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学校の隠れ美少女と今日も喋る  作者: 粗茶の品
8/10

登校時間はいつ頃で


 日が昇り始めて少し経った頃の登校時間。

 今日も何も変わらず道にはいつも見かける人、たまに見かける人が歩いている。見かける人は大体固定されてきて新しい人はほとんど見ない。

 今登校している信夜も周りからすればそんな存在だろう。

 日常の背景の一部。これといった刺激を求められはしない存在。

 信夜は登校中は俯きがちな顔をふと上げてみると前に見覚えのある人物を見かけた。

 その人物も普段の信夜のように顔を少し下げて歩いている。

 信夜は少し歩くペースを上げてその人物に追いついた。


「星上さん、おはよう」


 信夜が声をかけると星上は肩を振るわせてゆっくりと振り返る。星上は少し口を開いて信夜をじっと見た。

 信夜はその顔を見て少し気まずくなる。

 声をかけるのは馴れ馴れしかっただろうか。一緒に帰ったので声くらいかけても大丈夫だと思ったのだが。


「おはよう、ございます」


 慌てて軽く礼をしながら星上は挨拶を返す。


「迷惑だった?」


「え?いえいえ、全然」


 星上は両手を振って信夜の言葉を否定する。

 この様子だときっと気を使わせてしまったのだろう。やはり、迷惑だっただろうか。


「あ、あの」


「どうかした?」


「い、行きましょう」


 星上はそう言って歩き始めた。信夜もそれに合わせて歩き始める。

 やはり、星上の顔は下を向いて歩いていた。視線を信夜に合わせてはくれない。


「いつも、これぐらいに来てるの?」


 赤信号で止まるとそれとなく信夜は話しかけた。

 信夜は毎日これぐらいの時間に登校しているのだが星上を見かけることは今までなかった。

 学校の手前の道まで来ても姿を見たことはない。


「その、今日はちょっと寝坊しちゃって」


 顔は合わせず星上は返事をする。

 どうやらいつもはこれよりも早い時間に来ているらしい。

 早くに学校に行ってもやることがない信夜は敢えて時間を遅らせて大半の人が登校する時間の最後の方に合わせているがもう少し早く家を出ていたら星上に会っていたのかもしれない。

 かといって、以前から親しかったわけでもないので話しかけはしなかっただろう。


「空松さんこそ、いつもこれぐらいなんですか?」


「そうだよ。早く着いてもやることなくてね」


「そう、ですか」


 また会話が途切れてしまった。

 どうやら自分に高いコミュニケーション能力はないらしいと信夜は思う。

 昔から仲良くするのが苦手というわけではないのだが。

 それから途切れ途切れ会話をしているとだんだんと学校が見えてきた。

 それに合わせて同じ制服を着ている人の姿も多くなっていく。


「もう、着いちゃった」


 星上が俯きながら呟いた。

 今日は何か学校に行きたくないのだろうか。だから登校したのが遅れたとか。

 信夜は軽く首を振る。

 理由はわからないがきっとそんなことはない。そうだったとしても特に何かあるわけではないが。


「あ、あの」


 昇降口の手前まで来ると星上が信夜の方を向いて話しかけた。

 今日顔を合わせるのは二回目だ。話しかけて振り向いた時以来、顔を合わせてはくれなかった。

 もしかしてこんなことはもうやめてほしいと言われるのだろうか。実はずっと迷惑だと思っていたのかもしれない。


「よ、よかったら、今日も一緒に帰りません、か?」


 信夜はキョトンとした。

 杞憂だったと思ってもいいのだろうか。こう言ってくれるなら嫌われてはいないと思いたい。


「俺は構わないよ」


「はい」


 この星上の返事は今日一番元気のいい声な気がした。今日といってもまた会うことになるらしいので更新されるかもしれないけど。

 星上は「それじゃあ、また」と言って、校舎の中に入っていった。


(あ)


 昨日は気にしなくてよかったのと驚きで頭から抜けていた。

 一緒に帰ることぐらいは構わないのだが、信夜にはいつも一緒に帰っている人がいる。

 いきなり知らない人がいて平気だろうか。

 長年の付き合いだから今日一緒に帰らなかったぐらいで友情にヒビが入るとは思いたくない。

 今日も学校に来るかどうかはわからないが伝えることを忘れないようにしないといけないだろう。

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