休日の出会い
テストが終わり、その結果を待ちながら入った土曜日。信夜は買い出しを頼まれ、外出していた。
片手には買ったばかりの食材が入った袋を持っている。この食材を使って作りたいものがあるらしい。
さっき訪れたスーパーは休日だからか今日は比較的人が多かった。とてつもなく多いと言えるほどではなかったがそれでも、今日のような休日や何か特別な日でもない限りはあまり見られないだろうと信夜は思う。
家へと向かうため足を動かし続ける。
信夜は普段休みの日に外出することはあまりなく、外に出るのは学校の日がほとんどだったが、その行きと帰りどちらにも最近は隣に人がいたから信夜はどことなく違和感を感じた。
もうすぐ家の近くの公園というところまで来ると一人の男の人とすれ違った。別にそれ自体は珍しくはないのだがその人物は俯いて暗い雰囲気を纏っているような感じがした。
「はぁ」
公園の出入り口の近くまで来るとそこには見覚えのある人物が信夜の進行方向と同じ方を向いて立っているのが見えた。
公園には他に人が一人もいない。休日の公園ならば子供がいてもおかしくはないと思うが、この公園が小さい、あとは近くに大きめの公園があることが原因だろう。
一人佇んでいる女の人はため息をつくように一度肩を落とすとつま先の方向を変えた。
ちょうど出口のすぐそばまで来た信夜と出口に歩いてきたその人物は目が合った。
「あ」
女の人が声を漏らす。信夜はそれに対して小さくお辞儀した。
「あなたは」
彼女は少し驚いた表情を見せる。そのあとすぐに睨みつけるような視線に変わった。信夜はそれに少し疑問を抱いた。
信夜の目の前にある人物はおそらく大雅だ。校内では有名で信夜も何度か見たことがある上、たまに話題にもされているので知っていた。
しかし、信夜は大雅と直接話したことがない。一方的に知っているだけでこちらのことはおそらく知られていないだろうと信夜は思う。
だから驚かれる要素がどこにあるのか信夜にはわからなかった。
「こんにちは、大雅さん?」
「どうして疑問形なの?」
「いやだって、初対面だし」
信夜は初対面の相手なため、どうやってコミュニケーションを取ればいいのかわからない上、一応似た人物であって違う人かもしれないと思い、つい疑問形にしてしまった。
この反応を見る限り相手は大雅で間違いないらしい。
「こんなところで何してるの?」
「何って買い出しの帰りだけど」
「ふーん」
大雅は信夜が持つ袋に目をやる。そしてゆっくりと視線を信夜の顔を戻した。
「今日は一人なの?」
「見ての通りだけど」
信夜の周りには一人もいない。どう見ても一人だろう。
しかし、どうしてそんなことを聞くのだろう。大雅の中には特定の誰かと一緒にいるイメージがあるということなのだろうか。
「何か用でもあるの?」
「・・・・・・特にない」
大雅はじっと信夜を見つめてから言う。
この言い方だと何かありそうな気がしたが信夜はこれ以上追求するのはやめておいた。
「それじゃ、帰るよ」
信夜は帰ろうと足を進め始める。
大雅は磯立が告白して断った人物だ。そのため、信夜は少し興味があったが今日の一件でより一層謎が深まったような気がした。




