第1話 パパ、ダースベイダーになる
パパの精神は限界に達していた。
会社では物分かりの悪い上司と権利ばかり主張する部下に挟まれ、家庭では妻には邪険にされ思春期の娘にはキモがられている。
そんな中、パパは一生懸命頑張ってきた。
大事なことなのでもう一度言う。
パパの精神は限界に達していた。
そしてダムは、決壊した。
朝、ダイニングキッチンで妻と娘が支度をしている中、パパが2階の寝室から降りてきた。
ダースベイダーの仮面をかぶって!!
妻と娘は一瞬呆気に取られたが、すぐに冷たい目で
「アンタ、ふざけないで。」
「うわっキモい。」
と冷たく言い放った。
だが、パパは意に介さず
「シュー、コー。」
と、くぐもった呼吸音を発し、そのまま着替えの為寝室に戻った。
なぜ、パパはダースベイダーの仮面をかぶったのか?
一つ言えることは、パパはもはや自分のことを1ミリも愛してくれない妻と娘と関わり合いたくなかったということだ。
妻と娘はパパのことは無視して自分達の作業に戻った。
そしてその横をダースベイダーの仮面をかぶったままスーツに着替えたパパが出勤していった。
妻と娘はそれに気づかなかった。
パパはスターウォーズが好きだった。
特に初期のエピソード4〜6が。
グッズも色々集めていたのだが、夫の趣味など顧みない妻に処分されてしまったのだ。
しかし、パパ一番のお気に入りのこのダースベイダーの仮面だけはどこかに隠して死守していた。
そして今、日の目をみることになったのだ。
暗黒面の象徴たる仮面が日の目をみる・・・なんとも皮肉な表現ではないか。
パパが家を出てすぐ、家の前を掃除していた隣のおばさんと目があった。
おばさんは呆気に取られて固まっていたが、パパは
「シュー、コー。」
とパパなりの挨拶をして横を通り過ぎた。
そしてパパは空を見上げて、
「ルーク・・・マイ・サン・・・」
と、くぐもった声でつぶやいた。
パパの後ろからエンジンの爆音が聞こえて、やがてパパに追いついた。
「お、おい!アンタ山田さんか!?」
爆音を轟かせた車の左ハンドル側から顔を出した男がパパに声をかけた。
「シュー、コー。」
「やっぱりそうか。
アンタ、スターウォーズ好きだったのか。」
ダースベイダー姿のパパに気軽に話しかけるこの男の名は柳田範男、スターウォーズが好きで、その中でも一番ハン・ソロが好き。ハン・ソロが好き過ぎてあげくの果てに自分のことをハン・ソロだと思い込んでいる狂人だ。
しかしながら、人に危害を加えることはしないし、パパも参加している田中町の町内会にも参加して会費もちゃんと払っている。
あくまで趣味嗜好がイッちゃってるという意味で狂人という表現を便宜上使わせてもらう。
余談だが、田中町のハン・ソロは、茶色い毛むくじゃらの犬を飼っていて、名前はもちろんチューバッカ、家の中ではチューイと呼んでいる。
そして、田中町のハン・ソロには、彼がレイアと呼んでいる顔がちょっとゴリラ似の愛妻、民子がいる。
この田中町のレイア姫についてだが、町内会の男性陣の間であだ名をレイアにするか、あーちゃんにするかで意見が二分されていた。
五十代以上はレイア派、四十代以下はあーちゃん派となっており、町内会世代抗争の火種となってしまっている。
もちろんこんなこと本人に言えるわけないので内々の話ではあるのだが。
「アンタッ!!
そんな格好で外に出て何のつもりっ!!」
パパがダースベイダーの仮面をかぶったまま出ていったことに気づいた妻が血相を変えてパパを追いかけてきた。
「乗りな!」
パパの危機を察した田中町のハン・ソロは、ミレニアムファルコン号と名付けているデカくて古くて燃費の悪いアメ車に乗るよう親指をクイッとしてパパをうながした。
パパがミレニアムファルコン号に乗り込むと、爆音を鳴らしケムリをモウモウと吹き上げてミレニアム・ファルコン号はパパを乗せて遥かな宇宙へと飛びたっていった。
次回予告ッッッ!!!(作者が思いついたらあるかも)
会社にてクソ上司とクソ部下に、パパの怒りのライトセーバーが炸裂するっっ!!?
その時、田中町のハン・ソロは・・・!?
レイア姫、あーちゃん、そしてゴリラ・・・
交錯する3つの点と線・・・
ゴリラからヒトへ・・・
人類進化のミッシングリンクを解き明かすことはできるのかっっ!!?
空前絶後のスケールで送る第2話ッッ!!
乞うご期待っっ!!




