第一章:第四話
大観衆といってもいいほどの視線のもとで決闘が始まる。
コインが落ちても俺と月宮さんは動かなかった。いや、動けなかったというべきだろう。
互いに相手から一切の気のゆるみ、ほころびを感じ取ることができず、打ち込みに行くことができなかったのだ。
俺は剣を上段に構え、月宮さんは平青眼の構えをしてじっと止まっている。
無論、何も考えていないわけではない。
どのように動き出すべきか、このまま止まっていたほうがいいのかということを月宮さんの動きを見ながら考えている。
ただ、どれだけ考えても打ち崩せるイメージが浮かばないのだ。
―戦闘においてイメージとは重要な要素である。
スポーツなどでもそうだ。
やってみたらたまたまうまくいったということもなくはないが、大抵、勝利するにはイメージが必要だ。
そのイメージが湧かないのである。
というわけで結局待ちに徹するほかがないのだ。
この様子を観客も固唾を飲んで、一挙一動を見逃すまいと瞬きすら忘れて見つめていた。
そんな状況は月宮さんの動きによって終わる。
時間にして一分だろうか、三十秒だろうか、まったくわからないが体を低くして鋭く切り込んでくる。
美しく、無駄のない所作にはっと息を飲む観客。
俺はその剣を左に払う。
そのまま体を回転させ、体の勢いを乗せて切りかかる。
その剣を真正面から受けた月宮さんは一瞬顔をしかめたが何とか受け流す。
ただ、そこで生まれた隙を逃さない。
素早く上下左右に切りかかるも、流石というべきなのだろうか。即座に対応して防戦一方であるものの月宮さんはすべて打ち返してきた。
このままでは状況が相手に傾きそうなのでいったん距離をとって再び上段に構えなおす。
そして今度はそれほど間を置かずに俺から攻める。
俺の接近に対して月宮さんが選んだのはカウンター。
一気に勝負を決めるつもりなのだろう少し大きく構えすぎなのが見えた。
そこで、ぎりぎり間合いの外で動きを止める。
月宮さんは剣を出しかけて止めたのを見て...
俺は素早く前へ一歩踏み出して剣を振り、月宮さんの首元で寸止めをした。
月宮さんは剣を捨て、ため息を吐き、
「はあ、降参です。」
と悔しそうな顔で言った。
*
決闘が終わり、熱くなった体を外に出て冷やす。
剣を扱うのは得意だ。
祖父が剣道道場を開いていたこともあって、小さいころからよく剣道を教わっていた。
小学五年生の時に祖父との一本勝負に勝利し、
『もう教えることはない。』
と某鱗滝さんではないが、言われてしまいそれから道場へ行っていないが、素振りは続けていたので腕は落ちていないはずだ。
目の前で咲いている桜を見ながら先ほどの試合を振り返る。
途中からは直感的に動いており、考える余裕もなかったが、次があった場合に備えて反省点を探し出すのだ。
と思ったら決闘場の自動ドアの開く音がした。
そちらを見ると下を見て歩く月宮さんの姿があった。
その姿を見て思わず声をかける。
「少し、話をしないか?」
「はい?」
ちなみに本作、展開をイメージしてたら現段階で(まだ結末まで行ってない)12章あるんです。
ぜひ最後までお付き合いくだされ。




