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転生者が集まれば…無敵公爵家が出来上がるまで  作者: ハシドイ リラ


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1.それは静寂の間から始まった。

新連載始めます!またもや同じ世界の話で恐縮ですが、当初の主人公の頃から100年以上経っています。

かのクリスティーネ嬢は既に伝説の人…

我が家には100年ほど続く変わった儀式がある。


学園に入学する年頃になった子供達に課せられる試練である。年齢に多少の幅はあるらしいのだが、詳しいことは父にも分からないらしい。

不明なことが多い儀式であるが、かと言って難しいわけではない。


該当する年頃の息子、娘が1人で"静寂の間"と呼ばれる部屋に丸一日籠るのだ。儀式としてはそれだけだ。

だが、この儀式を境に覚醒する者が稀に現れるのだ。覚醒した者は何故か高度な知識が身に付くらしく、皆何事かを成し遂げるらしい。

とはいえ全員に起こる変化ではない。今まで100人近い者が儀式を受けたが覚醒した者は10人ほどだということだ。


最近では兄、その前に叔母、その前は父が受けている。

内容を話してはいけない、というわけでもないらしいので聞いてみたことがあるのだが、一様に


「書棚に沢山の本が並んでいる」

「母国語だけではなく、多言語に渡るラインナップ」

「中には古語なのか、見たこともない文字の本もある」


ということしか分からなかったらしい。

当然皆"本に何かあるのか?"と手に取り調べてみるが特に何もない。


なんだか不思議な儀式だが、この儀式で覚醒した者のお陰で我が家は繁栄を続けている。

気がつけば侯爵だった我が家は50年ほど前に公爵へと陞爵していた。

そりゃそうだ。覚醒者のお陰で我が国のインフラは他国と比べて驚くほど整っている。

上下水道は完備、平らで凸凹の全くない道路。

そして"公衆衛生の母"と呼ばれた先祖は消毒という概念を持ち込んだ。手洗いうがいという習慣ができただけでも凄いことにだったらしいがーー今となっては基本中の基本であるーーそれ以上に怪我の治癒率がとても上がったのである。

治療者が手指消毒する事を必須とした上、治療に必要な器具の滅菌を始めたのだ。

それまでは大きな怪我をするということ即ち死に直結していた。大きく開いた傷口から不衛生な器具を介して黴菌が入るのだ。そうなると、傷口が閉じることはなく腐り落ちていく。

その時の痛みは想像を絶するそうだ。

"お、お願いだ!もう…殺してくれ…"

歴戦の猛者がそう懇願しながら悶絶して亡くなったと聞く。

とはいえこれは昔の話だ。消毒や滅菌の概念が発達してからは、ここまで苦しむ程の痛みや肉体の腐敗はない。…もちろんこの世界の技術ではまだ積極的な治療までは望めず亡くなる者の方が多いが。


"この世界"


そう、どうやら俺はこの世界に産まれる前の記憶があるようだ。とはいえうっすらとしたもので、何かに役に立つかと言われると正直首を傾げざるを得ない。

だが、小さな頃から手洗いやうがいの大切さを説くまでもなく実践していたり、ちょっとした擦り傷を拵えた時には

「ははうえー。オキシドールはしみるからいやですぅ」

と泣きながら訴えていたらしい。

周囲のものはオキシドールとはなんぞや?と思いながらアルコールで消毒していたらしいが、今思えばそれが前世の記憶のかけらだったのかもしれない。

この程度の事を思い出したとしても、今のところ何の役にも立ちそうもない。だが、もし何かきっかけがあってもっと沢山のことを思い出せたら…


※※※※※※


そんな事を思いながら過ごし、とうとうこの日がやってきた。

そう、今夜"静寂の間"に入ることができるのだ。

前世の記憶があることに気がついてから6年ほど。ついうっかりこの世界での常識を吹っ飛ばしたような事を言ってしまったこともある。

その度に母から

「あらあら、この子は覚醒者の素質があるんじゃないかしら」

と揶揄うように言われていたが、周囲に覚醒者がいなかった事で、親の贔屓目程度の扱いを受けてきた。

幸運なことに覚醒者の詳細を知る者は周囲にはいない。だから素質があると言われたことに気をよくしている無邪気な坊ちゃんで通してきた。

…誰に言われたわけでもないけど、なんとなく記憶のことは他人に知られない方が良い気がしていたのだ。

どちらにしても、明日儀式を受ければハッキリするし、何ならこれからは覚醒者として振る舞えば良いのだ。多少の言動は誤魔化しやすくなる。



「ハヤクローナル、準備はいいかい?」


「はい、父上。もう全て準備できています。」


まあ準備といっても心の問題だ。そんなものは何年も前からとっくにできている。


「中は以前にも言った通り図書館みたいなものだ。横には小部屋も付いていて、そちらには一晩過ごす程度なら問題ない設備もある。不自由することはないが、一晩部屋から出ることは叶わぬからな。気をつけて行ってくるが良い。」


そう言って父に送り出されたのであった。



バタン、ガチャリ。


え、鍵までかけるんだ。厳重だなぁ。まあ危険な罠が待ち構えている訳でもないしな。…どちらかというとワクワクの方が大きいかな。


などと考えながら入った部屋の中には、大きな大きな肖像画が飾ってあった。

この儀式を考え出したと言われるクリスティーネ様だ。およそ100年ほど前のご先祖様だ。



…?


この肖像画、なんだか違和感があるぞ?


違和感の正体を掴みたくて隅から隅までじっくり観察する。


あああっ!これだ!


肖像画の額縁に彫り込まれた模様。じっくりみてみると


上上下下上上下下下上上上


これって!隠しコマンドじゃん! 


興奮冷めやらぬまま、コマンドを打ち込むのはどこか、探し始める。

肖像画の右下に、小さな小さなスイッチがあった!

みつけた勢いそのままにコマンドを打ち込む。


上上下下上上下下下上上上


?もう一度!


上上下下上上下下下上上上


あれ?何にも起きない…?

読み間違いがないかもう一度全部確かめる。

うう、やはり何も起きない。


ガコン!ガガガッと派手に肖像画が動くのを期待していた俺はガッカリしてしまった。


だが、コマンドの模様にスイッチである。どう考えても前世の記憶のある誰かの仕業だ。何かないかとスイッチをさらにじっくりと観察してみた。と、小さい小さい文字を発見した。


"コレジャナイ"


コレジャナイ?コレジャナイ?


…コレジャナイ!


コレじゃないのか!じゃあ何だよコレは!


イラッと来たが、ある意味コレで間違いない。

この大仰な儀式を考えた人は前世持ちだったんだ。

しかも、おそらくだが俺が生きた時代とそう変わらない頃に生きていた人だ。

他にもヒントがあるはずだ、探してみよう。


まだまだ時間はあるんだから、焦らない、焦らない。




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