34あれから3年2
そんな訳で食堂は大いに賑わって日々の生活に困る事はなかった。
私は食堂、強いてはアリトのためにもと色々なメニューを作り出した。
まず、魚フライ。もちろんタルタルソース必須。
シマクロは鰹節風に加工する事に成功して、だき巻き卵や茶碗蒸し、そして魚を加工して前世で言う練り物を開発しておでんを作った。
他にもピザやハンバーガー、米に似た穀類からご飯もどきも作る事に成功してパエリアの様なものやチキンライスに炊き込みご飯もできる様になった。
ランチにはサンドイッチとおにぎり+卵焼き付きを出す様になり、夕食のメニューはすごく増えた。
ドルトは材料の仕入れや忙しいときには食堂も手伝ってくれた。
前は爵位を告げる令嬢との結婚を願っているとばかり思っていたのに、ここ最近の彼はまるでリントみたいだって思ってしまう。
ドルトは赤茶色の髪に青い瞳で顔はまあ、悪くはないがほれぼれするような美青年でもない。体格も中肉中背でリントとはまったくタイプが違う。
ドルトは夕食には必ず顔を出すようになった。
私の料理をうまいうまいと言って美味しそうに食べてくれて片付けだって自分からやってくれる。
ドルトはいつしか「なぁ、ミルフィ。俺と‥いや、何でもない」何か言いたそうにしていつも口ごもった。
「はっ?もしかして付き合ってとか言うんじゃないでしょうね?そんな魂胆ならもう来なくていいのよ。誰も手伝って欲しいなんて頼んでないんだから」
「相変わらず口が悪いな。でも、そのはっきりした性格好きいいよな。女々しい男をみているとミルフィの方がよほど男らしく見えるから不思議だよ」
「それ褒めてるの?ったく‥」
そんな軽口な会話だが、彼とは一線を引いている。
子供までいる私は誰かと結婚なんて、そんな気はさらさらない。
アリトはすくすく育ち2歳を迎えた。
そんなある日、アリトがいきなり魔力を暴発させた。マベルが子守をしている時でマベルはアリトの放った魔力のせいで窓ガラスが割れて大けがをした。
しばらく療養が必要でマベルは子供の所で養生をする事になった。
「マベルごめんなさい、アリトのせいであなたにけがを負わせて、本当にごめんなさい」
「いいんですよ。それよりアリトちゃんに怪我がなくてよかった。ミルフィ食堂は少しの間休みましょう。アリトちゃんもいるしひとりじゃ大変ですから」
「そんな、お客さんも待ってるんだし休むなんて出来ないわよ。マベルが留守の間、私が頑張るから任せてちょうだい」
「もうミルフィったら。でも、無理なようならお昼や夕食どちらかだけにしてもいいですし、ミルフィのいいようにしてくださいね。決して無理はしないで下さいよ。あっ、そうだ。ドルトさんも手伝ってくれるって言ってましたよね?」
「ええ、夜はドルトも来てくれるって言ってたから、とにかくやってみるわ。もし無理だったら都合がいいようにやるから心配しないで、マベルも気を付けてね」
「ええ、ミルフィも無理しないで下さい。アリトちゃんしばらく会えないけどいい子にしててね。ママを困らせたらだめだからね」
マベルがアリトの頭を撫ぜるとアリトが「ま、まっ!だゃめ‥ちゃ、だゃめ~」と言って泣き出した。
マベルがいなくなると分かったらしい。片言でしか喋れないアリトが泣きだした。
「アリトちゃん、いい子ね。大好きよ」
マベルがアリトに頬ずりして目元を拭ってくれる。
「ま、まべぇりゅ、ちゃやだ!」
「ええ、アリトちゃんすぐに帰って来ますよ。ほんの少しだけお出かけしてきますからね。いい子で待っていてくださいね」
「まべぇりゅ。かって‥る?」
「はい、ちゃんと帰ってきますから」
「あぃと。いぃこしゅ!」
「偉いですね。じゃあ、行ってきますね」
アリトはやっと納得したらしく馬車で去って行くマベルに手を振って別れた。




