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第一章:第八話

 ランニングを終え、家に戻って朝食の準備をしていると、二階から物音がし始めた。

 どうやら硝斗が起きたようだ。

 硝斗は朝に弱い。

 早起きは苦手で、アラームを鳴らしてもなかなか起きることはない。

 こうして自分で起きるのはかなり珍しいのではないだろうか。

「おはよ。」

「...うん...おはよ...」

 二階から降りてきた硝斗に声を掛ける。

 まだ頭はあまり働いていないようで歩調もゆっくりであるが、俺は幼馴染のこの些細な変化に喜びを覚える。

 喜びのあまり、体が勝手に硝斗の好物であるフレンチトーストを作り出してしまった。



 待ち合わせの時間より十分ほど早く校門へ向かうと、もうすでにそこには月宮さんがいた。

 その美しい金色の髪は風に揺れて、そのたびに太陽の光を反射して神々しさを感じさせる。

 スタイルもよく、完璧に制服を着こなすその姿は男女問わず校門を通り抜けるすべての人の心をわしづかみにしていた。

 すると、何を思ったのかある男子二人が月宮さんの方へ近づいていく。

 そして、

「月宮さん、俺と一緒に行かないか?」

「俺たちとなら楽しく学校で過ごせるぜ?」

 と、誘いの言葉を発した。

 それに対して月宮さんは、

「すみません。先約がいるので。」

 と断ったが、二人組はあきらめない。

「なあなあ、一緒に行こうぜぇ?どうせその先約というのもでっち上げだろう?」

「そうそう。」

 そういって彼女の手を取ろうとする。

 それを見て、俺の体がとっさに反応した。

 月宮さん手に、肌に触れようとしたその手を払い、

「悪いが先約というのは俺のことだ。文句あるか?」

 自然とにらみつけてしまった。

 二人組は恐怖を感じたのか、

「「す、すいやせんでしたぁ!!」」

 と言って走り去って行ったのだった。


 自分の手をグーパーして見つめる。

 なぜか月宮さんの手に彼らが触れようとしただけだというのに、体が勝手に動きだしてしまった。

 一体なぜなのだろうか...

 そう思考の海に入りかけたところで、

「藤川さん、ありがとうございます。」

 月宮さんの言葉で現実に引き戻される。

「いや、感謝されるようなことは何も。それどころか待たせてすまん。」

「いえ、それこそ私が楽しみで早く来すぎてしまっただけですから...

 って、や、やっぱ今のなしで。」

 月宮さんは自分の言葉を恥ずかしく思ったようで、耳まで真っ赤にしている。

「...俺も楽しみだった。月宮さんと授業を受けるのが。」

 そうはっきりと伝えると、月宮さんは驚き、そして笑顔になって、

「やっぱり藤川さんにはかないませんね。なしにしたのをなしでお願いします。

 私も藤川さんと授業受けるのが楽しみでした。」

「そうか。...それはよかった。」

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