28結び合う気持ち(リント)
俺はミルフィと転移した。クレイブにはオロクの様子を引き続き探るように指示を出した。
ミルフィの部屋に戻るとすぐに結界、防音魔法をかけた。
ぐったりしたミルフィをすぐにベッドに寝かせる。
「はぁ、はぁ、く、苦し‥りんと?からだが‥」
俺はあの部屋に入った時点でミルフィが媚薬を盛られたとすぐにわかった。
「ああ、ミルフィ辛いだろうが我慢してくれ‥今、水を持って来る」
俺はキッチンに行く。
マベルさんが夕食の仕込みをしていた。
「マベルさん、すまないがミルフィが体調を崩して今、連れて帰って来たんだ」
「まあ、医者を呼びましょうか?」
「いや、それには及ばない。俺は治癒魔法が使えるし、俺がそばについているから。マベルさんすまないが手伝いが出来ないかもしれない」
「そんな事。ミルフィをお願いしても?」
「ああ、任せてくれ」
俺は水をくんでミルフィに持って行く。
「り、んと‥からだが熱いの‥はぁ、うぅん」
ミルフィは欲情して緋色の瞳を潤ませ甘ったるい声で俺に助けを求めて来る。
「ああ、ほら、水を飲もう。少しは楽になる」
俺はミルフィをそっと抱き起こし水を飲ませる。
急いで水を飲んだミルフィの口元から雫が伝い落ちる。その雫が喉元を伝ってシャツの中に流れ込んで胸の尖りがぷっくりと浮かび上がる。
こんなに興奮して。
途端に抑えていた欲情が膨れ上がる。
何を考えている。彼女が苦しんでいるのに‥でも、熱を逃がしてやらないとミルフィは苦しいだけだろ。
勝手な理屈が俺の脳を支配する。
いいか、わかってるだろうな。彼女の身体を楽にしてやるだけだ。俺の欲は完全に無視しろ。
こんな状態でミルフィを奪ってもそれは何の意味もない事。だろう?
俺はミルフィと繋がりたい。でも、こんな形じゃない。心から愛し合って繋がりたいんだから。
そっと彼女を横にする。震える指先でそっとミルフィに話しかける。
「ミルフィ、君は媚薬を飲まされたんだ。だから、身体が熱くなって欲情している。だから今からその熱を発散させないと‥」
「‥はぁ、んっ、くるし‥」
ミルフィが下半身をもじもじさせて俺の身体に摺り寄せる。
「グッ!」
思わず沸き上がる欲に声が漏れた。額からはじわりと汗が滲んで。
「とにかく、シャツを」
それ以上は言葉にならなかった。
時間がまだ午後の半ば。カーテンを閉めたとはいえ部屋は薄明るく彼女の胸もはっきり見えた。
ごくりとつばを飲み込み息を吐きだす。
欲情した番が発する甘い香りに脳芯が焼け付く。でも、今は理性をフル動員しなくては。
彼女の手に自分の手を重ねるとそっと唇を重ねた。
片方の手で胸に手を伸ばしその膨らみを包み込んだ。
「あっ、うぅ‥んっ」
甘い声に暴れそうになる欲情を本能をねじ伏せその先に進んでいく。
彼女の身体をゆっくりほぐして何度も快楽を与える。
「ぅん、んぅっ、あ、あっ、あー」
快楽に身を任せながらもミルフィが辛そうな顔をするたびにこれが愛の営みではない事を胸に叩きこまれる。
「あっ、もぉ‥はぁ、んっ‥」
やがてぐったりとなったミルフィのまぶたに優しくキスを落とすと眦から涙が伝い落ちた。
彼女からすればきっと屈辱だったのだろう。
胸の奥が地割れを起こしたように崩れ落ちて行く。こんな事するべきじゃなかったのか?
次に彼女の口からこぼれる言葉に不安で心が慄く。
「嫌いになった?」
不意に開かれた口からそんな言葉が。
「ミルフィ、何を言ってるんだ?俺は君を愛してる。だから苦しむ君を放ってはおけなかった。寧ろ、本心を言えば嬉しかった。また、君を俺の腕に取り戻せて」
「どうして?リントはそんなに私を?」
「どうしてって?当たり前だ。ミルフィは俺の番なんだ。例え別の男のものになろうと俺の番ということは変わらない。ただ、そうなると俺は狂ってしまうだろうが」
「ほんとに?私だけを愛してくれる?」
「もちろんだ。君しか愛せない。愛してるのはミルフィ。君だけだ。心から愛してる」
「うれしい」
その言葉は受け入れの合図かと。
「俺を受け入れてくれるって事か?」
「うん。リント愛してる」
「俺の番。生涯共に‥」
その後は言葉にならなかった。
俺は焼ききれそうな欲を解き放とうとしたがミルフィが嫌がった。
「今は嫌。こんな薬の残り火で交わるのは‥」
「ああ、ミルフィの思う通りにする。お前が俺の気持ちに応えてくれた。それだけで今は満足だ」
薬の残り火か‥確かに。一気に欲が引いて行くが俺の心は番と繋がった多幸感に包み込まれた。
腹の奥のきっと魂玉だろうと思われる存在が熱く蕩けるようだ。
しばらくして彼女の身体をきれいにしてそっとキスをする。
「腹が減った?何か持ってこようか?」
「ええ、でも、マベルが」
「大丈夫、この部屋には結界と防音魔法を張ってある。マベルにここでした事は気づいてない。そうだ。俺はこのままマベルを手伝うよ。ミルフィはゆっくり休んでて。何か持って来るから」
「うん。リントありがとう」
「当たり前だろ!」
俺の足取りは浮き立つほど軽かった。




