後日談:誓いのルヴィアにて
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春の陽射しが差し込むルヴィア公国の庭園。
花々が咲き誇るその中心で、リュシエルは微笑んでいた。
「……本当に、静かで穏やかな国ね。ここと比べると、王国はやっぱり“雑音”が多かったわ」
カイル・リュグナーはその隣で肩をすくめる。
「雑音というにはずいぶん豪快な爆音だった気がするが。ま、あれだけ騒げば、国内の“体制”も見直されるだろう」
リュシエルは苦笑する。
「貴方、今でもそんなこと言うの?」
「言うとも。だって、君は“私の婚約者”で理性的で、信用できる。……それに、君は私の人生に必要な“パートナー”でもあるからな」
「ふふ、甘やかしすぎじゃない?」
「そのくらい許してくれ。私は何年も前から、君に首ったけだったんだ」
リュシエルの頬が、わずかに赤らんだ。
──先日、フェルナンデス侯爵家とルヴィア公爵家との正式な婚約発表がなされ、国境を越えた政略的にも有力な縁談として注目を浴びることとなった。
王国国内では、“王子が手放した令嬢が、隣国で大歓迎されている”という皮肉な構図が、上流社会に大きな衝撃を与えた。
だが──リュシエルにとって、それはただの“始まり”に過ぎなかった。
「カイル。これから少しずつ、“ルヴィア”を変えていきたいの。女性も、言葉も、国も隔てず、手を伸ばせる場所にしたい」
「もちろん協力は惜しまないよ。そのためにも、君と婚約したんだ。共に歩いてくれ。私は、君が選ぶ未来を信じる」
──この日、ルヴィアの空に交わされた小さな誓いは、後に「リュシエル外交革命」の第一歩と記録されることになる。
第1部 完
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