第四章:第十一話
花梨は相手の状況を分析する。
(おそらく相手の残りのマガジンは一つか?)
記憶をたどり、考える。
この戦闘の間に相手が捨てていたマガジンの数、そして最初に持っていたであろうマガジンの数と照らし合わせて導き出された答えは―
(いや、もしかして、ゼロ?)
起伏の向こう側の様子を確認すると、全力で走ってくる四班のラスト一人の揺れている金髪が視界に入った。
その手にはナイフが握られている。
もうすでに、すぐ近くに来ており、マシンガンを構えて引き金を引くのが間に合うかは五分。
であれば、と思い花梨も腰からナイフを手に取り、一気に接近する。
カン
という甲高い金属同士がぶつかる音が何度も辺りに鳴り響く。
数合打ち合ったその時、双方のナイフがはじけ飛んだ。
そして、そこでとった行動が勝負を分けた。
金髪の女子生徒は、二メートルほど先にはじけ飛んだナイフを拾いに行こうと、花梨に背を向けてしまった。
一方花梨は躊躇なく、ナイフがはじけ飛んだ瞬間に相手に殴りかかった。
無防備であった彼女は腹のあたりに右ストレートを食らい悶絶。
花梨は追い打ちをかけるように左フックをキドニーに叩き込む。
痛みのあまりに倒れこむがまだ意識が残っていた相手に対して、気絶するまでタコ殴りにし、意識を手放したことを確認したところで、花梨はナイフでとどめを刺したのだった。
*
試合が終わり、控室にて。
「すまん。俺が油断したばかりに。」
謝罪をする珠威の姿があった。
「私も慢心がありました。すみません、花梨さん。一人、戦場に残してしまって。」
歌葉も反省の言葉を口にする。
そんな二人に花梨は声を掛ける。
「二人とも、気にしないでくれ。
今回は相手のチームプレーが一枚上手だっただけだ。
むしろ、新しい連携方法のヒントを得られたんだ。
そのことを喜ぼう。」
怒っている様子でないことにほっと息を吐きだしつつ、珠威は皆に言う。
「そういえば、次の決勝戦は二時間後らしい。
少し休憩したら軽く体を動かしつつ、新しい連携の案を思いついたんだ。
それを試してみよう。」
「「「了解。」」」
*
一方、負けてしまった四班サイド。
「いやぁ、すまんすまん。
今回は先に敵の姿に気づくことができなかった私のミスだ。」
四人のうち、三番目に倒された、長い白髪と大きなリボンが特徴的な女子生徒が謝る。
彼女こそが四班のリーダー、明星瑞希である。
「あれは仕方ないよ。
あんだけ隠密行動をされたら気づけないし。」
「というか、先手を打たれたのにあれだけ反撃できたのは瑞希が考えてくれた作戦のおかげなんだよ?
そんな謝らないでちょうだい?」
二人がフォローをする。
「ありがとう。でも、ミスはミスだ。
次にしっかりつなげられるようにしよう。」
「そうだね。」
そこで三人は一人の班員、最後に花梨に倒された金髪の女子生徒がずっと黙っていることに気づく。
いつもなら、明るく快活な彼女が一番しゃべるのに何も言わないことに違和感を感じ、
「奏、大丈夫か?」
とたずねる。
すると、瑞希は奏と呼ばれた女子生徒が何かをつぶやいているのに気付いた。
「今、なんて言ったんだ?」
そう尋ねると、奏は、恍惚とした表情で言った。
「気持ちよかったなぁ。」
「.........」
意味が分からなくて黙る三人。
奏はそこに、言葉を加える。
「またいたぶってくれないかなぁ。
こんな感情って初めてだからなんていえばいいのか分からないけど、強いて言うなら快感ってところなのかなぁ。」
その様子を見て三人は悟った。
(やべぇ、奏が壊れちまった。)
と。




