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学校の隠れ美少女と今日も喋る  作者: 粗茶の品
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わかった真実と増えた謎


 教室に入ると信夜は自席に鞄を置いてそのまま座った。

 登校中、今日はなぜか隣が寂しいように感じた。

 それはひとえに星上が今日はいなかったからだろう。

 いつもであれば登校中に出会って学校まで一緒に行くのだが、今日はここまで来てまだ一瞥もしていない。そのため、今日は登校中喋ることはなかった。

 考えてみれば朝は一緒に行こうなどと約束はしていないのだから変ではないだろう。

 しかし、最近はいつも一緒だったから信夜は違和感を感じていた。それに加えて橋上のことが昨日のこともあったからか気になって仕方がなかった。今も教室まで出向いてみようかと頭の片隅で考えている。教室でなければいつもの階段かもとも。

 なのだが、今日は会いたくないから会わなかったとか迷惑だと言われたらどうしようかという考えたが足を引っ張った。

 それでもやはり気になるので一度大きく息を吐いて立ち上がる。するとちょうど目の前にとある人物が立ち止まった。


「空松さん。少し宜しいですか?」


 口元などは穏やかに見せているが目つきだけは鋭い表情で麻由理という名らしい人物が告げる。


「何か用?」


 予想外の人物からの発言だったので信夜は内心戸惑った。

 この人物は見ることこそあれど話したことなどほとんどないし話すこともない。見ることさえ最近になって少し出てきただけだった。なので話すことなどないと思うが、この人物は信夜の目の前に立っている。


「ここだとなんですので場所を変えてもよろしいですか?」


「わかった」


 なんとなくここだと話しづらそうな雰囲気を感じて信夜は了承する。すると麻由理は移動し始めたので信夜は大人しくそれに続いた。

 廊下に出て黙々と歩く。前をいく人物はただ進むだけでそれ以外に何かをしようという雰囲気を感じない。きっとついてきているかは足音などで判断しているのだろう。

 歩き続けて立ち止まった場所は初めてこの人物と話した教室だった。

 麻由理は鍵を取り出しドアを開けて中に入る。信夜はわざわざ丁寧に閉められたドアを開けて中に入った。そしてドアをゆっくりと閉める。

 教室の様子は何も前と変わっていない。麻由理は教室の中心あたりの席に座った。信夜はそこに近づく。そして横の席あたりにある椅子に座った。


「それで俺になんの用?」


 麻由理は正面を向かず顔だけを向ける。


「あんた一体何したの?」


 放たれた言葉は今日聞いた今までの言葉よりも荒かった。

 信夜は唐突に変わったこととなんの件なのかそのどちらもがわからなかった。しかし、言葉については初めて会った時もこんな感じだった気がするので意外とすんなり受け入れた。きっと世間体を気にして人目のある場合にはあんな感じなのだろう。なぜ自分には違うのかはわからなかったが。


「何って何かした?」


 麻由理は深くため息をつく。ここまでされる何かをしてしまったのだろうかと信夜は少し不安になった。


「明日華に何したのって聞いてるの」


 明日華というと大雅のことを指しているのだろう。

 しかし、信夜には確信を持てるような何かがない。そもそもどうしてこんなことを聞いているのかが信夜は気になった。


「大雅さんがどうかしたの?」


「今日は朝から様子が変なの。あの人をこんな感じにするのは現状あの子の件ぐらい」


「なら、そのあの子って人に聞いた方が」


 様子が変なのは確かに心配だ。しかし、どういうわけかは知らないが誰の話でなのかわかっているのならその人に直接聞いた方がいいと信夜は思った。

 しかし、麻由理は睨め付けてくる。

 どうやらそう単純なものではないらしい。


「あの子っていうのがあなたにはわからないの?」


「ごめんだけど。わからない」


 麻由理に信夜はまた大きくため息を吐かれた。

 こんな態度を見せるということはわかってもおかしくないということなのだろうか。

 信夜は一度考え込んで頭を下げる。すると「あっ」と一つ心当たりが思い浮かんで顔を上げる。


「もしかして星上さん?」


「そうよ」


 麻由理は心底呆れたような顔で告げる。

 思い返せば星上の様子がおかしくなったのは大雅と出会ってからだった。それがあの二人の間に何かがあるということなら合点がいかないこともない。それに星上が麻由理の姿を見た時も様子はおかしくなっていた。つまり三人には何かがあるのだろう。

 大雅と出会った時はなぜああなったのかわからなかった。その答えがここにあるのだろうか。

 察しが悪くて信夜は申し訳ない気持ちになる。


「あの二人には何かあるの?」


「それはあんたにはまだ言えない」


 一番知りたいところは教えてくれないらしい。


「それで、あの人に何かしたの?」


 麻由理は顔を近づけて圧をかけてくる。

 星上が関連していると言われると思い当たるのはあの二人が出会ったことだろう。それ以外はまるでわからない。


「昨日、帰りに星上さんを待ってたら大雅さんが話しかけてきてちょうどそこに星上さんが来たんだ」


 麻由理は元に戻って今日一番大きいため息をつく。


「なんで私がちょうどいない日に限って」


 頭を抱えて麻由理は言う。麻由理はあの二人を引き合わせないようにしていたのだろうか。思い返せばそう捉えられそうなことが思いつかなくもない。


「なぁ、頼むからあの二人に何があるのか教えてくれないか?昨日も取り乱した感じだったから心配なんだ。頼むよ」


「無理よ。私だって一部始終は知らないし、それに簡単に勝手には話せない」


 そう言われたら信夜は引き下がるしかなかった。これ以上問い詰める権利は自分にはきっとないだろうと思う。


「星上さん、大丈夫かな」


「休んでるんだし大丈夫なわけないわよね」


「え?」


 つい出てしまった信夜の言葉に麻由理も「え」と返した。


「星上さん休んでるの?」


「逆に知らなかったの?」


「知らなかった」


 星上が休みとは誰にも聞かされていない。それゆえに知らなかった。

 しかし、それならば今日出会わなかったことに合点がいく。


「休むぐらいなのか」


 とは言っても合点がいくだけでその事実は心配に拍車をかけた。信夜は余計に星上が気になってしまった。今はどうしているのだろうと考えている。


「まぁ、とにかく事情はわかった。あんたに対する評価は下がったけどね」


「悪かったな」


 友達を嫌な思いにされたのだから当然だろう。

 狙ったわけではなく自然とそうなってしまったのだから仕方ないと反論ができるのかもしれないが信夜は自分がもう少しあそこに行くのを遅らせていたら、大雅との話をもっと早く切り上げられるように話せていたのなら、そもそもそれを話してくれるぐらい信用されて聞いていたのならと自分を責めた。


「ここは私が閉めるからあなたは早く帰りなさい」


 麻由理に促されて信夜は廊下に出る。そして重い足取りで歩き始めた。


(心配、だな)


 頭の中では心配する思いが木霊する。廊下の床を視線でなぞりながら信夜は教室まで歩いた。

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