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学校の隠れ美少女と今日も喋る  作者: 粗茶の品
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騒がしい帰り際


 信夜が教室で帰りの支度をしていると突然そこに西平が現れた。


「なぁ、空松。テストの結果どうだったんだよ」


「なんだ、藪から棒に」


 信夜は作業を進めながら返事をする。西平はそれを眺めているようだった。

 明日必要がない教科書などを次々に鞄へ入れていく。期末テスト後は一日の授業数が少なくなるのでものはそこまで多くない。

 少し手を動かすと帰りの支度は終わった。


「それで、どうだったんだ?」


 律儀に待っていた西平は終わったタイミングで畳み掛けるように聞く。


「まあまあだよ。一応上がってたけど」


 結果としては悪くはなかった。前回少し下がった分を取り戻した上でさらに順位が上がっていたが、それは星上のおかげだろう。


「そう言って、お前いっつも俺より高いし、順位も上位じゃん」


 西平は不満気に告げる。信夜はそれに対して「はいはい」と軽く返した。

 このやりとりは何度も行ってきて信夜はその度に否定してきたが、何度やってもあまり効果が見られなかったので諦めた。


「それで、用はそれだけか?」


「ん?まぁ、そうだな」


「じゃあ、俺は帰るぞ。また」


 信夜は荷物を持って体の向きを変え、歩き始める。その様子を見て西平も動き始めた。


「なぁ、明日って空松のとこは何がある?」


 信夜の横までやってきた西平が質問してくる。信夜はそれに返事をした。その後も西平は信夜の横を歩いて同じ方へと歩いていく。

 信夜は少し疑問に思ったがこれから西平も帰るところだったのだろうと問題を流した。わざわざ話しかけてきた用があれだけだったのは腑に落ちなかったが。

 階段を降り終わり、靴を履き替えて昇降口を出ても、西平は信夜の横にやってきた。信夜は昇降口手前の階段を降りていつもの場所へと移動する。それにも西平は当たり前のようについてきた。


「じゃあな、西平」


 信夜がそう言っても西平は動こうとしない。苦笑いのような顔をして目を泳がせている。


「どうした?」


「え?いや、まぁ、いいじゃん」


 焦ったような様子で西平は手を頭の後ろに当てる。


「あれか、西平も人待ちとか?」


「まー、そんな感じかなー」


 信夜の質問に西平は完全に目を逸らす。


「それって、誰?」


「いや、まぁ、誰でもいいじゃん」


「まぁ、そうだな。俺にはあんまり関係ないか」


「そ、そうだよ。ははは」


 まともに顔を合わせないで西平は笑う。それも作り笑いのような。


「それで、本音は?」


「いや、だから・・・・・・」


 西平は何か言いかけたがそれをやめて大きくため息をついた。

 この様子を見る限りやはり他の目的があったらしい。


「これ以上はダメそうだな」


「で、どうしたんだ?」


 西平は一度大きく息を吐く。


「前にさ、空松が一緒にいるの誰かって聞いたことあったじゃん?」


 確かにそんなことはあった。あの時も今日のようにわざわざ西平が出向いてきたはずだ。

 この話を今持ち出してくるということはもしかしてと信夜は一つ考えを持った。


「いや、結局誰かわからなかったから、直接聞いたら早いかなって。ほら、最近も一緒に帰ってるらしいし」


 信夜は一度ため息を吐いた。予想は当たっていたらしい。


「お前、そうは言ってもあんまり探してないだろ」


「あ、バレた?」


 軽く返ってくる西平の言葉に信夜はまたため息を吐いた。

 西平はこんなふうにずぼらなところがあるらしい。いつものパターンで行くと、きっと、最初は真剣に探したが見つからずすぐに諦めてしまったのだろう。

 でも、だとすると簡単には見つからなかったということになるがそんなにわからないものだろうかと信夜は疑問に思った。しかし、西平が全く探していないという可能性もある。


「そんな気になるか?」


「そりゃ気になるだろ。誰かはわからない美少女だぞ?空松のことだから知らないと思うけど、ちょっと話題になってるからな?」


「そうなのか?」


 西平の言う通り信夜はまるで知らなかった。そのちょっとがどれぐらいなのかわからないが話題に取り上げられてるなんて考えもしていなかった。

 しかし、本当にそんなにわからないものなのだろうか。一体どのように取り上げられているのだろうと信夜はそれが少し気になった。


「ていうことで俺も待たせてもらおうかな」


「いや、なんで?」


「だから、俺もあれが誰か気になるんだって」


 信夜は西平の「俺も待つ」という言葉に少しもやっとした。

 待つということは帰るのも一緒になったりするのだろうか。


「・・・・・・それって誰か知って何かになるものなのか?」


「いや、特にそういうのはないけど。強いて言えば俺がスッキリする」


 そうかもしれないがと信夜は思ったが何かが心中に引っかかった。


「で、今更だけど、お前、あの人と付き合ってんの?」


「違うけど」


 信夜ははっきりと返した。

 付き合っているという事実はない。前までも現在も信夜は付き合った人はいなかった。それに付き合っているように見えるのだろうか。


「やっぱり、意外だよな」


「何がだよ」


 西平の呟きにすぐに返事をする。

 何が意外なのかが信夜はわからなかった。この流れで一体何を意外だと思ったのだろう。


「あなた、ここで何やってるの?」


 急に横から聞き覚えのある声が聞こえてくる。見てみるとそこには大雅が歩いてきていた。その様子を見て西平は若干背筋を伸ばしている。


「こんにちは、大雅さん」


「こんにちは。それで、こんなところで何を?」


 大雅は少し睨みつけるように信夜を見る。西平は何も言わないまま固まっている。


「人を待ってるだけですけど」


「まさか、乗り換えたりしてないよね?」


「乗り換えるって何を?」


 何から何に乗り換える可能性があると大雅は思っているのだろう。というよりそもそもなんの話だろうと信夜は疑問に思う。


「そう。ならいい」


 視線を強めて少しまた後に大雅は呟いた。

 何か納得してくれたらしいがそれがなんなのかがわからない。一人で完結しないでなんなのか話して欲しいが。

 大雅は不満そうな表情で顔を逸らす。


「あ、あの、こんにちは大雅さん」


 ここにきて黙っていた西平が声を出した。大雅は西平の方を顔を向ける。


「どうかした?」


「いえ、なんでもありません!」


 西平は声を少し張る。

 どうして西平はこんな緊張しているふうなのだろう。普段の西平ならあまりこんな姿を見せないのだが。


「すみません」


 一人の女子生徒が突然現れて何かを大雅に耳打ちし始めた。その女子生徒は前に一人でため息をついていて、前に図書室に入ってきた途端星上の様子がおかしくなった人物。後者に関してはタイミングが同じだけだったかもしれないが。

 そういえば前もこうやって二人でいるところを見た気がすると信夜は思った。前は後から来たのは大雅の方だったが。

 結局この人物は誰なのだろうと信夜は気になった。


「そっか」


 耳打ちが終わって女子生徒が離れると大雅がそう呟いた。


「それじゃ、私たちはこれで」


 そう言って二人並んで校門の方へと歩いていく。

 一体、急に来てなんだったのだろう。


「すごいなお前。大雅さんとも知り合いなのか」


「知り合いと呼べるほどでもないけど?」


 前の休日に一度話したことがあるだけであって相手のこともよく知らない。それに知られてもいないだろう。

 あれぐらい話したことがある人なら他にも多くいるだろう。なにしろ大雅という人物は誰にでも優しいです有名だ。


「というよりも、西平はすごい取り乱してたけど」


「いや、お前そりゃ、大雅さんだぞ?絶世の美女で学校中の憧れの的だぞ?冷静に話せてたお前の方がすごいよ」


 そうものなのかと信夜は校門の方に歩いている大雅を見た。

 信夜は芸能人など憧れの人物にあって緊張するというのはなんとなくわかるような気もするが大雅に関してはなぜかそんな気持ちは湧いてこなかった。


「それより、いつまでいるつもりだ?」


「え?ここまで来て諦め切れないだろ」


 はーっと信夜は大きくため息をつく。しかし、終わってみてなぜこんなため息が出たのか自分でもわからなかった。


「お前なぁ」


 信夜が言いかけたところで一人の影が近づいてきた。


「あの・・・・・・」


 星上が手を胸の前で握って話しかけてくる。その瞳は伏してあった。


「こ、こんにちは」


 西平がすかさず近づいて話しかける。星上は怯えるように肩をすくめた。

 西平は大雅と同じように固まっているように見える。


「ねぇ、君って、何組の誰なの?」


「えっと、あの、その」


 西平の直球な質問に星上は答えられないでいる。

 緊張で話しにくいだけなのか、話したくないのかはわからないがどちらにせよ困っているだろう。


「やめとけよ。困ってるだろ」


 信夜は西平の肩に手を乗せて静止を促した。西平が落ち着くのを確認すると信夜は星上の方に移動した。


「大丈夫?」


 信夜の問いかけに星上は小さく頷く。

 やっぱり人と関わるのは苦手なのだろう。星上はまともに西平と目も合わせられていなかった。


「そういうわけだから、先に帰るな」


「あ、ああ、わかった」


 西平はすぐに退いた。何を言わんとしているかがわかったのだろう。

 信夜は星上と並んで歩き出す。


「あの、良かったんですか?」


 校門まであと少しのところまで来ると星上は信夜の方を見て尋ねてきた。

 綺麗な瞳が信夜の顔を的確に捉えている。


「気にしなくていいよ」


 信夜の経験則からすると、西平もいい人物であることは違いなかった。ああやってすぐに手を引いてくれたのも気が利いて察しがいいからだろう。


「ありがとう、ございます」


 星上は一歩信夜の方に近づいた。

 それはいつもより大して変わらない距離。しかし、いつもこうやって帰っているよりも確実に近づいていた。

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