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魔王討伐を目前として、勇者は剣を握りなおす。震える手を抑え、雨に濡れたグリップを拭う。一番大事な場面だ。仲間たちの士気をあげるために声を張り上げる。


「魔王討伐のためにここまで長い間俺たちは頑張ってきた。それもここまでだ。この戦いで全てが決する。絶対に勝って世界を救おう。」


勇者がそういうと、仲間たちはそれぞれ気合を口にした。いざ戦いが始まる。決戦場までの一歩一歩をかみしめる。目の前に、おぞましい姿をした魔王が相対する。


「ついぞここまできおったか勇者よ。だが貴様たちの人生はここまでだ。お前たちを倒し、我がこの世界を統べるのだ!」


おどおどしい空気に慄き、足がすくむ勇者に魔術師は未来を切り開くのは我々だと声をかけた。勇者はその一言で気合を入れなおし、魔王に向かっていった。


雨に足を持っていかれそうになりながら、それでも素早く間合いに入り込み、何度か魔王に切りつけるが魔王には全く傷がつかない。それどころか魔王は余裕かのように不敵に笑い、勇者の首をつかんだ。魔王はそのまま首を絞め勇者を苦しめた。勇者の体は魔王の怪力によって浮かびあがり、雨によって剣はすべり落ちてしまった。


「愚かなり勇者よ。お前では私には勝てない。」


そういうと魔王は勇者を投げ飛ばし、すかさず落ちた剣を拾い上げ勇者の首に深く差した。雨粒が迫る視界の端で、仲間の魔術師が見えた。何か魔法を唱えたのか杖の先端が白く輝いていたのを捉えた。そのまま視界が真っ白になり勇者は意識を手放した。




目を覚ますと、そこは病院であった。

そばには泣きそうな顔をした両親がいた。医者や両親が言うには、自分は棒付きの飴を食べていた。

そのままゲームをしていたところ、母親に呼ばれて階段を降りようとして足を滑らせ前向きに倒れこみ、のどに飴が刺さってしまったらしい。階段から激しく音がしたのち、静寂に包まれたのに違和感を持った母親は自分の息子の様子がおかしいことにすぐ気が付いた。急いで救急車を呼びつけ、手術を施したおかげで窒息死せずに済んだようだ。

であれば先ほどのは所謂走馬灯の一種だと考えられる。自分はゲームのしすぎかもしれない、などとおもいつつ両親や医者のもと、もう棒付きの飴を食べないと心に決めたのであった。

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