第二章:第六話
その優しさがずっと苦しかった。
莉桜は俺が何をしても笑って許してくれた。
いつでも、どんな時も。
そのうち俺はミスばかりする自分自身を許せなくなっていた。
莉桜が許してくれても、莉桜が笑って気にしないと言っても俺の心には消すことのできない澱がたまっていった。
そして段々罪悪感から莉桜から逃げるようになっていた。
本当は分かっていた。
謝らなくてはならないと。
逃げて、好き放題して、莉桜を傷つけてしまっていることを。
ただ、心の片隅ではこうも思っていた。
このまま莉桜が愛想をつかして婚約破棄してくれればと。
俺にはとてももったいない人間性を持った彼女が、その器に似合う人物と出会ってくれたらと。
しかし、莉桜は俺のことを見放すどころか、尻拭いをしてくれていた。
そのことになおさら罪悪感を覚えて、合わせる顔がなくて、また逃げていた。
とはいえ、もうここで逃げるわけにはいかない。
莉桜が許してくれてもこれ以上は俺が自分自身に対しての怒りでどうにかなってしまいそうだ。
珠威がこの状況を用意したというのが情けないが、ありがたく利用させてもらおう。
「莉桜、今までさんざん迷惑をかけてすまなかった。」
「迷惑だなんて...」
「今まで俺はずっと逃げていたんだ。完璧な莉桜の隣に立つということから。
それで、たくさん傷つけて、取り返しのつかないことをしたと思ってる。」
俺の真剣な雰囲気を察したのか何も言わず、ただ目はそらさずに聞いてくれる莉桜。
「だから、見ていてくれないか?俺の変わる姿を。そして莉桜の隣に胸を張って立てるようになって見せるから。」
そう言うと莉桜は今まで見た中で最高の笑顔で、
「分かった。ちゃんと見てるから。変わって、より私を虜にしてね。」
と言った。
その顔を見て、より虜にされてしまうのは俺の方じゃないかと思わされるのであるが。




