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第二章:第五話

 莉桜が去ろうとした瞬間、俺の脳裏に流れたのは決闘で珠威に言われた言葉だった。



『一番近くにある想い』


『俺を思ってくれている存在』



 そして、



『答え合わせ』



 という言葉。


 その言葉を聞いてずっと疑問に思っていたことを確かめたいと思ったのだ。

 なぜ俺との婚約を断らず、そして今日まで継続しているのか。


 そもそも、この婚約は那須野家が無理を言って朝桐家に頼んだものだった。


 新興企業の社長の息子と八大名家の令嬢。

 この組み合わせの婚約は普通成り立たない。家の格が明らかに違うからだ。


 それでも成立したのは朝桐家の興味以外の何物でもないだろう。

 だから、その気になればいつでもこの婚約は解消されうるのだった。


 そのため、これだけひどい行動をとっていても婚約を解消しない朝桐家、そして莉桜が不思議で仕方ないところである。





 再び部屋に訪れていた沈黙を先に破ったのは莉桜だった。



「零君、私たちが初めて出会った日の事を覚えてる?」


「ああ。俺にとっては良くも悪くも忘れられない日になったからな。」



 初めて会ったのは三年前。


 レストランの個室で二人きりでディナーをして婚約をするかしないかを決めるとことで、父のためにも必ず成功させるという決意で臨んだ。

 個室の扉を開けた先に座っていたのは着物をまとった水色の髪の美少女だった。

 その美しさのあまり、意識が飛びかけたことを覚えている。


  正直一目惚れだった。



「私はあの日、零君に初恋をしたの。」


「え?」



 莉桜の言葉に驚く。



「意外でしょう?」


「それは...まあ。」



 ディナーの味はよく覚えていない。

 緊張で喉を通すのがやっとだった。


 頭もあまり回らず何を話したのかも覚えていない。


 唯一覚えているのは、店を出るときに起きた事件。


 当時の俺は貧血体質でしばしば意識を失ってしまうことがあった。

 そして、その貧血が最悪のタイミングで起こってしまったのだ。


 店の前の階段を莉桜をエスコートしながら下りている最中、突然視界が真っ暗になった。

 そして莉桜の方に倒れ、二人ともバランスを崩して転んでしまった。


 幸い高さはそれほどなかったため怪我はなかったものの、莉桜の和服を汚してしまった。


 こんな大失態をしたため、当然婚約の話は断られるだろうなとおもっていたところ、なんと婚約が成立。

 俺と父さんの両方とも驚いたことこの上なかった。



「あの時、俺は危うく莉桜に大怪我をさせるところだったんだぞ。それなのに初恋って。」


「それまでに会っていた婚約者候補の人たちは皆強い人ばかりだったの。いや、強く見せていたというべきかな。

 緊張を押し殺して平静を振る舞う。私にとってはつまらない人間にしか見えなかった。

 そんな中、自分を偽らずに接してくれた零君は他の人とは全く違って見えたの。」


「...」


「支えられるだけじゃなくて、私は互いに支えあえるような婚約者がよかった。

 その点、零君は強すぎず弱すぎず。私にマッチしてたんだよ。」


「でも、二回目に会った時、俺は待ち合わせに遅刻したんだぞ!」



 自分でもおかしいと思うが、自分の欠点を羅列しだしてしまう。



「それに、映画を見に行った時にエスコートをミスしたりしたし。」



 すると、莉桜は優しく微笑んで、



「そうやって零君は卑屈になるけどさ。私は零君の素敵なところをたくさん知ってるんだから。

 今言ったこと、二回目はまだ一回もしたことがないよね?それに...さりげないところでの気遣いとか。

 私の心を掴んで離さないのはそういうところなんだよ。」



 と言った。

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