39真実3
「‥ぐぅぅぅ~」
いきなりリントのお腹が鳴る。
「腹が減った」
「リントさんこの、胆、座り過ぎですよ。さすが竜帝の子だけはある!」
「もう、このタイミングで?」
「今は呪いの事は忘れてミルフィの作った料理が食べたい」
リントがお願いって顔で私を見る。
もォォォ~!そんな顔されたらいやって言えなくなるじゃない。
「ママ、ここどゅこょ?」
アリトが起きた。
「アリト起きたか?」
リントが嬉しそうにアリトを見る。
「だゃれぇ?」
「アリト、いいの。気にしなくて」
リントがふてくされる。
「ミルフィ酷いじゃないか!アリトには知る権利があるだろう?」
「アリトの権利は私にあるんです」
「まあまあ、その話は子供の前じゃ‥そうだ。転移しましょうよ。行き先はマベルさんの食堂。これでどうです?」
「ああ、いい考えだ。クレイブ頼む」
「あいよ!さあ、この円陣の中に入ってしっかり手を繋いで‥行きますよ」
いきなり光に包まれて身体がぐらりと揺れる。
食堂の中に転移していた。
「どうです?気分は、アリトちゃんはどうかな?」
「きゃ、このしとだゃれ?」
「そっか、顔わかってるもんな。おじさんは元ドルトだよ」
「どりゅと?」
アリトが顔をかしげる。無理はない。今まで見ていた顔と全く違う叔父さんが目の前にいるんだから。
「じゃ、こうすればわかるか?」
クレイブさんはアリトを抱き上げてドルトが良くやっていた高い高いをした。
「どりゅと。どりゅとしゅきぃ~」
「思い出したかアリトちゃん~」
「クレイブが羨ましい‥」
「仕方ありませんね。リントさん呪いが恐くって今まで名乗り出なかった罰です」
「仕方ないだろう!ミルフィが死んだらどうするんだ?アリトだって!!」
二人が言い争うとアリトが怯えた。
「二人ともやめて、アリトが恐がるわ。いいから、とりあえず座ってて何か作って来る」
「いいのか?」
リントの緋色の瞳に輝きが宿る。
「まあ、その呪いの事は考えるとしても、とにかくまずは腹ごしらえが先でしょ?」
「ああ、そうだな」
私は急いで調理場に行くとまだ本調子ではないであろうリントの為に豚汁を作ろうと思った。
材料を切って煮込めばいい。中には豚肉にレンコンもどきを擦りおろし、しょうがも入れて味付けは味噌で。
米は炊いてあったのでそれでターメリックを利かせたスパイシーカレーチャーハンもどきを作る。
アリトには豚汁でおかゆを作って食べさせよう。
「さあ、出来たわよ」
私はトレイに熱々の豚汁を乗せて運んだ。
それにスパイシーなカレーチャーハンも。
「うわっ、うまそうだ。ずっと忘れられなかったミルフィの料理が‥いつも思い出して真似てみるがうまく出来なくて‥たまにクレイブがサンドイッチとか持って帰ってくれてそれがもううまくて‥はぁぁ~いい香りだ」
リントは饒舌になって楽しそうに話をする。
「さあ、食べて。アリトも美味しいのあるよ」
「ぉいしぃ~いりゅ」
アリトを子供用の椅子に座らせて「いちゃだゃきましゅ」
「「「いただきます」」」
リントがカレーチャーハンを頬張る。
「ぐっ。まじ、やばっ、これ、めちゃうまっ!うっ、うっ、ごくらくぅ!はぁぁぁ幸せだ~」
もはや歓喜の雄たけび。
「なにこれ~?マジやばい!ミルフィさんこれ最高っす!」クレイブさん感動もの。
「大袈裟ですよ」
私はアリトの口に豚汁で作ったおかゆを入れてやる。
「マジ、しゅご!しゃいこぉ!」アリトは大人たちの真似をしたらしい。
めちゃ可愛い。私もカレーチャーハンを一口。
「ん”、ん”、ん”、これマジおいしい~」自分で作っておきながらの感動。
みんなで次々に料理を口に運ぶ。
しばし沈黙。
その後は昨日作ったプリンをみんなで堪能する。
「ぷゅりん。しぃ~」アリトがまたすぐにプリンを頬張る。
「ほんとに、この滑らかさ罪ですよぉ~」クレイブさんまた感激。
「ああ、アリトうまいよな。ほんとにミルフィの作る料理は何でも旨すぎる」リントは涙さえ浮かべている。
いきなりクレイブさんが口を開く。
「そう言えばピュタール国の調味料って異世界人が作ったんですよね?元の世界にあった料理が食べたいとかで‥それをこんなに使いこなしてるミルフィさんも、もしかして異世界から来たなんて‥「ゴホッゴホッ!」いや冗談ですよ」
私は酷く動揺した。
リントの眼光が‥彼って私の嘘には鋭いから‥ばれた?さらに動揺。
「まさか、ミルフィ?そうなのか?君は異世界から?」
こうなったら話してもいいのかもと開き直る。
「実は前世の記憶があります。それで前世で食べていた料理が作れるんです。でも、私はこの世界で生きている人間ですよ、別の世界の記憶があるって言うだけで‥」
「いや、それでも異世界人の記憶があるって言うのはすごいですよ!どうりでこんなうまい料理作れるんですね。きっと何かあると思ってましたよ‥」
「クレイブ、お前少し黙ってろ。ミルフィ頼みがある。俺とピュタール国に来てくれないか。異世界人が残した資料があるんだ。そこに呪いを解くカギがあるかもしれないと父が亡くなる前に言っていたんだ」
「そう言えば前竜帝は少し前に亡くなりましたよね。リントさん葬儀に行ったんでしたよね」
「ああ、父が亡くなる前に話してくれた。俺の事を気にしていた。父は母を失って心が脆くなってしまったが、呪いを解く方法をずっと探していたらしいんだ。それで異世界人が始祖の相手だったレアと同じ人間だと思っていた。レアの作った料理にも、異世界人が作る料理にも竜人を元気にする何かがあってそれが分かれば呪いも追い払えるんじゃないかって考えていた。だから頼む」
「それってリント。これからは私達とずっと一緒にいたいって事?」
「当たり前じゃないか!ほんとは片時だって離れたくない。でも、今までは呪いがあるから我慢して来た。でも、もう限界なんだ。君やアリトと一分一秒だって離れたくない!!」
「だったら行くしかないですよね?」
クレイブが言う。
「そうね。呪いが解けたら一緒にいれるようになるなら‥」
「ミルフィ、それは俺を許すって事でいいのか?」
「まあ、私一人でアリトを育てていくのは無理だと思うし‥」
「それだけか?」
しゅんとしたリント。
「私だってリントといたいし‥」
「ありがとうミルフィ」
ぎゅっと握られた手からはあの頃と同じ温かさが伝わる。
一気に3年間の空白を埋めてしまった私たちはご飯を食べ終わると私達はピュタール国の調味料倉庫に転移した。




