図書室ではお静かに
放課後、信夜は星上と図書室を訪れていた。前に一緒に勉強をするという約束をしたのを学校でやろうという話になって今に至っている。
放課後の図書室はあまり人がいない。それこそ図書委員で残っている人物と数えるほどの利用者ぐらいだ。
ここに来てから少し経ったが信夜と星上は互いに教え合えるところを見つけられないままいた。理由としてはどちらもそこまで手を止めることなく書き続けているからである。
今はテスト範囲の基礎を振り返っているところなので信夜はそれほど難しくは感じていないし、星上もそうなのかもしれない。
「星上さんって苦手な教科とかあるの?」
「えっと、数学、とかですかね」
ところどころに会話を挟みながら互いに書き進めていく。
話しながらだから単純な集中はあまりできていないかもしれないがなぜか持っているペンの速度は落ちない。
星上はどう思っているのだろうか、と信夜は少し気になった。
「あら、もしかして彼女さん?」
声がする方を見てみるとそこには前田先生が立っている。前田先生はニヤニヤと信夜の方を見つめていた。
「先生、違いますよ」
「可愛い子ね。どこで出会ったの?」
前田先生はどんどんと質問してくる。
これは話を聞いているだろうか。聞いていないような気がする。
星上の方を見ると星上は固まってしまっていた。
「先生、困ってますよ」
「そう?まぁ、とにかくこの子のことよろしくね」
「え、あ、あの・・・・・・はい」
星上は戸惑いながら答える。
信夜は母親かと思いながら前田先生の発言を聞いていた。
ガラガラと扉が開く音が聞こえると前田先生は「じゃあね」と言って去っていく。
信夜は前田先生がいなくなるのを確認するとペンを持って再び問題に向かった。
そして、信夜たちは勉強へと戻った。
少し黙々とペンを進める。ふと顔を上げて星上の方を見るとなぜか怯えるように縮こまっていた。
「だ、大丈夫?」
「え、あの、平気、です」
「ほんとに?」
「はい・・・・・・」
信夜は正直大丈夫そうには見えなかった。
少し周りを見渡してみるがそこには原因となりそうなものは見当たらない。
信夜が周りを見ていると一人の生徒と目が合った。しかし、そんなことは今は関係なく、信夜は星上に視線を戻す。
周りに原因がないからどこにあるのだろう。急に体調を崩してしまったのだろうか。
「どっか体調悪いの?」
「体調は大丈夫です」
ならこうなっている理由はなんなのだろう。信夜は気になって仕方がなかった。
しかし、原因を探すことよりも星上を本当に平気な状態にすることが先決だろう。
「今日はもう帰ろうか」
「ほ、ほんとに大丈夫だから」
「でも、俺は大丈夫じゃないからさ」
「え?」
星上は信夜の方を見る。髪が下ろされているから表情の全貌は掴めないが星上は驚きの表情のように見える。
「ほら、俺は星上さんが心配で手がつかないから」
信夜は嘘を言ったつもりはない。実際星上のことが気になって仕方がなかった。
原因がなんなのかはわからないができればこんな状態ではいてほしくない。きっとそのままでいるのは辛いだろう。
「ごめん、なさい」
「なんで謝るの。ほら、今日は帰ろう。時間も結構経ったし。今日はありがとう」
「こちらこそ」
信夜と星上は立ち上がる。信夜はもう一度周りを見渡して見るとまた先ほどと同じ人物と目が合った。
きっと偶然なのだろうが、信夜はその人物が気になった。
星上が怯えたような状態となる前となった時の差と言えばその人物がいたかどうかぐらいだったからだ。
名前は知らないが見覚えはある人物。確か前に出会った時は大雅と一緒に帰っていった。
信夜と星上は図書室を出た。こんなにも妙な感覚で図書室を出たのは初めてではないかと信夜は思った。




