40真実4(最終話)
まずアリトには少し眠ってもらうことにしてクレイブが催眠魔法をかけた。
これでアリトの心配はしなくていい。安心して探す事が出来るわ。
私達は調味料倉庫の中を探した。
ここには、コショーをはじめとしたあらゆる調味料が揃っていた。
唐辛子やみそ、しょうゆ、みりんにソースに梅干し。わさびに山椒なんて香辛料もあった。
それに焼き肉のたれみたいなものもあってドレッシングとか鰹節もあったのは驚いた。
やっぱり日本人はだし。だしが欲しいよねぇ。
あれ?私は意外な事に気づいた。
ここにある調味料ってほとんど日本人が好む調味料ばかりじゃ?
もしも、異世界人が中国や中東やインド、南米とかだったら、もっと別の調味料があるはず。
まず、中国は豆板醬や甜麵醬。ホアジャオや八角もあった。中東ではデュカなんてのも聞いたことある。南米だったらタコスとオールスパイスしか思いつかない。とにかく辛いやつかな?そう考えると日本ってほんとに凄いんだ。
何しろ発酵食品のオンパレードだもの。
身体によいものばかり。
「ミルフィ。これ読めるか?」
いきなり差し出された古い書物みたいな書類の束。
よく見ると日本語。
異世界人って日本人が多かったって事?まあ、私も日本人だし。
「リントは読めないの?」
「ああ、異世界人が書いたものだろう。俺達にはわからないんだ」
「ああ、そういう事。ちょっと待って‥」
私は吸い寄せられるようにその書物に目を走らせる。
そこには麹を作る苦労や醤油やみそが出来た時の喜びも書いてあった。
鰹節を何度も失敗して作った記録が。
いっしょ、いっしょ!
うどんやラーメンに挑戦した記録もある。
「こ、これは‥」
そこには竜人の体質が詳しく書いてある文面があった。
~竜人は鱗と竜力という力があり肉体的にはかなり強く回復力も優れている。
だが、内臓は一度を壊すとなかなか調子が戻らないらしい。
竜人は食べ物には無頓着で肉と穀類。調味料は塩がほとんど。
まあ、彼らには竜力というものがあって自身で治癒も出来るので病気という病気は治せるらしいが。
見た目は強じんでも中身はかなり危うい橋の上を歩いているようなものだろう。
特に注意が必要なのは番を経た竜人。
それというのも、番といると常に興奮状態になり常に血液の流れが速い。
元々体温が低い冷血動物種になるだろう竜人が番がいると常に体温が上がった状態になるのだ。
それ故に、心臓に負担がかかったり内臓に支障が出る場合が多い。
それは何を意味するかというと早く死ぬと言う事だろう。
寿命が長い竜人が50歳で死ぬとこれはもう驚きというしかない事になる。
私の番はキエトという竜人で私は日本という異世界から来た松本れなと言う。
私はここでこの書物を見つけた。そして調味料の研究をし始めた。すでに多くの異世界人が来ていたらしく調味料はほとんど揃っていた。
番となって子供が生まれると誰かが死ぬと言う呪いを聞いたから。
私はキエトにも子供にも死んでほしくないからだ。
まず最初に考えたのは血液の流れを良くすればという事だった。
これはもう食生活で何とかするしかないと思った。
まず酢がいいのではと思いドレッシングを作ったが失敗。竜人はすっぱいものが苦手みたいだ。
次に考えたのが玉ねぎと青魚。この世界にも玉ねぎもどきがあってそれを青魚を使ってカルパチョ風にしたら喜んで食べてくれた。
竜人の料理は肉がメイン。肉を麴に付けるとか煮込み料理を増やしてロールキャベツとかポトフ、カレーにシチューやピザなんかも野菜を乗せたりして。
餃子とかも野菜をいっぱい入れて一緒に焼きながらパーティーみたいにした。
根菜もすごく良い。あと、ワインもいい。
私達はこうして150年以上元気に長生きをして天寿を全う出来そうだ。子供もみんな元気に育ち誰一人死んだりしなかった。
もし、この先、異世界人がやって来て番と出会ったら、これを参考にしてみて欲しい。
竜人の番はすごく優しい。番だけを愛して大切にしてくれる。だから頑張ってほしい。きっと幸せは努力の先にあると思うから~
これって私と同じじゃない‥ごく最近の人みたいだけど、まあ、異世界に転移っていつの時代かもわからないわけで、しかも同じ日本人がピュタール国に転移したこと自体が奇跡みたいなことで‥
しかも、呪いじゃなくて健康を害したのが原因って。
人間も竜人も同じ何だって感じるなぁ‥それも愛しすぎとか竜人の愛ッてどんだけなのよ!!
脳内で色んな思いが飛び交う。
「リント、助かる方法わかったかも」
「そうか。それで何が必要なんだ?魔法陣か?それとも竜の鱗?」
「ううん、番といるといつもドキドキするでしょう?」
「ああ、いつだってときめいて胸がいっぱいで幸せなんだ」
「それ、心臓に凄く悪いらしいわ。だから私が美味しい料理でリントが病気にならないようにすればいいんだって」
「ああ、ミルフィの料理はうまいからな。それで?」
「野菜をたっぷり食べてバランスのいい食事をすれば長生きできるって事みたい」
「呪いは?」
「呪いなんかじゃなかったの。心臓に負担がかかってそれで早く死んでしまっただけみたい」
「竜人が病気?信じられん!」
「ですよね?病気なんて竜人なら竜力で治せるっすよ」
「番の存在は病気になるほどらしいわ」
「番が?俺、番がいれば幸せになれるって思ってたんですけど違うんですか?」
「幸せだと思うわ。だって私はすごく幸せだって思うもの。ここに来て理由がはっきりしてすごく良かった。これでどうすればいいかわかったんだから、みんなにどうすればいいかを教えればいいじゃない。そうすればずっとずっとみんな幸せになれるんだから」
「ああ、さすが俺の番。やっぱりミルフィは最高の番だな。愛してるミルフィ、もう二度と離さないからな」
「リント私も愛してる。これからも私の料理をいっぱい食べてね」
「決まってる。ミルフィの料理なら死ぬほど食べてもいい」
「もう、リント!死んじゃいやだぁ」
「ママ?」
アリトが目を覚ました。
「アリト目が覚めたのね。アリト良く聞いて、この人がアリトのパパなのよ。今までパパはお仕事で忙しくてやっとアリトに会いに来てくれたんだよ」
「ぱぁぱぁ?」
「ああ、アリト。パパだよ。ずっと離れ離れで寂しかった。これからはずっと一緒だからな。アリト大好きだよ」
リントはアリトを抱き上げた。
「どりゅと?しゅき」
リントの腕がガクッと落ちる。
クレイブが真っ蒼になってアリトに言う。
「アリトちゃん、どりゅとは忘れよっか。リントさんがパパだぞぉ~」
「ぱ、ぱ?ぱぱぱぱぱぱぱ、ぱ?」
「アリト。いいか。パパだ!」
「ぱ、ぱ!」
「おぉぉぉ~アリト偉いぞ。パパはうれしい。アリトといれる事になれてすごくうれしいんだ」
こうしてリントと一緒に食堂に転移した。もちろんクレイブさんはしばらくお休みしていいとリントから言われた。
初めての夜。リント、アリト、私で3人で川の字になって眠った。
それからしばらくリントは食堂を手伝い3人で寝る日々が続き、マベルが帰って来た。
マベルさんに結婚すると報告をして教会で手続きを済ませた。
リントはその間に新居を探していた。
そして新しい家に引っ越した。
その夜、私とリントは初夜を迎えた。
心が繋がって初めての夜。
「ミルフィ、愛してる」
何度もリントに言われ愛された。身体中がうれしいって悲鳴を上げた。だってリントったら何度も何度も‥
その翌朝、リントの角は元に戻っていた。
番と心と身体を通わせると角が元に戻るらしい。それでリントはすっごく元気になった。
アリトにも角の先端がのぞき始めた。
「リント。アリトに角が!!」
驚く私を横目にそれをリントが嬉しそうに撫ぜる。
「角の出始めはむず痒いんだ。だからこうして」
優しくアリトの角を撫ぜてやるとアリトが気持ちよさそうにうとうとし始める。
幸せが家中に降り注いだ気がした。
私の料理でがリントの寿命を延ばせると分かった時どれだけうれしかったか。
わたしたちはこれからも幸せな時間を一緒に過ごして行く。
ちょっぴり刺激的で、すご~く甘くて、そこには深いコクもある。そんな時間を~
~おわり~




