30聖女の誘い
午後庶務課に戻ると帰り時間近くになって国王陛下から呼び出された。
「国王陛下が呼び出しって?ミルフィを?」みんなが驚く。
「きっと彼女の力の事だろう。ミルフィは聖女になってもおかしくないほどの治癒魔力を持っている。みんな知ってるだろう?そんな彼女をこんな所で働かせたままにするはずがないだろう。ミルフィ大丈夫、私も一緒に行くから。きっと君を聖女として国が受け入れるって話に違いない」
すぐにマクフォール管理官と王宮の奥、国王の執務室に案内された。
そこには国王陛下と教会の教主様がいらした。
「呼び出してすまない。実は君の治癒魔力の事を魔力測定官から報告があった。実に素晴らしい。我が国にこんな魔力を持つ女性が現れるとは。それでミルフィ。君を聖女として認定することにした。仕事はもちろん辞めてもらっていい、これからは教会で聖女として病に苦しむ人の治癒にあたってくれ。もちろん、君の名誉回復としてギスタン侯爵家の爵位を戻す。父上は刑の減刑で無罪とし、その代わり領地はないが王宮貴族としての地位を保障しよう。どうだろう?」
「そんな聖女なんて私には荷が重すぎます。治癒魔法を皆さんのために使うことに異議はありません。ですが聖女なんて無理です。それに父の事は今のままで結構です。父はそれだけの罪を犯しました。無罪にするなんてやめてください!」
私は絶対に嫌だとその話を拒絶した。
国王陛下に顔が訝しげに歪んだ。
「まあまあ、ミルフィさん。あなたも急は話で戸惑う気持ちはよくわかります。でも、あなたほどの魔力を持つ女性は今のマニール国にはいません。どうかその力を民の為に使うことに協力してもらいたいんです」
「教主様、私だって協力は惜しみません。でも、こんな大げさにされるのは嫌なんです。診療所で治癒を行えと言われれば協力します。だから聖女なんて肩書は必要ありませんから」
「ですが、あなたの身を守るためでもあるんです」
「身は自分で守りますから」
「しかし‥オロクの言うとおりの我の強い女だな。教主、どうするつもりだ?」
国王陛下はしかめた顔で私をじろりと睨みつけた。
教主様は相変わらず微笑みを絶やさず私に優しく話しかけて来た。
「今日の所は‥ミルフィさん一度よく考えてもらえませんか?聖女になれば教会が全面的にあなたを守ります。爵位が嫌なら今のままで構いません。それにこれからの生活の保障もしますしお金も支払われます。悪い話ではないと思いますよ」
「‥そうですね。では、少し考えさせて下さい」
「ええ、構いませんよ。ほら、国王陛下。彼女はきちんと話せばわかる人ですよ。では、ミルフィさんゆっくり考えてみて下さい」
私はほんの少し聖女について考えてみようかと思った。




