第一章:第六話
「はぁ~疲れた。」
今日は色々と濃密な日だった。
入学式は長いし、いきなり決闘を挑まれるし...まあ、悪くはなかったが。
この先しばらく住むことになる我が家の扉を開ける。
鍵が開いているので同居人となるあいつは先に家についているのだろう。
「ただいま。」
「おかえり~。」
なぜか女の声がする、しかも聞き覚えのある。
まさかと思って慌てて靴を脱ぎ、リビングへ向かうとそこには
「あ、お邪魔してま~す。」
完全にリラックスした一人の女子がいた。
桃色の長髪を一つにまとめてラフな格好をして、ソファに寝転がっている彼女は朝比奈姫奈。
そして、一緒にソファに座ってこれまたリラックスしている男子が鷲谷硝斗。
こっちが俺と住む予定の幼馴染だ。
どちらも関係が長く、気の置けない友人となっている。
「遅かったじゃん。」
「ちょっと色々あってな...というか。」
俺は部屋の様子を見て言う。
「なんで引っ越しの片づけをせずにリラックスをしてるんだよ。」
部屋にはまだ開封されていない段ボールがいくつもあり、片付けに手を付けていないのは明らかである。
そんな部屋を状態で放置してのんびりしている二人にため息を吐き、
「じゃあ、この片づけが終わるまで夕飯はなしな。」
「「ええ~。」」
「...硝斗はわかるが、どうして姫奈までうちでご飯を食べる気なんだよ。」
「だって珠威のご飯はおいしいし。」
その返答に、こめかみに手を当てながら答える。
「じゃあ、硝斗の片づけを手伝ってやれ。」
「分かった~!!」
「全く、しっかりしてくれよな。」
二人が作業を始めたのを見て、俺も引っ越しの片づけをする。
硝斗も姫奈も悪い奴ではないのは分かっているんだが...どこか抜けたところがあるからな。
あの二人はどちらも物理化学科を選択したから、残念ながら一緒に授業を受けたりはできないが、昼を一緒に食べたりする約束はしている。
「そういえば、授業、一人で受けなくちゃいけないのか。」
中学まではこの二人と同じクラスだったからどこか違和感を覚えてしまう。
まあ、そのうち慣れるだろうけど。
*
しばらく片付けに没頭しており、ふと時計を見ると六時を過ぎているのに気付いた。
「やべ。まぁ、大体俺の方は片付いたからいいか。」
夕飯を作ろうと台所に向かうが食材をまだ買っていないことを思い出す。
「いや~どうしようか。食材まだ買ってないんだよなぁ。」
「どうしたの?」
ちょうど二階にある硝斗の部屋から二人が降りてきた。
「夕飯、今日は外でもいいか?」
「「もう、仕方ないなぁ。」」
「...はもらなくていいんだが。」
ちなみにもう気づいている人はいるだろう。この二人は付き合っている。
ずっと仲良しでべたべたしており、俺が『いっそ付き合っちまえよ。』と言ったら試しに付き合うとか言い出し、そのまま今に至る。
結局この日は街中にあるおいしそうなイタリアンで夕食をすましたのだった。
帰って来て硝斗の部屋をのぞくと全く片づけが住んでおらず、発狂したのは内緒の話だ。




