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第五章:第三話

 決闘の始め方は歌葉との決闘と同じ方法で、審判が投げたコインが地面に落ちた瞬間にスタートと言うものだった。

 双方アームを持ってスタート位置に行く。そして、合図を待ちながら珠威は静かに翼を観察する。


 まずは体格。非常にいい体つきをしており、普通の力比べであれば秀でも負けてしまいそうだ。身長も高く、珠威とは頭一個分ほど違う。

 珠威の身長は百八十ほどなので小さい方ではない。むしろ高い方なのであるが、それよりも恵まれた体型は素直にうらやましいと思わせる。

 筋肉も程よくついており、決闘時に着用する薄いスーツだとその体の線がよくわかる。大胸筋、腹筋、上腕二頭筋などなど、その美しいボディは同性である珠威もほれぼれとするほどだ。

 行動は突飛だが、努力は怠らないタイプなのだろう。


 次に着目したのは手に持っている剣。おそらくあれが翼のアームなのだろう。非常に大きい。

 大きさはおよそ二メートルほどだろうか。刀身は太いところで十五センチほど。重そうに見えるが、あの体格だ。自由自在に操ることができるのだろう。

 気になるのはアームの詳細だ。いったいあの剣にはどんな機能が隠されているのか。

 珠威が思考の海に沈もうとしたとき、ちょうど、

「それじゃあ、決闘を始めよう。」

 と、審判が言い、現実に引き戻される。

 コインを構え、指で空中に弾き...


 カキ―ン


 地面に落ちた。

 その瞬間、両者の姿がその場から消える。両方とも相手についての情報が分からない以上、速攻で片を付けるべきだと考えたからだ。

 珠威の剣と翼の剣が激しく打ち合う。

 珠威の剣は黒い刀身で、刃渡りは一メートル五十センチほど。こちらもただ見ただけではどのような能力が隠されているのかが分からない。少なくとも、現段階では一見どちらもアームの能力を使わずに対等な打ち合いをしているように観戦している歌葉には見えた。

 しかし、実態は全く異なっていた。

(なんだ、この剣。すごく重い気がする。)

 珠威は違和感を感じていた。と言うのも、翼はものすごく軽そうに剣をふるっているのだが、秀が受ける剣撃は象の一撃のように重いのだ。

(いくら筋肉があってもこれほどの重さでは長くはもたないはず。とはいえ、翼に消耗した様子は一切ない。なぜだ?)

 ひたすら考えながら打ち合いを続ける。すると、いつしか珠威は防戦一方になっていた。

「おいおい、こんなんなのかぁ?」

 翼の目には失望が浮かんでいる。

 その言葉に珠威の心に火がつく。

「まさか。まだアームも使ってないしな。」

 今度は翼が驚く。

 珠威が翼の激しい攻撃を受けきることができていたのはアームの能力ゆえにだと思っていたからだ。

 その予想が異なっているならば、もし本当に珠威がその自身の能力だけで剣を受けきっているのであれば、形勢を一気にひっくり返されかねない。

 警戒しながらも、「攻撃は最大の防御だ」と自分に言い聞かせて、これまで以上に苛烈な攻撃を加えようと足を一歩前に踏み込む。


 が、

「リリース。」

 珠威の声に何かを感じ、

「なんだこれ。」

 すぐに後ろに飛びのく。

 すると、その勘は正しかった。珠威の剣は変形し、こまごまになり、空中に浮いて珠威の周りを回転している。

 こまごまになった剣の一粒一粒が切れ味の鋭い刃となっており、翼は珠威の間合いに入ることはおろか、半径五メートルより内側に入ることができない。

 それでも、何とか近づくための策を考えるが、思いつく前に珠威が粒子を操る。

 照明で美しく煌めきながら、まるで意志を持っているかのように翼に襲い掛かる。

 まず、一つの塊となり高速で翼に向かって飛ぶが避けられる。

 そして、翼は珠威の周りに障害が何もなくなったことをいいことに切りかかりに行こうとするが、すぐに粒子たちは珠威の周りに戻ってくる。

 今度は三つに分かれて翼に襲い掛かる。

 何とか剣で弾いて防御するものの、防ぎきれず、

「降参だ、降参。」

 その手に持っていたアームを投げ、両手を上ににあげてアピールする。

 それを見た珠威は飛んでいた粒子をもとに戻してアームを腰に差し戻した。

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