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第一章:第五話

 浮かない顔をした月宮さんを連れてカフェへ入る。

 二人席に向かい合って座って、口を開く。

「改めて、俺は藤川珠威だ。よろしく。」

 そう言って仲良くしたいという意思を示すために手を差し出す。

 それを感じ取ったのかは分からないが、月宮さんは俺の手を握り、

「私は月宮歌葉です。よろしくお願いします。」

 と同じように返してくれた。

 その目に最初に会った時のような敵愾心のようなものはなく、むしろ穏やかなものを感じた。

「どうかしましたか?」

 じっと握手をしたまま目を見つめていたら、少しを顔を赤らめた月宮さんに聞かれる。

「いや、綺麗な目だなと思って。朝は敵意むき出しだったのに。」

「あ、あの時は...色々と思うことがあっただけです!」

 過去の自分の言動を思い出して耳を真っ赤にして恥ずかしがっている。

「そ、その、色々失礼を働いてすみませんでした。」

「失礼?」

「いきなり声を掛けたり、決闘を申し込んで。」

「ああ、そんな気にしなくていいよ。まあ、なんで決闘を申し込んできたかは気になるけど。

 聞いてもいい?」

 そう尋ねると、月宮さんは意を決した様子で口を開いて...


 ぐぅぅぅぅぅぅ


 声を出そうとしたが、その前に彼女のお腹が大きな音で鳴った。

「す、すみません。」

「いや、気にしなくていいよ。というか考えてみれば朝ご飯のあとからずっと何も食べてないもんな。」

 外を見るともう太陽が真上を通り過ぎていた。

 入学式を終えて、すぐに決闘だったからお昼を食べる暇がなかったのだ。

 そういうわけで、二人とも軽食を頼み、話を続ける。

「あまり初対面の人に話すようなことではないのですが...私の父は現職の防衛大臣なんです。」

 月宮さんの話を要約するとこうだ。


 彼女の父親はたたき上げの軍人であり、かなり厳格な人であるそうだ。

 母親は幼いころに亡くなり、男手一つで育てられた彼女は父の影響もあったのだろう、物心がついたころには将来は軍人になりたいと決めていたそうだ。

 中学生になった時に学園都市の設立が決定し、そこに戦闘科があることを知って、そこしかないと思ったらしい。

 月宮さんは友人関係をそっちのけにして首席入学のために勉学に励んだ。

 そうすれば父親が喜んでくれると信じて。

 時には冷たい言葉を浴びられることもあったらしい。

『そんな勉強してさ、馬鹿じゃないの?』

『こいつ、学園都市に首席で入学したいんだって。』

『無理に決まってんじゃん。ははっ。』

 そんな言葉を無視してひたすらに勉強を続けた結果は次席合格。

 父親は泣いて喜んでくれたが、全てを投げうって挑んだ結果が次席。

 自分の何が首席と違ったのかが分からず、それを知るために決闘を挑んできたそうだ。


「なるほど...なんかごめんな。」

 俺はそれほどの想いを持って入学試験を受けたわけではなかったので月宮さんに申し訳なく思う。

「いえ、謝らないでください。逆によい薬になりましたから。世の中にはどこまで行っても上がいる。

 それを知れて、今はすっきりしているんです。」

 そう言い切る彼女は本当にすっきりしているようだ。

 ちょうど料理が来て食べ始める。

「あんなに強い人は初めて見ました。

 先手を取ろうとしたのに隙が一切なくて、動き出せなかったのも初めてです。」

「俺もそうだよ。

 普通の相手なら一撃で終わりなんだけど...あれだけ緊張感のある勝負をしたのはじいちゃんとやった時以来だな。」

「きっとそのおじいさんはとんでもなく強いのですね...」

「ああ、俺の自慢の爺さんだ。」




 会計を終えたころには夕方になっていた。

 それほどの時間が月宮さんと話しているとあっという間に過ぎ去ってしまったのだった。

「月宮さん、またいつか勝負しようよ。」

 そういうと、月宮さんはきょとんとして、

「いいんですか?」

 と尋ねる。

 そんな月宮さんに笑って言う。

「もちろん。そりゃあ突然は困るけど、あれだけ楽しい勝負ができたんだ。

 またやりたいに決まってるだろ?」

 すると彼女も笑って、

「そうですね。またやりましょう。」

 目を合わせて、そうはっきりと答えてくれた。

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