第二章:第三話
今回の勝負も観客がたくさん集まっている。
広い森フィールドのあちこちにカメラが設置されており、それを大型ビジョンに映し出して観戦するという形だ。
これほどまでに人が集まっているのは学年一位である俺が決闘をするということと、そして何より零が学園中に知らせたことが大きい。
多くの女子生徒に見せつけようと画策しているのだろう。
ただ、零の思い通りにさせるわけにはいかない。
俺の作戦を成功させ、朝桐さんをこれ以上苦しませやしない。
「それじゃあ、やりますか。」
転送装置は大きな黒い四角の箱だ。
レールの上に乗っており、軌道上を移動して俺のことをフィールドへ運んでくれるのだろう。
装置に乗るとすぐに動き出し、しばらくして止まったようだ。
内蔵のスピーカーから音声が流れる。
『それでは、決闘を開始する。スタートは装置の扉が開いたらとする。』
背中にさした剣の柄を軽く触り確認する。
「よし。」
*
扉が開く。
外へ出て、あたりを見渡す。
風が吹き、木々の揺れる音がする。
明らかに1v1にしては広いこのフィールドを選んだのは接近戦が得意そうな藤川珠威を思い通り動かさせないようにするためである。
気配の察知が難しく、また、剣の取り回しが難しい。
限りなく俺に有利な状況を整えたのだった。
ふぅ、と一息を吐く。
今のところ珠威が近づいてきている様子はない。
アサルトライフルを構えながら周りの様子を今一度うかがう。
と、突然真後ろに気配を感じた。
限りなく抑えられていたため全く気付かなかった。慌てて横に飛んで剣撃を回避する。
「よく避けたな。」
奴の、珠威の目を見てぞっとする。
その目は黄金に煌めき、薄暗い森の影の中で圧倒的な存在感を放っていた。
彼は大剣を構えて俺と対峙する。
すぐに切りかかってくるかと思ったら意外なことに珠威は俺に話しかけてきた。
「お前はどうして一番近くにある想いに気づかないんだ?」
「は?どういうことだ?」
「お前を大切に思ってくれる存在を放り出して、困らせて、恥ずかしいと思わないのか?」
ああ、こいつは莉桜のことを言ってるのだな。
「っは。笑わせてくれる。
俺を大切に思ってくれる存在だって?そんなやつ、いるわけないだろう。」
俺のようなくず野郎のことを思う?そんな物好きが実在するとか、どんな冗談だ。
莉桜とはただ親側の都合で婚約した間柄だ。
好き同士だから結ばれたわけではない。あいつも俺の行動を見てきっとあきれているだろうな。
「そうか。お前はそう思ってるんだな。」
珠威はそう言って一気に接近してきた。
ライフルを掃射するものの、弾をすべて切り落とされてしまう。
慌ててナイフを取り出し初撃を何とか防ぐも、ナイフがはじかれて飛んで行ってしまった。
「くそ。」
俺がこいつより優れていることを証明しなくてはいけないというのに。




