分けテストの話で断念したそうだ。ーー2人にだけ開示したらしい。入学試験の時の彼女の成績をーー
※※※※※※
「あれからは平和だったねぇ。」
「そうねぇ。」
「いろんなことがあったねえ。」
「あったあった!」
「あっという間に卒業しちゃったね。」
そう。今日は卒業式だった。
3人でこんな風に寝っ転がりながら話せるのも今夜が最後。
明日にはみんなそれぞれの未来に向かう。
前世だったら。
「ねー、今度のみにいこうよ!」
なんてスマホで連絡して毎日とは言わなくても1年に1回くらいは集まれただろう。
けど、この世界では。手紙でやりとりし、馬車で移動し。一度離れてしまえば集まることなんて夢のまた夢だ。
また会おうね!と言いながらも、それがなかなか叶わない約束だっていうのもお互い分かっている。
だからお喋りはいつまでも続くのだった。
エリーゼ編はこれで終わりです。
ここからは少し時間が経過したところから話が再開する予定です。(少し先になりそう)
活動報告にも色々と書いてますので、併せて読んでいただけると幸いです。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました!続きは少し書き溜めてから!




