第二章:第一話
あれ?いつの間にか第一章が...
入学式からひと月以上が過ぎ、学校生活には完全に適応して人間関係も固まってきたころの話である。
歌葉は俺とだけではなく、硝斗や姫奈とも仲良くなり、今では俺を含めた四人で昼食をとることが日課となっている。
そんなある日、いつも通り昼休憩前の最後の授業が終わり、硝斗らと合流するために歌葉と食堂へ歩いていると後ろから声を掛けられた。
「おい!」
振り向いて声を掛けてきた人の姿を見ると、薄い紫色の髪を短く切った男子生徒がいた。
「何か用か?」
「ああ。お前、藤川珠威だろ?」
「そうだが。」
「俺はお前に決闘を申し込む!」
彼は人差し指を俺に向けながら高らかに宣言をした。
その宣言に対し、俺は
「なんかデジャヴ...」
苦笑してしまう。
少し前にも同じようなことがあったような...と思い隣を見ると露骨に目をそらされた。
「ああん?」
「いや、何でもない。それで、決闘だっけ?了承した。」
「それじゃあ今日の放課後、決闘場で待っている。」
そう言って男子生徒は去って行った。
「なぜ彼は珠威さんに決闘を申し込んだのでしょうね。」
「さあ?とにかく敵意を感じたが。」
等々話していると待ち合わせ場所に着いた。
どうやら硝斗たちはまだ来ていないようだ。
「じゃあ、ここで待ちましょうか。」
そう丁度歌葉が言ったとき、
「す、すみません。ここらへんで紫色の髪の男子生徒を見かけませんでしたか?」
水色の髪の小柄な女子が現れた。
あちこち走り回っていたようで髪は跳ねており、額には少し汗が見える。
制服にも、しわができていて疲労感がうかがえる。
「ああ、それならさっき俺に決闘を申し込んで去って行ったけど。」
「あなたが藤川さんでしたか...」
そう言うと彼女は心底申し訳そうに
「すみません。零が迷惑をかけてしまって。」
「彼、零とやらはどうして俺に決闘を?」
「それは...」
彼女が口を開いた瞬間
ぐぅぅぅぅぅ
女子生徒のお腹が非常に大きな音で鳴った。
「とりあえず、昼食にしようか。」
*
女子生徒の名は朝桐莉桜というらしい。
朝桐家は八大名家の一つだ。
八大名家とは、現在日本で政治や経済などを中心となって動かしている八つの家のことである。
ちなみに姫奈の朝比奈家も八大名家の一つだ。
当然、かなり高い身分であるが、姫奈の家の教育方針は身分で友人関係を縛ることがなかったので俺たちでも仲良くなることができたのだ。
さて、話を戻そう。
朝桐さんのお腹が鳴ったタイミングでちょうど硝斗と姫奈が食堂へ現れたので五人で一緒にご飯を食べながら話を聞くことになった。
そして以下が聞いた話をまとめたものになる。
あの紫色の髪の男子生徒 ―名を那須野零というらしい― は朝桐さんの許嫁だそうだ。
彼の父はこの学園の食堂も運営する食品会社、Nasu(株)を一代で大企業に育て上げた凄腕の経営者ですごい人らしい。
両家の思惑が合致して婚約をしたものの、零は女たらしで婚約者がいても数々の女子に声を掛けて、問題を起こすことが多々あるという。
時に人の彼女に声を掛けてその彼氏と喧嘩になり、時に婚約者の存在を隠して彼女を作ったりしたそうだ。
そうして騒ぎになるたびにまさしく今のように朝桐さんが謝罪に回るのだとか。
今回、俺が決闘を申し込まれたのは零の一方的で、傲慢な怒りによるものだそうだ。
昨日、彼は何度も問題を起こしたのにも関わらず、懲りずに女子に声を掛けた。
すると『私は藤川君にあこがれているから無理です』と断られたそうな。
俺を理由に誘いを断られたのがそれで五日連続だったそうで、零の怒りが頂点に達したらしい。
俺と直接戦って”自分の方が優れている”ということを証明するために決闘を申し込んだそうだ。




